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第155話 ーー車上戦 後編ーー

「ここから打破する手立てね〜。予想出来ないけど」


 エアスは自信満々にそう言う。僕ら2人の攻撃を避けながらもこんなことを言う余裕があるなんて癪に触る。こいつの言う「復讐」も気掛かりだし、何かと謎が多い。僕の作戦実行までにはまだ時間がかかる。


         爆破時間まで

          約10分


 着々と街まで向かう列車。経路をずらしても元の経路に戻る。ブレーキは付いていない。爆弾のある車両は連結部分が硬すぎるせいで壊せない。ここから打破する方法があるのか?


「イリウス!一体どうするつもりなのだ!」


「良いから見てて…よ!」


 僕は浮き上がり飛んでいるエアスに一撃入れた。ガスマスクに当たり本体は傷すら付いていないだろうが、いきなりの事で動揺するだろう。エアスの正体はやはり人獣。顔は人間に近く、耳や尻尾が生えているだけだ。


(浮いてきただと?高速で走る列車で浮けば置いてかれるだけ。血迷ったか)


 残念ながらそうはいかない。僕は縄を掴んでおり、その縄は車両に繋がっている。そう、エアスが空気を操り列車を土台に浮いているのと同じ仕組みだ。ペグに描いてもらえて助かった。

 エアスのガスマスクが欠けて目が見える。やっと目線が分かるようになった。


「描いてくれて助かるよ、ペグ」


「それは良いけどよぉ…もう絵の具がねー。これ以上は描けねーぞ!」


「それについても任せて。ナビ、ペグ。2人とも準備をお願い」


 エアスは降りてきてこっちを睨む。僕はその様子に固まる。バクも足場が不安定なため不用意には近付けない様子だ。


「目が…違う…?」


 両方の目が同じに見えない。オッドアイかと思ったがそれともまた別だ。別の種類…いや、別の人の目だ。


「…無駄話をしてあげるよ。俺の目はね、お前らが追ってる殺人鬼から貰ったものだ」


「!!!」


 目を殺人鬼から?他人に目を渡すことが出来るのか。時間稼ぎかもしれないが、冷静に穏やかに語る奴を見ると、こっちも惹かれてしまう。


「俺は進行型失明症でな、そのうち目が見えなくなっていくんだ。だが、そんな中救ってくれたのがあの人だった…」


「どうしてそこまでして目が惜しかったんだ。治ったかもしれないのに」


「…さぁ。何でだったかな。段々と記憶が消えてくんだよね。忘れっぽいってやつ?歳かな」


 何か理由があるはずだ。そしてそこに殺人鬼の能力が関わってるのも確かだ。

 そうこうしてる内に列車は急な山を登る。木々を倒しながら進む列車は枝やその他をこっちに飛ばしてくる。


「だからさ。悪いんだけど、あの人の邪魔はさせないんだ。素直に死んでくれ」


 迫り来る障害物と共にエアスの放つガスが来る。息も制限されこっちは我慢の限界。木々は大きすぎて歪みじゃどうにも出来ない。列車の速度も相まって今にも振り解かれそうだ。

 すぐに列車は宙を浮く。山頂だ。ガタっと大きく揺れた後再び進み出す。目の前には僕らの街がある。


「たとえどんな理由があろうとも、みんなを困らせて良いことにはならない!お前が、お前らが!好き勝手して良い理由にはないらないんだよ!」


 エアスは嫌な顔をする。やっぱり変だ。違和感がすごい。今はそんなこと気にしてられないけど。

 作戦決行だ。


「ナビ!これをポルターガイストで持って行って!ペグ!それで上に向かって線路を描くんだ!」


「はぁ!?何言ってんだ。上に向かった所で意味なんて…」


「良いから!早く行って!」


 ナビに大量の絵の具を渡して、ビームと神力を駆使して2人を遠くに連れていく。下り坂だから上には高く飛ぶはずだ。


「何をするつもりだ?上にしたって上で爆発するだけだっての」


「もう終わりだよ。お前も、メカトリスの作戦も。バク、合図したら降りるよ」


 この時、バクはこう思っただろうな。「街を犠牲にするつもりか」って。次第にペグが描いた線路に近づく。この騒動に街の人々も気付いているだろう。


「まずは…これ!」


 僕は特大ビームを上に打ち上げる。これは合図だ。あの人達への。その後、途中までの線路に続き、神力で床を形成する。この列車は線路が無くても動ける列車だ。予想通り列車は進んでいく。


