第137話 ーーペアーー
「ぬわぁぁぁぁぁぁ! 何で襲ってくるんですかこの人達ー!」
「知らねーよお前の知り合いじゃないのか!」
「待ってくれ! 是非とも俺らペアで」
「戦いましょう!」
僕が筆のペグと絵の具の買い足しに行っている時、謎の2人組に追いかけられた。見た感じ、レベル目的ではなさそうだし、戦闘狂かもしれない。そんなの巻き込まれたくないよ!僕は路地裏まで行って隠れる。屋上まで飛んで行き待つことに。
「…ここまで来れば…!!」
急に腕を掴まれて心臓がバクバクな僕。丁度さっきの2人組も路地裏に入って来た。恐る恐る顔を上げると、ケルトさんだった。僕らのことを観察してたかのようにニヤニヤしながらこっちを見ている。
「ケルトさん? 何をする気…ぬわぁぁぁ!」
ガシッと足を掴まれて空中にぶらりん。屋上から路地裏まで落とされる。ケルトさんも楽しそうに落ちてくる。
「おいお前ら! ペアだろ? やろうぜ!」
「「よろしくお願いします!」」
「え? えぇ? 何ですかこの状況!」
訳が分からないまま戦闘が開始される。特殊な技を使う男女のペアだったかケルトさんが瞬殺する。僕が何かする隙もなく、2人組は地面に倒れ込む。
「う、うぅ…」
「つ、強すぎませんか…?」
「お前らが弱いだけだ。そうだな、点数で言うと弱いから10点だ」
「「ひ、低い」」
「何なんですかこの状況…」
殺してはないことに安堵しつつも結局訳が分からない。後で聞かないとダメだな…。とりあえず終わったらしいから帰る。説明も無しに勝手したケルトさんは置いて行く。
「なぁなぁ。悪かったって。久々で興奮しちまったんだって」
「…」
「俺の絵の具…」
「絵の具はまだあるでしょ。今度」
「なぁイリウス。悪かったってよぉ。機嫌直してくれよぉ」
「…」
家に着くまでひたすら無視して進んだ。リビングに行った後、様子がおかしい僕らを見たバクが問いかける。
「どうしたのだ? また喧嘩か?」
「ケルトさんが勝手しました。僕は怒ってます」
「だいぶ怒ってる口調よの…」
バクは面倒がっているが手をかけるつもりだ。
「それで、何があったのだ? ケルト」
「ペアですよペア。最近また流行ってるっぽいんですよ」
「ペアか! 懐かしいな」
バクと僕は何を言ってるか分からないが、トラさんは分かるようだ。
「ペア?」
「簡単に言うと2対2の勝負です。体術、魔法、超能力、神力も何でもありのバトル。スポーツみたいなものですが、殺しちゃいけないルールはないです。でもみんな楽しみたいので基本殺しはしないですね」
「懐かしいな。昔は俺とトラでトップ目指したもんよ。まぁ、負けちまったけど」
「トラさんとケルトさん相手に勝った人が居るってことですか…? 世の中広いんですね」
どうやら一種の遊びらしい。昔はトップ目指してたって言うけど判断基準なんなんだ?
「ちなみに俺が付けてたあの点数は、勝ったやつが負けたやつに言うアドバイスみたいなもんだ。コンビネーションや特徴を活かした戦い方が出来たか、そんでもって強いか」
「ケルトさん達が負けた時は何点を付けられたんですか?」
地雷を踏んだ。ケルトさんとトラさんの機嫌が少し悪くなる。2人とも笑ってるけど目が死んでいる。
「そうだな。何点だったかな? 覚えてねーな」
「うぬ。忘れてしまったな。100点くらいだった気はするがな」
「?」
それはともかく、一つ疑問に思った事があった。ケルトさんとトラさんが昔からの仲なら、どうしてケルトさんはトラさんを敵視してたんだ?一緒に戦うほど仲が良いんだったら喧嘩とかしないんじゃ?
「ケルトさん、トラさんと仲が悪かったのはなんでなんですか?」
「あーあれな。負けた時によ、なすりつけ合いしちまったんだよな」
「『お前が弱いからだ!』とか『てめーが合わせないから!』とかな。それでお互いに殺す気満々になって、あの状態だったんだ」
「俺がこの世界に来てトラと会った時、本気で殺す気だった。でもご主人様との2対1で負かされたんだよ。そっから色々あってご主人様の下で働くことになって、今だ」
ケルトさんとトラさんは負けず嫌いだからなすりつけ合うのは納得だ。ケルトさんがバクの下に着いた理由は初めて知った。あれ? じゃあトラさんは?
「俺のことはどうでもいい。それでペアはどうだったんだ?」
「雑魚だな。本当に楽しんでるだけだ」
「あ、そうだ! 今のケルトさんとトラさんならトップ取れるんじゃないですか?」
「「断る!」」
「えぇ…」
何から何までよく分かんない人達だ。
「俺の絵の具…」
ーーーーーーーーーー次回予告ーーーーーーーーー
「こんな時期に…雪?」
秋も終盤、かと言ってまだ冬じゃない。寒いが凍えるほどじゃないくらい。それなのに空から降り積もるのは雪のような何か。誰かの能力か?正体は一体…
最近、変な能力者が多いな。イリウスのこと狙ってこなきゃ良いけど。
次回「ーー灰の女王ーー」