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第134話 ーー栗 前編ーー

「おー、ここが例の山か」


「これ全部ハンスさんの土地なんですか?」


「おじいちゃんのそのまたおじいちゃんから続いてる物さ。今は両親の物だけど、その内僕の物になるさ」


 僕とケルトさんは山に赴いた。ハンスさんのお誘いによって、山の幸を取りにきた。広すぎて旬なのに1人じゃ収穫しきれないそう。


「それで、ここが組長の求めてる所さ」


「おーこりゃあ良い栗の木してんな」


 僕らの目的は栗の採取。トラさんが栗料理を作りたいと言っていたので丁度良いし取ってこようとなった。山の中に突如現れた平地に、栗の木が何十本も植えられている。地面を見ると大量の栗が。


「僕は周りを見てくるさ。好きに取っててくれて構わないけど、木は傷付けないで欲しいさ」


「もちろんです!任せてください!」


 栗を入れるようのカゴがたくさんある。これに全て入れれば良いはずだ。僕らはトングみたいなので栗拾いを始める。


「この割れてるやつを拾うんですよね。熟してるとかなんとか」


「そうだ。割れてるやつは美味い。匂いも良い匂いだしな。あ、それ虫に食われてんぞ」


「どうして分かったんですか…」


 途中で面倒になって神力で一気に回収したり、栗に刺さって痛かったりしたが、無事に回収を終わらせた。僕は暇だったので少し周りの散策をする。


「あ、キノコも生えてます。取って良いのかな…」


 チラチラと周りを確認する。


「まぁいっか。栗拾い以外もやる予定だし」


 僕がそのキノコを取ろうとした瞬間。知らない手がキノコをむしった。僕が驚いて何の手か確認しようとしたら、目の前に人間が居た。


「もーらい。早いもん勝ちだぜ」


 いかにもヤンチャそうな。ムカつく顔をしている。ピアスとかジャラジャラ付けてて。後ろには仲間っぽい人が2人居た。と言うかここハンスさんの土地なんだけど…


「ちょっと!ここは人の土地です!勝手に取るのは違法です!」


「何だよお前が地主か?」


「僕じゃないですけど僕の知り合いです!」


「じゃあ話付けといてくれよ。『僕の友達です〜』って。ギャハハ!」


 舐め腐ってる態度に嫌気が刺し、ビームで火傷させてやろうかと思ったが、ここは心を落ち着かせる。他2人の仲間を見ると、他にも取ってる物がありそうだ。どうしてくれようかと考えてる内に、そいつらはどこかへ行ってしまった。


「もう、何なのあいつら」


「あ、ナビ。一応つけて行ってくれない?」


「分かったわ〜」


 秋の風景を楽しむと言っていたナビに出会った。たまたまだったが、丁度良いし後を着けてもらった。


「どうしたイリウス。声が聞こえたが」


「ケルトさん。変な人達が居ました。勝手にこの山の物取って行ってました。犯罪です」


「まぁ別に良いだろ。正直なこと言うと、ハンスもそこまで気にしてねーぞ。売り物でも無いしな」


「…そうなんですかね…」


 僕は納得出来なかったが、そもそもローディアで法律とか気にしてる方がおかしいのかと妙な考えが生まれてしまう。ケルトさんにも見つかったし、ハンスさんを探すことにした。どこを探しても居ない。そんなことをしていると、ナビが急いで飛んでくる。


「イリウス!栗の木のとこに戻って!」


 焦っている様子だったからすぐに戻ると、またあいつらが居た。僕らが集めたカゴをひっくり返したり、持って行こうとしたり散々だ。


「おーすげー。こんなに集まってんじゃん。虫食いとか省かれてるし」


「せっかくだし記念写真でも撮っとく?」


「良いねー。落ち葉が降ってると映えるよな。おらっ!」


 木を蹴ったりしている所を見て、異様に怒りが湧いた。


「ちょっとあなた達!またですか!やっちゃいけないって言ってるのです!」


「うわ、またお前かよ。良い加減うぜーな。どこで何しようが俺の勝手だろ?」


「あんた警察でもないんだからうちらを勝手に犯罪者扱いしたら違法じゃないの?」


「そうだそうだ。地主でもないくせに偉そうになってんじゃねーぞ」


 何を言っても聞かない。逆に調子に乗ってる。ケルトさんが強気に言ってくれれば黙ると思うのに。


「行こうぜ。ここだとこいつがうるせーや」


 そう言ってまたどこかへ行ってしまった。僕は行き場のない怒りをケルトさんにぶつけてしまう。


「なぁイリウス。だいじょぶ…」


「大丈夫に見えるんですか!木だって傷ついて、せっかく収穫したのも荒らされて、どうしてケルトさんは何も言わないんですか!いつもならすぐに殺してるじゃないですか!」


「…そうだな。昔の俺ならそうしてたな。でも今は違うんだ。ここで殺せば、死体の処理とかその他諸々でハンスに迷惑がかかる。あいつも覚悟は決まってんだろうけど、能力的にも日常的に死体を見るわけでもない。俺だって、相手を選んで、その守備範囲内で勝手してるんだ。ここがシャーガの土地とかなら余裕でぶっ飛ばしてる」


 納得せざるを得ない。確かにハンスさんは死体とか見なさそうだし。見せるのは可哀想だ。この山に埋めるわけにもいかないし。でも殺さないレベルなら、とか思うけど、それで悪評とかが広まっても悪い。手が出せないのかな。

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