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第140話 ーールールーー

「そこに居るんでしょう?世神様?」


 僕が涙しながら見つめる先は、一本の木の裏だ。しっかりと話さないといけない。ケルトさん達が遠くから見てるのは知ってる。心配そうにしているのも。それでも今は世神様と話さないと。


「よく分かったな。その者は…能力者だから、こうなるのも仕方な…」


「思ってもないことを言わないで下さい」


 我はこやつをよく知っておる。人の為に泣けて、分かったように口を聞く。この者の言ってることはいつも正しい。


「そうだな。何を望む?答えられることなら、全て答えよう」


「このおかしなルールについて。殺すことでレベルを奪えてしまうルールについて!全部…教えて下さい…」


 もう嘘はつけまい。素直に話すしかない。すまんな生神よ。


「全て、見せてやろう。神の世界を、あの出来事を」


 世神様は僕の頭に触れ、不思議な技を使う。意識が朦朧としてきて、気付いたら見知らぬ世界を見下ろしている。


「気分はどうだ?気持ち悪くならんか?」


「世神様、これは一体…?」


「見せてやると言っただろう。話すより見た方が早い。こっちに来い」


 空を飛び回る。この世界は地面が雲みたいになっていて、人もいる。家も建ってるし、不自由している様子はない。ひたすら平坦めな世界で、奥に大きな建物が見える。きっとそこに向かっているんだろう。


「世神様、この世界はなんですか?」


「ここが神の世界だ。人間は立ち入ることが出来んぞ。扉を開けないからな」


 その建物がよく見えてくる。大きすぎるほどの門があり、両隣に大きな鎧を着た門番みたいな人がいる。


「これじゃ入れないんじゃ…」


「今の我々は思念のようなもの。壁など役割をなさん」


 スッと透き通っているのを見て驚く。恐る恐る腕を壁に当ててみると本当に透き通れる。何なく門を通ると、そこには長い階段が。階段の上には椅子があり、王様みたいに見下ろせるようになってる。世神様はその奥に用があるようだ。


「ほれ、こっちだ。今丁度やってるようだな」


 椅子の奥にある扉。普通のサイズだ。世神様は中に入っていき、僕も後に続く。中にいたのは4人。丸いテーブルを囲って座っている。その中に世神様もいる。


「これは…」


 残りの3人は特徴的なメンツだ。頭の両側に異なる仮面を付けたぽっちゃりした人に、花魁みたいな髪型で背の高い女の人に、いかにも強そうな目が狂ってる人間?だ。神の世界で4人と言えば…


「そう、この者達が四大神だ。初代のな」


「じゃあこの人達が今の生神様を選んだ…あれ?どうして世神様は代わってないんですか?」


 この人達が初代で今が2代目だとしたら、世神様がこの場にいるのはおかしい。


「我の場合、世界を管理し神の場合、あまりの荷の重さから簡単には変えられんのだ。バクが不老不死なのも、本当にこの神にふさわしいか、時間をかけて見極めなければならんからなのだ」


「それでバクは不老不死に…ってそれよりもルールについてですよ!」


「そうだな。今の会議がそろそろその話題を生み出す」


 僕は4人に近づく。話を聞くことにした。


「またこの話題だよ。『神を代える必要があるのか』。何度も言ってるんだけどね〜」


「やはり不満は漏れるものね。神の生活、悪くないもの」


「だが代わらないわけにはいかんな。我々の身体は歳をとらんでも、脳は衰える。古い考えでは時代を進められん」


「そうよの。念の為投票だ。神を代えることに賛成の者は手を挙げい」


 4人とも手を挙げる。全員神の後継ぎに賛成ということだ。これがどうしてあのルールに…?


「決定だな。神は代えるべきだ」


「それにしても…毎回の会議にこの話題が出ているわよ。街の人々にも説得しないと反乱が起きるわよ」


「それは防がないとね。神の世界が混沌になっちゃったら、下の世界を管理しきれない」


「誰が説得するのだ?順番で行くと次は…」


「俺だな」


 強そうな人が立ち上がる。この人、街の人に殴って言うこと聞かせそうだな…


「なら任せたぞ、生神」


「!?生神様!?」


 まさかこの人が生神様だとは思わなかった。現代の生神様は生物を愛している人が神になると言っていたから、女の人かと思ったのに…


「今更驚くことか。ちなみに仮面をしているのが、混沌・秩序を司りし神。女の方が無機物を生みし神だぞ」


 そう言われればそう見える。それにしても神様達は楽しそうだ。真剣に話しているが、所々に笑いを入れている。良い光景だ。しばらく経つと、突然外から声が聞こえてきた。初代生神様が立ち上がり、扉から出る。僕はそれを追いかける。出た先に居ないので階段の下を見るともう門の前にいる。


「今から説得だな。外にいるのは住人、いわゆる四大神以外の神だな」


「神様を神様が説得…それよりあの人の説得方法が気になります」


 急いで門をすり抜けてすぐそばに行く。神様の言い分はさっきのと同じ、神を代えるなと言うものだった。それに対し殴るのかと思っていた僕は衝撃を受ける。


「そうだな。お前達の言いたいことも分かる。神と言う身分を手放したくないんだろう?だが、そうだな。団子という物を知っているか?」


「…何言ってるんですかこの人?ここで急に団子の話出します?神様達も困惑してるじゃないですか…」


「まぁ見ておれ」


 意図が読めない発言に困惑したが、すぐに納得することになる。


「知らないんだろう?団子と言うのはな、下の世界で流行っているお菓子のようなものだ。モチモチとしていて、砂糖醤油や、あんこを付けて食べるらしいぞ」


「…それが何だって言うんだ!」


「そんなことも知らない我々が、この先人間達を引っ張っていけると思ってるのか?人間達の時代が変わるのと同じで、文化も、常識も変化していく。その中で、古い文化に囚われた我々が、上手くやっていけると思ってるのか?」


「それは…」


「良いか?世界を引っ張って行くのは、いつだって今を知る者だ。それが出来ぬ老いぼれに、神なんて任せて良いわけないだろ!」


 優しそうに語っていたのに、最後は鬼の形相だ。これには僕もびっくり。何よりも驚いたのは、納得せざるを得ない所だ。今の僕らが当たり前にしていることも、当たり前にある物も、知らない神様がいる。4000年もあれば世界は大きく変わる。それに適応出来る神様なんて、居ないも同然だろう。


「チッ!覚えてろ!」


「はぁー。もし未来の世神が見たらこう言うだろうな」


「「ん?団子あんまり関係なくないか?」」


「とな」


「何故分かった…」


 ひょっとしてだが、初代生神様ってめちゃくちゃ頭が良い人なのかもしれない。元々優秀だったとは聞いていたがここまでとは…。


「ここから、どうしてあのルールに?」


「少し飛ばして見るか、『(かみ)大戦(たいせん)』を」


ーーーーーーーーーー次回予告ーーーーーーーーー

「これが…神の大戦…?」


 昔の神の世界を見せられているイリウス。悪意のあるルールの起源を知る為に来たイリウスだが、その真意は衝撃的だった。イリウスはそこで何かに気付く、大切な何かに。

 僕もいつか、この神になるんです。覚悟しなければいけないのは、みんな同じなんですね。


           次回「ーー神の大戦ーー」

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