第136話 ーー機密情報ーー
ピーンポーン
チャイムの音が響く。
「はーい!今出ます〜。ドンベルさん?」
「こんにちは、イリウス君。君に話があって来たんだ」
ドアを開けると制服姿のドンベルさんが立っていた。後ろにはもう1人、警察らしき人が。とりあえず上がって話を聞くことに。ケルトさんは嫌な顔をしていたが、同伴オーケーと言うことで話して良いとなった。
「そんで、イリウスに話って何だ?忙しいから手短にな」
「僕は暇なのでゆっくりで平気ですよ」
「おま…」
あんまり急かすのは好きじゃないからはっきり言う。ケルトさんは嫌だろうけど僕は別に嫌じゃない。丁度話に行こうと思ってた所だし。
「まずは、この書類を見てほしい」
「わー!僕の写真が貼ってあります!なんか刑務所入った時に貼られるような写真ですけど…」
「おいおいマジかよ。何でこいつが重要危険人物に指定されなきゃならないんだ?」
「じゅうよう…?」
僕の写真が貼ってある資料。よく分からない文字が連なっている。年齢とか身長までバレてて何か嫌…。
「『重要危険人物』、意味はそのままだ。ただ、これが付く人物がちょっと特殊でね…。例えば、ケルトは付いているが、バクさんとトラさんには付いていない」
「何の違いがあるんですか?人に迷惑かけてる量ならどっちも…」
「すごく単純に言うと、目立っているか目立っていないかだ。今回は、少し目立ちすぎだと警告しに来たんだ」
「そんなに目立ってましたっけ?」
「テレビに映り、電車を止め、特大のビームをみんなが見えるように打ちまくってるのに?」
コーギーの獣人さんは痛い所を突いてくる。確かにそう考えると十分目立っているのか。
「まぁそれは置いときまして、その重要何とかに当てはまっちゃうとどうなるんですか?」
「刑務所…には入れられないから、時々監視員が君を監視しに来るかも。あと、能力の制限とかかな。一定値を超える能力を使用した場合、逮捕…は出来ないけど、罰則があったり」
「それを俺の前で言うのか?法律なんて守んなくて良いんだぞ? なんなら今すぐ上層部のやつら…」
「ケルトさん!」
ドンベルさんはケルトさんに傷付けられている。これ以上はドンベルさんが可哀想だ。
「つまるところ、目立たなければ良いんですね。わかりました。今度から気を付けます」
「そうしてもらうとありがたい。最近は上層部も妙に騒がしいんだ。ケルトについても、逮捕を再開とか言い出してるしな。現場にいる俺らの事を考えてほしい所だ…」
警察の業界も大変なんだなと悟る。そして次は僕の番だ。
「ドンベルさん。質問があります」
「良いとも。何でもこた…」
「目取りの殺人鬼について、知ってる事があれば教えて下さい」
「………どうして君がそれを?」
「色々あるんです。僕にも」
ドンベルさんの顔色が変わった。さっきまで呆けていたのが、真面目で少し怒っている顔になった。
「それなら話せないな。機密情報だ」
「だからドンベルさんに頼んでるんです。もし、無理だと言うのなら…」
「俺とやり合うつもりか?やめておけ」
「いえ、勝てるとは思いません。なので、本部への侵入も躊躇しませんよ」
「なっ!馬鹿なのか!本部への侵入は殺されても文句言えないんだぞ!」
「それほどの覚悟があるんです」
本当はやりたくない。自分を大切に思っている人に、自分の命を人質にすることは。でも呑気な事は言ってられない。どうにか導き出せれば…
「目取りの殺人鬼、身長1.7m。顔は不明、体重も年齢も不明。俺らが持ってる唯一の分かることは、あいつがこの世界に来る周期のみだ」
「!?」
周期が分かれば一気に捕まえやすくなる。場所は分からないけど、全部の探せば良いだけだ。
「おい、何勝手なこと…」
「でもタダでこの情報をあげると思ってるの?これは取引だ、ケルト」
「は?俺?」
「お前にしか出来ないことだ。簡単に言うと挟み撃ち。お前らは裏から、俺らは表から捕まえる作戦だ。最近麻薬の売買が多くてね、俺らだけじゃ手が回らないんだ」
何故か取引はケルトさんに。絶対欲しい情報だけどケルトさんが警察と協力とか絶対無理だ。僕は輝かしい瞳でケルトさんを見つめる。
「別に俺は取引しなくても困らねーんだよな〜。てかイリウスが危ないことに巻き込まれない方が優先だし?この情報は別に…ん?」
僕はひたすら輝かしい瞳で見る。
「……ちぇ。組員のやつらに言っといてやる。見つけたら捕まえろってな」
「ご協力ありがとーございまーす!あ、周期の話だけど、ドンベル。イリウス君に写真撮って送ってあげてね」
「あ、あぁ…時間がかかるかもしれないが」
「じゃあ今日はそういうことで、失礼致しました〜」
2人は嵐のように来て、嵐のように去っていった。それにしてもあの人の交渉術は凄まじい。まるでこっちのことが全て分かってるかのようだった。少し呆気に取られてしまったが、完璧な情報を手に入れられた。
「おいロヂ。どういうつもりだ?」
「どういうって何が?」
「どうして教えた。機密事項だぞ?それにあの取引はなんだ」
「機密情報って言ったって、教えなくても知りに来てたんじゃない?それであの子殺しちゃってケルトに全壊されんの嫌だし。取引はちゃんとしたものだよ」
「この前のやつか。協力って」
「そ。あの子は要だ。この世界を平和にするための要。殺人鬼の件についても任せちゃおっか。占いでも、俺らの誰も殺人鬼は捕まえられない」
ーーーーーーーーーー次回予告ーーーーーーーーー「うわぁ!何で襲ってくるんですかこの人ー!」
いつもの日常に戻ったイリウス。今日も狙われる。でも少しだけ違った。謎の人物達は能力者でもなく、目的もイリウスの命ではなかった。一体なんだ?そして明かされるトラとケルトの真実とは
よく分かんないです…ローディアって変な人いっぱい居ます…
次回「ーーペアーー」