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第156話 ーー尋問ーー

〜前回までのあらすじ〜

 僕らは機械都市メカトリスが街を破壊する計画を立てていた事を知った。それに伴う作戦の中にガスを使うことがあったからもしかして…と思ったら案の定、殺人鬼の協力者「エアス」と出会う。エアスは計画に反して爆弾を爆発させ、全員をあの世行きにしようと企んでいた。もちろんそんなことさせる訳にはいかず、協力して何とか爆弾の被害を出さない事に成功した。それと同時にエアスを捕まえる事にも、



「殺人鬼について、全部話してもらう」


 エアスに問い詰める。不貞腐れてるようにも、諦めているようにも見える目には、僕や、他のみんなに見えない物が映っている気がした。


「とりあえず人と話す時はマスクは外せっと」


 ケルトさんがガスマスクを引き剥がすと、その正体が見える。不気味で、恐ろしくて、見たことある。


「ゾンビ…?」


 顔の至る所が腐っている。皮が剥がれ、肉が剥き出しになっている。見えていない素肌も同じようになっているのだろうか。


「……お前らに教えることなんてない。俺がどうなろうとどうでもいい。もう充分やったしな。殺したきゃ殺せ」


「そうはいかない。答えてもらわなきゃいけないんだ。それに、自分がどうでもいいだなんて嘘つかないで」


 こいつは身勝手な奴だ。自分自身がどうでも良いだなんて言わないはず。放心状態にも見えるし、いつものエアスじゃないように見える。多重人格か?


「おい、拷問してでも吐かせるか?そんなら準備するが」


「いえ、そんなことは流石に…」


「うはははは!」


 突然笑いだした。このエアスは、いつものエアスだ。よく分からないが分かる。


「拷問?意味ないな。俺はもうすぐ死ぬ。負けたから、要らなくなったから」


 その言葉を聞いて、改めてエアスを見つめる。腐っている部分がどんどん広がっている。このままじゃ本物のゾンビになる。


「何で腐ってるんだ。仲間じゃないのか」


「師匠はちゃんとしてる。何があっても情報を吐かないよう、口止めまでしっかりだ。流石は師匠」


「師匠…やはりゾンビの能力者が居るんだな。我々に刺客を送ってきたのもそやつか。これはまた厄介な」


 ゾンビを生み出す能力者。協力者じゃないかもしれないから確信できなかったが、これで確信した。残る仲間は2人以上。


「ダメだ!ゾンビになるなんてダメ!ちゃんと話せ!もしかしたら助かる方法だって」


「ねーよ。元々そういう契約みたいなもんだ。俺は腐り果てて死ぬ。復讐だってろくに出来なかったが、まぁそれは師匠らでどうにかすんだろ」


「…そうだ、復讐。復讐ってなんなんだ?どうしてみんなを殺したがるんだ?」


 執拗に気にしていた復讐。僕には想像も付かない。殺人鬼に救われたっていうのも、全部分からない。

 エアスは考えるような仕草をする。上を向き、恐ろしいほど綺麗な空を眺めている。僕はその様を見て、何かを思い出してしまった。子供らしい、純粋な何かを。





「俺は…何で復讐するつもりだったんだ?」


 確か、子供の時に何かあったんだった気がする。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「うわ〜!でんしゃって速い!」


 そうだそうだ。初めて家族と一緒に電車に乗って、はしゃいでたんだ。この時言った言葉が…


「ぼくね!しょうらいでんしゃの運転手さんになる!」


 そうそう。そうやって、俺は電車の運転手を目指すんだ。色々調べて、着々と向かっていった。でも、ある時だ。


「誠に残念ながら…進行型失明症です」


「そんな…運転手とかには、なれないんですか?」


「はい…突然失明する確率もありますので、この症状の方は、車及び電車などの乗り物の運転は禁じられています」


 母ちゃんも父ちゃんも泣いてたな。あの日からだったか、2人とも俺に夢を諦めろって言ってたの。俺も素直に言うこと聞いてさ、まともな勉強してたんだな。進行型失明症って知った後でも、視力がどんどん落ちてきても、俺は生きてた。そんな時だった、