「このまま宇宙まで連れてくつもりか?そんなに神力があるはずないだろ?」


「そうだよ。僕でもそこまで出来ない。だからこそ」


 列車の動きが止まる。もう床が無いからだ。ここから落ちれば爆弾が起動して即爆発するだろう。そうはさせないが、


         爆破時間まで

           1分


「後は、任せます」


 ケルトさんとトラさんが現れる。ここまで相当距離あるのに、流石は2人だ。僕は合図を出してバクと空に降りる。エアスはこの状況に困惑している。


「へー。この列車、70トンってとこか?そんでスピードは中々出てて180キロってとこか!おもしれーな!」


「ふざけている場合か。俺らに任せると言うことは何かあるんだろう。爆弾とか」


「街全体をぶっ飛ばす爆弾とかな!面白いじゃねーか!」


(すごい全部当ててる…)


 何一つ言ってないのに全て理解してもらえて話が早い。僕がしてもらいたいのはここから遠くに飛ばすこと。被害が出ないくらい高く遠くに。この2人が居れば出来るはずだ。


「んじゃ、久々の協力プレイだ。電車に負けたお前に頼るなんざ嫌だがな」


「なっ!それを今言うか!それにあれは負けたわけじゃない!あれは・・・」


        爆破時間まで

          20秒


「2人とも早くして下さい!」


「るっせーな。あ、そうだ。この列車、壊れねーように神力で囲ってくれ。早くな」


「今言うんですか!」


        爆破時間まで

          10秒


 僕は大急ぎでありったけの神力で列車を囲う。ケルトさんに関しては腕回して準備運動みたいなのしてるしやばい。

 エアスが段々と状況を把握しつつある。危機を感じたのかすぐに空中へと身を投げ出す。


        爆破時間まで

          8秒


「終わりました!」


「おうよ!おらやるぜトラ!」


「俺に指示するな!」


         残り5秒


「「おーら、よ!!!!!」」


 トラさんのハンマーにケルトさんのパンチが加わり、その威力は予想出来ない。残り5秒で何とか殴ることは出来た。後はどのくらい飛ぶかだが…心配しなくてよさそうだ。


「おーよく飛んだぜ〜。そんで?後どんくらいで…」


 途端に爆発音が聞こえてきた。あんな飛んだのにここからでも見える。もし遅れていたら完全に街が崩壊していただろう。あまりの威力に驚くケルトさんとトラさんを放っておき、空中に野晒しになったエアスを捕らえる。不思議と抵抗しなかった。

 上手く地面に着き、僕はみんなにお礼を言う。


「本当にありがとうございました。来てくれなかったらどうなったかと…。ペグ達もありがとう」


「んな礼なんてすんじゃねーよ。お前のピンチは俺のピンチだ」


「今回に関しては本当に俺らがピンチだったな」


「そ、れ、に。お目当てが居たんだったら尚更だぜ」


 縄で縛られたエアス。一切の抵抗を見せなかった。傷が付いてるわけでも無いのに。


「こんな化け物だらけの中、抵抗なんて無駄なだけ。空気を上手く扱える場所じゃなきゃ、お前らにだってすぐ負けてたんだ」


「色々聞きたいことがある。殺人鬼について、そして、他の仲間について」


ーーーーーーーーーー次回予告ーーーーーーーーー

「殺人鬼の能力は…」


 今回街を救ったイリウス達。その栄誉を讃えたい所だが、本当の目的はまだ達成していない。抵抗しないエアスに聞く質問とは、答えとは何なのか。エアスの正体は?

 ほんっと大変だったぜ!早く正確に描くってくっそむずいんだからな!


             次回「ーー尋問ーー」

数少ないブリーダーが減りました( ^ω^ )

誰か埋め合わせしてください…泣

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