第14話 ーーお仕事ーー
「んじゃあ行ってくるぞ」
「はーい…行ってらっしゃいです…」
僕はムスっとした顔でケルトさんを送り出す。お仕事に行くらしいけとどうも怪しい。と言うことで新しい歪みの使い方と一緒に追尾をしていこうと思った。
「イリウス?」
「ひゃい!?」
能力を使おうとした途端後ろから話しかけられて驚いた。後ろを見ると怪しんだ顔で立っているバクの姿が。
「何をしようとしていた?」
「いや、、、別に何も?」
「余計な詮索はするな。我からの忠告だ。ケルトにも秘密がある。行くのは勝手だがな」
全部バレてるみたいだった。けど話的にOKしてくれてるみたい。僕は新たな力を使って追尾を開始する。
(てっててーん!これが僕の新たな力、僕が歪み!これを使えば…ほら!見えなくなった!原理を説明すると長くなるから省略するよ!匂いについても歪みでどうにかなるし足音は浮いてれば大丈夫!)
僕は新たな能力トウメイを駆使して誰からもバレずに家を出た。シュッシュと素早い速度で屋根上を移動してケルトさんを見つける。
(居た!うーむ見た感じいつも通りだな…ていうか本当にバレてないのすごいな…)
僕は自分の凄さに改めて感激し尾行を続ける。しばらく経つと街の隅の方にある小さい通路に入っていった。そこは上からじゃ見えなくて仕方ないから降りてくる事にした。暗くて視界が悪いがケルトさんの影を見つけて着いていく。そのまま歩いて行くと誰かと話し出した。
影しか見えないが、ケルトさんよりだいぶ小さい獣人に見える。小さいと言っても僕より全然上だし、身長180くらいだろう。2人はそのまま奥に行った。僕もそれに着いて行ったが随分と縋れている。ここら一体人が居ない上廃墟みたいなとこが多かった。
「「「「こんにちは!ケルトさん!!!」」」」
「あーはいはい。おめーら静かにすんの苦手なのか?」
急に幾らかの人が大声を出すものだから心臓がバクバクだ。僕もある程度進んでいくと天井が開いてる大きな広間?に出る。明かりが多少入ってきていて今なら全員の顔が分かる。
(うーん…これがケルトさんの会社?潰れた後にでもやってるのかな…会議ってなんだ?)
僕は謎が深まりつつも周りの人を見る。みんな怖めな顔をしているがケルトさんに比べれば可愛い物だ。
(ケルトさんと来た人、ちょっとケルトさんに似てるな…ひょっとして隠し子!?そんな訳ないよね…1番偉そうにしてるのはケルトさんだけど2番目は…あの鮫の人、神力から分かるけど強そうだな…)
僕が注目したのはケルトさんを痩せさせて体を縮めたような青年と、傷が多い鮫の獣人さんだ。鮫の獣人さんはケルトさんにはペコペコだが他の人には全員普通といった感じ。その他には小柄なパンダ獣人さん、同じくトカゲ獣人さん、あとは大柄な牛獣人さんがいる。
(うーむ…ていうかさっきの大声以降話し声が小さいな…何て言ってるか聞こえない…上の方開いてるしそこで浮いてようかな)
僕は抜き足差し足(足着いてないけど)をしてゆっくり近づく。
(ん?コソコソ声に変わった?1、2、3…1人いない?)
「君だぁれ?」
「!?!?」
気付いた時には後ろを取られていた。何とか声は出さずに済んだが、何で後ろを取られたのか疑問が残る。僕はとりあえず逃げようとするがトカゲ獣人さんはまた姿を消す。
(何あれ、能力?透明化の能力者か!僕と原理は違うけど相手の方が格上、バレた以上逃げるしか…!)
突如として周りが水で囲われる。天井や壁に挟まれた状況で出口と広場の通路が塞がれる。
「おい!誰か知らねーけど良い度胸してんじゃねーか。煌牙組に手出すなんて何者だ?気配と姿消せてるし只者じゃねーよな」
「どうします?このまま殺しちまいやすか?」
鮫の獣人さんがそう言うと水の壁がドリルのように尖り、近づく。僕は絶体絶命。姿を出さなきゃ串刺しになって痛い。姿を見せればケルトさんに罰せられて痛い。どっちにしろ最悪の運命を迎える。
「ずっと着いてきてたんすか?」
「まぁな。いつ捕まえようか迷ってたが、どうせなら絶望感味わせた方が良いと思ってな。シャーガ、やれ」
「はい!」
(まずい!来る!)
尖った水が隙間なく貫く。中に入っていたら確実に死んでいただろう。え?何で死んでないのかだって?僕にはテレポートがある。
言ってなかったがテレポートの条件を見つけた。ただただどこでもテレポート出来るわけじゃなくて<行ったことある所>にしか出来ない。
そして<見えている所>にしかテレポートは出来ない。
つまり箱とかに閉じ込められたら完全に終わりということだ。今回も閉じ込められていたが壁は水。何とか見ることが出来たんだ。そうやって入ってきた場所から外に出て逃げるように帰った。ギリギリすぎてちょっと擦ったことには気付かなかった。
「あれ、ちゃんと閉じ込めたんですが…逃げられたみたいです」
「そうか、ん?この血…」
血をぺろっと舐める。
「なるほどな…はー…めんどくせー」
「どうかしたんすか?」
「いんや、お前ら!明日か明後日もっかい集まれるか?」
「「「「「はい!!!」」」」」
「だからお前らは静かに返事できねーのか…」
(うえーーーーん怖かったよー泣泣)
僕はそう思いながら飛んで帰った。家に着いたらバクとトラさんが待っていてドアを開けると話しかけてくる。
「どこ行ってたんだ?」
「えっと…ただの散歩で…」
「ケルトの後をつけてたんじゃないのか?」
全部バレてる…それでも僕は言い訳を続けようと試みる。
「そ、そんな事してな…いし…」
「もしそんなことしてたらケルトに死ぬほど叱られるぞ」
(死にそうにはなったけど…)
「はー…まぁ散歩と言うことにしておこう…」
「イリウス、血の匂いがするがどこか怪我をしているのか?」
「え?」
僕は気付かなかった。痛みは本当に無いんだが血が出ていた。トラさんが絆創膏を持ってきてくれたがカサブタを取った時くらいの血だった。垂れていないと良いな思いつつケルトさんの帰りを待つ。
「ただいま〜」
「おかえりなさいです!」
「おう、ただいま」
ケルトさんはそう言いながら頭をポンポンとしてくれた。僕は安心した。行ったのはバレていないと。
「ところで、透明化する能力持ってたりしないか?」
「え?へ?あ、知らないのです…です…」
「ほんとか?嘘を重ねるとろくな死に方しないぞ?いや、今の場合はろくな叱られ方だな」
(バ、バレてる…?)
ゆっくりとケルトさんの顔を見上げるが随分とキレている様子。
「えっと〜?その〜…」
「とりあえずこっちで話そうぜ」
と言うことでバクやトラさんを交えてリビングで話し合うことになった。