表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
132/252

第131話 ーーイリウスの誕生日ーー

「ぐぅ〜。ヒュ〜。ぐぅ〜。ヒュ〜…」


 色々あったハロウィン。1日が過ぎ去るのは早いもので、あっという間に寝る時間だ。僕はもうぐっすり寝ている。


「はぁ〜。全く、あいつはほんと色々呼び寄せちゃいますね」


「そうよの〜。本人は戦う意志もないから可哀想だの。我々がどうにかしてやらんとな」


 ケルトさん達3人は、スナックをつまみにお酒を嗜む。僕について話してるようだ。


「もう11月に入ってしまうな」


「そうだな。11月はこれと言って特別なもんねーし、落ち着けそうだな。イリウスに修行付けてやれる良い時期だ」


「そういえば、イリウスが来たのもこのくらいの時期ではないか?」


 僕がローディアに連れてこられた日。全てはそこから始まったんだ。


「そうですね。イリウスが来たのは11月1日。ちゃーんと覚えてますよ」


「と言うことはもう一年経つのか。早いの」


 ケルトさんも、トラさんも、それを言ったバクですら違和感を感じた。黙り込んで違和感の正体を探すと、ハッと気づく。


(((イリウスの誕生日っていつだ????)))


(そういえば考えていなかった。このままでは永遠の10歳ぞ…)


(やべー人間界で誕生日の欄は見てなかった。てかもう11歳じゃねーか?)


(誕生日…何してやろうかな)


 焦っている様子の2人。トラさんはとても落ち着いている。僕自身も誕生日の記憶はないからいつが誕生日か覚えていない。


「おし決めた!イリウスの誕生日は明日だ!」


「き、急すぎるであろう!我は何も準備しておらんぞ!それに勝手に誕生日を変えるなんぞ…」


「あーもううるさいです!俺が父親なんですから俺が決めます!」


「明日は忙しくなりそうだな。イリウス、喜んでくれるかな」


 言い合っているケルトさんとバク。トラさんは妙に落ち着いている。てか何でトラさんだけ悟った感じなんだろう?

 何はともあれ朝が来た。僕がゆっくり目を開けるとカーテンから入ってきた光が映る。


「うにゅ〜。今日も良い日になると良いです!おはよ〜ナビ、筆〜」


「あら?もう朝なのね。もう少し休むわ」


「俺はまだ寝とくぞ〜」


 「だらしないんだから」と思いながら顔を洗いに洗面台に向かう。洗面台にの扉を開けると、そこにはトラさんが居た。顔を洗っていたみたいだ。タオルを取ろうと手をごちゃごちゃしてたので渡してあげる。


