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第138話 ーー灰の女王 前編ーー

「ふんふふんふふーん。今日は洗濯のお手伝いです!」


「ほんと助かるぜ〜」(1人でやった方が速いけどな)


 天気の良い日、今日は洗濯物干しを手伝っている。庭にある物干し竿に服を干していく。今日は良い天気だな〜と空を見上げていると、途端に雲が太陽を覆っていく。


「ん?ゲリラ豪雨か?この時期に?」


「洗濯干さないです…」


「そうだな。畳まなくていいから全部カゴに入れてくれ。ちょっとニュース見てくる」


「は〜い」


 せっかく干した洗濯物をカゴに戻す。ちょっぴり残念がりながらカゴを持って行こうとすると、空から白いフワフワが降ってくる。


「これ…雪?」


 まだそこまで寒くない。雪に触れても冷たくない。手の上で溶けることもない。不思議に思った僕は、洗濯物と一緒に家に入る。


「ケルトさん、雪みたいなのが降ってます」


「雪!?この時期にか?」


 カーテンをめくって外を見ている。驚いた様子だが下を見て何かを思う。


「雪じゃねーな。溶けたか?」


「いえ…」


 僕の頭に付いていた欠片を摘み、眺めている。


「灰…か?」


「灰?火山が噴火でもしたんですかね」


「そんだったらニュースに出てると思うんだけどな」


 2人で悩んでいるとドアがバン!と開く。音に驚いてドアの方を向くとバクが慌てている様子だった。


「イリウス!」


「は、はい!」


「線を使え!」


 線?と思いつつも目に神力を溜める。すると、ケルトさんが持っている灰から線が出ているのが見えた。もしかしてと思い外を見ると線だらけで何も見えない。


「これって…誰かの能力?」


「恐らくな。何の目的でやっているかは不明だがな」


「灰を降らせるだけで他は何もないのかな?だとしたら能力者の中では無害な方だけど」


「何もないのが能力者だとは思えん」(灰を操る能力?だとしても大掛かりすぎる。これだけの灰を降らせるとなると条件型の能力。となるとそれだけ脅威になりうるはずだ)


 僕とバクは色々考える。答えは全く浮かばない。そのうち灰だらけのトラさんが帰ってくる。


「ただいま帰りました。外で灰が降ってるんですがこれ…」


「それについて考えているところぞ!邪魔するな!」


「え、えと…おかえりなさいです」


 バクも真剣に悩んでいるらしく、喋っているトラさんにキツイ態度を取る。


「その灰についてなんですが、恐らく疫病でしょう」


「「「え?」」」


「ほら、見てください。腕がおかしくなってきてます」


 トラさんの腕は妙な緑色になっている。不思議に思った僕が触ってみると硬い。石みたいだ。


「え、これ早く何とかしなきゃまずいんじゃないですか?」


「そうだな。それよりイリウス。お前灰に掛かってたよな?」


「あ…」


 僕は急いで身体を確認するがそのような状態にはなっていない。安心したのも束の間、僕は長い時間掛かっていなかったから進行が遅いという可能性が思い浮かぶ。


「どうしましょう…僕死んじゃいますか?」


「それはさせないから安心しろ。だが敵の位置が把握出来ないからな〜」


 どうにも出来ないかと焦る。ペグが薬のような錠剤を描いて渡してきたから飲んでみるが絵の具の味しかしなかった。


「ダメか?」


「うん…」


「大変なことになってるわね〜。その能力者とやら探してくるわ。見つからなかったらごめんなさい」


「うん、早く見つけてきてねー」


 ナビが飛んで行くのを見届け、自分にも出来る事がないかと模索。


「お前妙に落ち着いてるな。最初の頃だったら焦りまくって気絶してるくらいなのに」


「慣れてきちゃったのかもしれませんね。慣れたくなかったですが…」


「線で能力者の所まで行けんのか?」


「無理ですね。灰の量が多すぎて特定が難しいです。何とかしないといけないんですけどね…」


 恐らく本体を倒さなきゃ無くならないタイプだ。それよりもこれが一般人にも被害が及ぶんじゃないかと心配になる。治る方法があると良いけど。


「外には出れないし、じっとしてる訳にもいかない。どうしろっつーんだよ」


「我が探してこよう。流石に不老不死には効かないだろう」


 僕らは家で待機する。何もない上死ぬかもしれないと言う少しの不安で落ち着かない。気付いたら腕の一部が緑色に。ハッと思いトラさんを見ると顔の半分くらいが緑色になってる。


「と、トラさん。平気なんですか?」


「平気じゃないな。左目が見えなくなってきた。口も動かしづらいしな」


「だいぶやばいんじゃ…僕も行って…」


「いや、大丈夫だ。お前もこっちに来てみろ」


 訳も分からないまま近付く。何をするのかと待機しておくと、緑色になった腕を殴った。石みたいだから粉々になりそうで怖かったが平気そうだ。何をするのかと待っていると、


「潰れろ…」


 シューと緑色が元の色に戻っていく。僕は驚きのあまり口をあんぐりさせてしまった。


「な、何ですかそれ!」


「ふふ。内緒だ」


「そんな!」


 突然のことに突然の新しい力。知りたかったから粘ってみたが教えてくれなかった。トラさんは遊んでいる様子だ。


「ま、イリウスのやつも進行してきたらやってやれよ」


「当たり前の事を言うな。イリウスの為なら惜しまんぞ」


「だからなんなんですかそれ!」


 話し合っているとプルプルと電話がかかってきた。ケルトさんが出るとバクの声が聞こえた。スピーカーモードにしてくれて会話が聞こえる。


{街に出てみたが、被害者が思ったより多い。早く止めねばまずい。ケルト、トラ、………イリウス。一緒に探してくれぬか? 傘を忘れぬようにな}


{ほーい。2人にも言っておきますよ}


{嫌なら来なくて良いとイリウスに伝えておいてくれ。では、}


「僕嫌じゃないです!」


「分かったから。お前は歪みで灰を避けれるだろ?急いでくれ。このままじゃ能力者が生きづらくなる」


 これ以上罪のない人を巻き込むわけにはいかない。僕は窓から飛び出す。ナビと出会えれば良いけど…


「おいおい、平気なのか?場所も分かんねーんだろ?」


「そうだね。でももしかしたら分かるようになるかも。線を調整出来ればだけど。目に込める神力量の調整で少ない神力を見えなくすれば」


 ペグに文句を言われながらもやるしかないという使命感に駆られる。この広い世界で1人の人間を見つけるのがどれだけ大変か。それでも諦める訳にはいかないので、挑戦してみることとなった。

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