表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
133/251

第132話 ーー筆の名前ーー

「うーん…?」


 僕の誕生日の翌日。大きなケーキに豪華な食事を平らげ、お腹いっぱいの状態で寝てしまった。唯一覚えてるの会話が、


「余りすぎちまったな。明日の朝食にでもするか」


「にゅ〜」


 である。その後からは記憶がない。変な時間に目が覚めたようで、原因が何か考えているとガタゴトと音が聞こえる。仕方がないから起き上がり確認する。


「お?起きたのか」


「何やってんの?こんな時間に」


 筆が何かを描いている。情景画のようだ。綺麗な緑色に、鮮やかな青色。とても素敵な場所だ。僕は何を言うわけでもなく、ただその絵を見つめてしまった。


「たまには自分でも描かないとな。せっかく高い絵の具もあるんだし」


 改めて見ると、浮いている筆が勝手に絵を描いているというのは不気味がすぎる。

 じーっと眺めながら、僕はあることを思う。


「そういえば、名前付けてなかったな」


「あ?名前?いらねいらね」


「でも筆だと呼びにくいよ。それに意思があるんだから名前くらい…」


 幽霊にすら『ナビ』って言う名前が付いてるし、使い魔にだって『スキュー』って名付けている。筆だけ『ふで』だと何か嫌だ。


「犬に『いぬ』って名付けてるようなものだよ。絶対おかしいよ」


「えーめんどくせーなー」


「何話してんだ?」


 急にドアを開けたのはケルトさんだ。この時間に起きてるとは流石だ。どうやら僕が話しているのが聞こえたらしい。


「筆に名前を付けようと思ってます」


「またそんなことしてんのか…良いか?スキューについてもそうだったが、物に名付けなんてしねーんだぞ?」


「この子もスキューも物じゃないです!しっかりと意思のある生き物です!」


「そいつらが特異例すぎんだよ…」


 少し呆れてそうだったが、僕のことは止められまいと悟ってドアを閉めた。

 僕はその後、名前を考える。何か特徴が欲しい。その上、名付けに丁度良いエピソードとか…


「実現化…絵の具…筆…芸術…」


 僕は初めて出会った時を思い出す。僕の部屋を勝手に汚しまくっていた。あの時は折ろうと考えてたな〜。


「あの時ってペンキと絵の具で汚してたんだっけ」


「そうだな。元々あった絵の具でペンキを描いた」


「じゃあ…ペンキと絵の具で『ペグ』!」


「はぁ?んだよその可愛らしい名前は」


「良いじゃんペグ!筆らしい名前だよ!」


「…ったく」


 勘違いかもしれないが、少しだけ嬉しそうに見えた。喉が渇いたからリビングに向かうと、珍しいことに3人とも居た。


「あれ?ケルトさんとトラさんはまだしも、バクが起きてるなんて…」


「失礼よの。我だって早起きぐらいする。お主こそ何でこんな時間に?子供はよく寝るものだぞ」


「筆に名前付けてた!ペグって言うんだ!」


「ははは。筆に名前か。実にイリウスらしい」


 トラさんとバクは笑っていた。ケルトさんは少し考えた後、こう言った。


「それって由来なんだ?」


「ペンキと絵の具です。僕の部屋を汚した時の道具です」


「…お前って名付けのセンスあるな。ご主人様とは大違いだ」


 バクが「何だと!」と少し怒り気味だったが、トラさんも否定する気がない。一体何が…?


「実は俺とトラの名前ってご主人様が付けたんだぜ」


「そうなんですか?それならセンスあると思うんですが…」


「良いか?候補の中の一つってだけで、他の候補がやべーやつだったんだよ。最初の名前は今でも覚えてる。驚くなよ? 『パンデ・モ・ニウム』だぞ?危うくパンデだぞ俺」


 あまりのパンチに吹いてしまった。その後大笑いしてバクに怒られた。


「パンデモニウムには混乱的な意味があるのだ! 我々を混乱させたお主には丁度良いと思ったのだ!」


「それはそうと…俺の名前も覚えてるんですか?『コレイトマグナス』ですよ? どんな名前ですかこれ」


「そ、それは…なんかかっこよかったから…」


 僕らで笑っていると、バクは恥ずかしがってくる。


「うるさいうるさーい!我だって色々考えておるのだ!」


「あーははは。はぁはぁ、分かった分かった。結果的には良い名前付けてるし。ケルトさんとトラさんの由来って何?」


「ケルトはケルベロスみたいだからケルトだ。トラに関しては…虎であろう? あ、あと文字にすると分かりづらいが、虎は『ト↓ラ→』であるが、名前は『ト↑ラ→』だから気をつけるのだぞ」


 意外にも真っ当な由来で驚く。数撃ちゃ当たるとはこの事だろうか。あんまりいじるのも可哀想だからここまでにして、ペグについての話題になる。


「あの筆。描いたものを実現化出来るのだろう? 中々に強くないか?」


「そうだね。でも調整が難しいらしいよ。ちょっとでも間違えれば別の物になりかねないって」


「まぁそれが絵の難しい所だからな。水晶を描いてるつもりが、ただのビー玉みたいになっちまうこととかあるだろうしな」


 ペグのあの力は、きっと僕の神力による物だろう。どうして神力を使えてるのかは謎だが、利用出来るんなら利用していきたい。何はともあれもう眠くなってきた。僕はその場を後にして二度寝へと入る。ペグ、僕の新しい仲間だ。


ーーーーーーーーーー次回予告ーーーーーーーーー

「久しぶり!」


 旅行から帰ってきて1週間ほど。思えばイリウスの友達であるピルスとの関わりが少なかった。久しぶりに遊ぶ約束をしたイリウスは、ピルスと街を出かける。

 ムムム…我ってそんなに名付けのセンスがないのか…かっこ良いと思うのだがの…


             次回「ーー紹介ーー」

ちょっとでも先が気になる!おもしろい!と思いましたらブクマ、感想などしてもらうとモチベになりますm(__)m

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