「君、進行型失明症だね?目、いるかい?」


「何言ってるの?他人の目を移植することは出来ない。どんな技術を使っても、それは不可能なんだよ」


「じゃあやってみるかい?」


 そう言われて、その場で目を抉られた。俺はのたうち回ったが、気付いた時には目の前が見えていた。メガネを掛けていないのに、周りの景色がはっきりと見えていた。

 俺は心の底から喜んだ。奇跡でも起きた気分だ。すぐに家に帰って、2人に知らせたんだ。目が治ったって、また夢を追えるって。それなのに、


「良い? エアス。お願いだから普通の進路に行ってちょうだい。諦めなきゃいけないのよ」

「エアス、嘘をついてまで行きたい気持ちは分かるが、それはダメなことなんだ。人に迷惑をかけないよう、頑張って普通に生きるんだ」


       何で信じてくれないの?


 まだ中学生だ。俺なら出来るのに、今の俺なら。そう思っても、声には出せなかった。

 そんで、どうしたんだっけ?そうだ、

       どっちも殺したんだ

目が見えることを証明しようと思って、銃で撃ったんだ。それでも2人とも認めてくれなかったな。何でだったんだろ。ちゃんと狙い通りに行ったのに。その後、またあの人が来て、俺は師匠の元で暮らした。色々叩き込まれた後、夢を打ち砕いた人間に復讐しようと思った?なんか変な気がするな。

 ん?


「何で殺したんだ。どうして、どうしてお前が僕の身体を使ってるんだ!」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「そっか。そうだったんだな。これは俺じゃないのか」




「な、何を言ってるんですか…早くしないと全身が腐っちゃう!早く答えてください!」


 僕はぼーっとしていたエアスに嫌気がさす。俺じゃない?何が言いたいのか全く分からない。


「おいイリウス。ゾンビになる前にとっとと潰しちゃった方が良いと思うぜ。どうせ話さねーよ、こういうやつは」


 ケルトさんの言う通り、死ぬ事にも興味なさそうなこいつが話すとは思えない。でも、何かある気がする。俺じゃない…忘れっぽい…目が違う…!疑問が確信に変わる。


「殺人鬼の能力は、他人の目を与える事で性格や考えを付け加える能力…?」


「ん?どう言う意味だ?」


「簡単に言うと、僕の目を取ってケルトさんの目をはめると、僕もワイルドチックになっちゃうってことです」


 エアスは二つの目を変えられた。だとしたら多重人格に見えたのにも納得いく。エアスはこれを聞いてこっちを見るが、何一つ言葉を喋らない。


「んじゃ、潰すぜ。嫌なら目閉じとけよ」


 ケルトさんが足を上げ、エアスの頭に標準を合わせる。踏み潰すんだろう。それな1番手っ取り早いから。流石に見たくないから目を閉じる。




 あぁ、殺される。でもまぁいっか。色々やったし、師匠らに迷惑かけてねーし。俺はこのままおさらばだな。

 そう思って瞼を閉じると、何かが見える。真っ白の空間に…昔の俺?


「何だよ。何見てんだよ」


 じーっと見つめてくる俺にただ一言、「仕方ねーな」そう言って、目を開ける。




「『腐食屋スポイル』。異世界ダスター、そこがお前らの墓場だ」




 口を開けたかと思えば、新しい協力者の情報だ。その情報をしっかりと頭に叩き込み、腐り果てて行くエアスを最後に、僕は目を閉じる。頭蓋骨が破壊される音、脳みそが潰れる音、耳も塞げば良かったとひどく後悔した。








「…エアスが死んだ」


「あのエアスがか?」


 真っ赤な世界。そこに居るのは俺とこの殺人鬼、そして大量にいるゾンビだけ。


「弟子が死んだとは、悲しくなるな」


「いいや、そうでもない。所詮あいつは、ただの腐り人形だ」


ーーーーーーーーーー次回予告ーーーーーーーーー

「ひとまず、解決して良かったです」


 機械都市メカトリスの件、エアスの件とどちらも解決させたイリウス。今回の件で何を手に入れたのか、そしてメカトリスはあの後どうなったのか。公安の動きは?

 ったく人使いが荒いよな〜。殺人鬼のこととなると人格変わっちまうとこ、治させねーとな。


            次回「ーー後日談ーー」

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