「おはよう、イリウス」


「おはようございます!こんな時間に顔を洗ってるなんて珍しいですね」


「少し夜更かししてしまってな。朝食は出来てる。早く来るんだぞ」


 微笑みながら僕の頭をポンポンと撫でる。いつもより機嫌が良いように見えた。僕もささっと顔を洗い、リビングに向かう。


「おはようございまーす!」


「おはようイリウス。飯食うよな?」


「はい!」


「相変わらずよの。おはよう」


 バクは相変わらず新聞を広げている。ケルトさんは僕のご飯をよそって置いてくれている。僕が席に着くと、みんなも席に着いて朝食を食べる。


「いっただっきまーす!」


 むしゃむしゃと食べていると視線を感じる。みんなが僕を見ているんだ。悪いことしたわけじゃなさそうだが…


「なぁイリウス。その…自分の誕生日って覚えてるか?」


「?ケルトさんの誕生日は4月の2日です」


「違う違う。イリウスの誕生日だ」


「…僕?」


 うーんと考えてみるが思い当たる節がない。


「もし、良ければなんだけどよ。今日ってお前が初めてローディアに来た日なんだよ。だから今日を誕生日にするってのは…ダメか?」


 突然のことに驚いたが、そのことで僕の様子を伺っていたのかと理解する。


「僕の誕生日のこと、考えてくれたんですね!すっごく嬉しいです!それで構いませんよ」


「そうか!良かった。これで存分に祝えるな」


 3人とも嬉しそうにしている。僕としては、普段から大事にされてるから、祝われなくても全然良いのだが、ケルトさん達も祝いたいんだろう。


「プレゼントは何が良い?欲しいものがあるなら何でも買うぞ」


「うーん…それはバクが選んで!みんなが選んでくれたものなら何でも嬉しいです!」


「そうであるか。分かった、頑張ってみよう」


 初めての感覚だ。誕生日を祝われるなんて。記憶がないせいかもしれないけど。僕は朝食を食べ終え、部屋に戻る。ケルトさん達は出かけてしまったみたいだ。


「誕生日か〜。僕って本当はいつだったんだろう」


「あら?誕生日なの?おめでとう」


「えへへ〜。ありがと〜」


「ケーキでも描いてやろうか。まぁ実体化は力使うからやらねーが」


「それならただの絵でしょ」


 ナビと筆は元気そうだ。毎日絵を描いてるからか、筆も機嫌が良い。


「イリウスは、人間界出身なのよね?それでこっちに来た時に記憶を失った」


「そうだよ。急にどうしたの?」


「そんな大事なことじゃないんだけどね。人間界のことってどこまで覚えてるの?誕生日も忘れてるんじゃ何も覚えてないんじゃない?」


「そうだね。なんて言うか、情報を思い出せないだけで、その時の風景とかは思い出せるって感じかな。『これ見たことある!でも何だっけ?』みたいな感じ」


「なるほどね〜」


 確かに言われてみればそうだ。僕は情景しか思い出せない。見たことある場所や、やったことあるやりとりをすることで、その時の情景が出てくる。でも情報はさっぱりだ。変なの。


「誕生日、ねぇ〜」


 そう考えていると、また一つ記憶が戻ってくる。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「「「誕生日おめでとー!!!」」」


「ありがとう!」


 目の前には蝋燭が刺さっているケーキ。たくさんの食べ物。電気が消されていて、蝋燭の火だけが明かりだ。お母さんにお父さん…あと1人いる?


「さぁ、蝋燭を消して?」


 ふぅーと息を吹くと蝋燭が消える。お父さんが明かりを付けに行き、部屋は明るくなる。


「おめでとう、優斗」


「ありがと!○○!」


「ん?何か言った?」


 お母さんがよそ見をしている間、そのもう1人と言葉を交わす。顔も名前も分からないが、この人は祭りの記憶の人だ。


「ううん!何も言ってない!」


 どうして嘘を吐いたんだ?お母さん達には見えていない…?

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 パッとベッドから起き上がる。今のは何の記憶だったんだろう。そうこうしているうちに夜が来て、いつの間にか帰ってきてたケルトさん達が僕の誕生日を祝う。


「「「誕生日おめでとー!!」」」


「ありがとうございます!」


「早速だがプレゼントだ!開けてみろ!」


 綺麗に包まれた箱。僕はその箱を開ける。


「わー!お人形だー!」


 可愛らしい犬のぬいぐるみ。黒色の毛をしており、どことなくケルトさんが意識してあるように見える。


「1人で寝るのも可哀想やしの。その人形と寝ると良い」


「なに!?寂しいんだったら先に言えよ!俺の部屋で一緒に寝ようぜ」


「今度お邪魔させてもらいます。バクありがと!」


 人形を大事に抱えて落ち着く。本当に嬉しい。次はトラさんが持ってきた。


「これ、喜んでくれると良いが…」


 これまた少し大きめの箱だ。中を開けると、たくさんのお菓子が入っていた。開けた瞬間のバターの香ばしい香りが漂ってきて食欲をそそる。


「少し張り切ってしまった。プレゼントとか送ったことなくてな…料理くらいしか出来んから、こんなものになってしまった…」


「すごい嬉しいですよ!流石はトラさんです!」


 多すぎるからピルス君と分けて食べようとか思っていると、ケルトさんの番が来る。


「俺は少し特殊だからな。目ぇ瞑ってろ」


 1年修行券とかじゃないよなとドキドキしてると、手を触られる。その瞬間、


「ケルト!それはダメだ!別の所にしろ!」


 バクの怒号が飛ぶ。心配になりながらも目を瞑って待っていると、指に何かが嵌まる。


「目、開けて良いぞ」


 何かを感じる左手の中指を見てみると、そこには綺麗な指輪が嵌められていた。


「わー!すっごく綺麗です!」


「喜んでくれたようで何よりだ。お前には、やっぱりアクセサリーが似合うと思ってな」


 僕は自分の指を見て、目を輝かせながらも一つ思った。


「でも…」


 僕は指輪を外す。少し眺めながら、こう言った。


「子供の僕には少し早いです。大人になったら、また付けたいと思います」


「…そうか。そうだな。今のお前なら、首輪だけの方が満点だ」


 子供で指輪を付けてるなんて、ちょっと僕らしくない。でも、僕はみんなの目をしっかりと見て言う。


「本当に、ありがとうございます!」


ーーーーーーーーーー次回予告ーーーーーーーーー

「そういえば、名前付けてなかったな」


 誕生日の翌日、イリウスはあることを思う。そう、筆だ。筆だからと言って筆と呼ぶのは些か悲しい。せめてもう少し捻りのある名前を上げたい所だ。イリウスの名付けセンスが問われる。

 イリウスは賢いからな!名付けのセンスも一人前なはずだぜ!


           次回「ーー筆の名前ーー」

ちょっとでも先が気になる!おもしろい!と思いましたらブクマ、感想などしてもらうとモチベになりますm(__)m

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