第147話 ーー定例会議ーー
「ほいじゃ、ご主人様達も家で」
「ばいばいーい!」
前回バクのグループ対決した僕ら煌牙組。結果としては敗北となったがそれなりに得たものもあっただろう。お互いに決着をつけてスッキリしたようで、すぐに会議の場所へと向かう。僕もケルトさん達に着いて行こうとした時、メーデさんが僕を止めに来る。
「どうしたんですか?」
「あのね。この前頼まれてたガスマスクの男。見つけたのよ」
目の色を変える。空気使いの『エアス』。殺人鬼の協力者の1人だ。ナビとペグは留守番中だから勿体無い。
「それで、どこに居るんですか?」
「少し遠いんだけど、山を越えた先にある街なのよ。南の山よ。機械都市『メカトリス』って言う所なんだけど…」
「ん?だけど何です?」
「ちょっと危ないって噂なのよ。近未来風で見どころはあるんだけど、悪い噂があってね…。厳重な警備の下に成り立ってるから、侵入とかは試みちゃダメよ?一応バクとトラにも伝えておくから、続きは家で話してね。じゃあ、また何かあったら連絡するわ」
これは大きな情報だ。ケルトさんにも伝えたいくらいだったが、他の人もいるから断念。僕はそのままいつもの場所へ向かった。
ケルトさんはいつもの場所に座り、僕はその横に、反対側にはシャーガさんが座っている。優劣順と言った所だろうか。みんながわちゃわちゃ喋っているが、ケルトさんの柏手で黙る。
「早速本題だが、今月は何があった?」
「はい、今月は…」
みんな真面目だなーっとそう思って見渡す。そこで一つ気付いたことが。僕はその人物に近づき声をかける。
「何やってるの?ピルス君」
「(いつの間に…)勉強だよ。俺、来年大学受験だからさ」
「え?大学なんてあるの?」
驚きのあまりつっこんでしまった。確かローディアは危ないから子供を作る人とかが居ないはず。だからあの3人も小学校に行ってないんだ。
「うん。いくつかあるよ。機械工学に優れた『テストニア大学』とか、海洋に優れた『シオウミ大学』とか…」
(し、知らなかった)
大学だけある事実に驚愕。まぁ大人からでも入れるし多少はね…。
「それで、俺が入るのがその全て+神力や能力に詳しい大学『レインスピリロット大学』だよ。言いづらいでしょ」
「れ、れいん?よく分かんないけどすごい所なの?」
「それはもう凄すぎるよ。色んな分野に手を出してる時点で尊敬ものだけど、能力にまで分野を広げてるローディア1の大学!俺はここの能力科に入るんだ!」
「おいそこ!会議なんだから黙ってろ!」
ケルトさんに注意され正座する。一応形だけはしっかりしておくんだな〜。学校か…。今はそれよりもガスマスクの男について考えなければ。
「イリウス君、何かあるでしょ」
怒られたが故小声で話しかけてくる。いきなりのことで戸惑うが、ピルス君は分かってるように話を進める。
「顔見れば分かるよ。また1人で悩んでる。俺にも相談してってば。友達でしょ?」
良い言葉を連ねて、僕はそれに縋りたくなる。でも、ピルス君は巻き込まない。友達だからこそ、巻き込みたくない。僕は純粋無垢に、嘘偽りなく、
「大丈夫、ケルトさん達がついてるから」
そう答えた。
「そんじゃ、今日の会議はこれで終わりだ。イリウス、ちと話がある」
「…?はい」
ケルトさんから話なんて珍しい。まさかさっきのおしゃべりについて?こっちは大事なこと考えてるのに。
「機械都市メカトリス、行くのか?」
「!?」
僕が話そうと思っていた内容だ。どうしてケルトさんが?そう思ったが、真剣そうな顔と眼差しから理由なんてどうでもよくなる。
「ばーか。あれぐらいの距離なら聞こえるっつーの。俺に隠し事は無駄だ。そんで、メカトリスに行くのかって聞いてんだ」
怒ってる。理由は分からないがどこか怒ってる感情を感じる。僕はまだ答えられない。分からないから。でもここは、「ケルトさんが着いてきてくれるから行きます!」と言った方が良いだろうか。色んな考えが合わさってあたふたしていると、
「あのなぁ。別に俺は怒ってねーぞ?ただ聞いてるだけだ。行くのか行かねーのか」
「…行かなきゃいけないと思います。そうじゃないと解決しないでしょう」
「分かった。行くんだな?あとは家で話すぞ」
ますます分からない。どうしてここまで来て家で…。でもその謎はすぐに解けることとなる。
会議も終わって家に帰った。着くと既にバクとトラさんが待っていた。
「イリウス。話があるはずだ」
「それについては俺が仕切るんで、とりあえず始めましょうか」
みんなが席に着いて話し合い開始だ。内容は、ガスマスクの男について。
「まず、イリウスはメカトリスに行く気です。でもここで問題発生です。俺はメカトリスに入れねー」
「え!?何でですか?」
「俺が要注意人物だってことは知ってんだろ?おそこは情報の漏洩とかに厳しいからな、そういう奴は入れねーんだよ」
ケルトさんの逮捕されない特権がこんな所で邪魔するとは。でもケルトさんが来れなくなった以上、頼れるのは2人だけ…
「さっきも言ったがあそこは特に厳しい。最大2人だ」
まさかの頼れるのは1人。1人でも十分心強いが怖い。
「ならば我が行こう」
「主!こういう仕事は俺の方が適任です!何よりイリウスを守ることが優先なんですから!」
「お主の体だとデカすぎて逆に目立つ。250センチだろ?監視の目があるとしたら、同じくらいの大きさの方が良い」
(こやつにも電車の件があったからの。負けたままなのは悔しいんだろう)
トラさんの必死の抗議もぱぱっと捨てられる。結局バクが着いてくることになった。長生きのバクならきっとどうにかしてくれるだろう。早くナビとペグにも教えてあげなきゃ。
ーーーーーーーーーー次回予告ーーーーーーーーー
「ねぇバク。機械都市ってどんな所なの?」
ガスマスクの男、空気使い「エアス」の居場所が分かったイリウス。分かったとしてもすぐさま向かうわけにはいかず、まずは情報収集からだ。この先何が待ち受けているのか…
エアスがそんな所に居るなんて盲点だったわ。何があっても捕まえるだけだけどね。
次回「ーー前準備ーー」