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第129話 ーーハロウィン 中編ーー

「いっただっきまーす!」


 机いっぱいに並べられた料理。それの一つ一つが美味しそうな匂いを発している。むしゃむしゃ食べている時、ケルトさんがまだお皿を持ってくる。かぼちゃのポタージュみたいだ。


「そんな急いで食うなよ。まだまだあるからな。食後にはかぼちゃケーキもあるぜ」


「やったー!」


 微笑ましいようで、バクもトラさんも箸を止めて僕の方ばかり見ている。ここまでは平和な日常だが…


〔ここで臨時ニュースです。昼間から続いている放火事件ですが、未だに継続しています。警視庁は捜査を開始していますが、見つかっていません。消防署が応援を配置しているので、被害は抑えられています〕


「…」


「消すか?」


「大丈夫です」


 放火事件の犯人が妖怪と言われている。でも僕が会った時はそこまで凶暴には見えなかった。どちらかと言えば子供みたいだ。放火方法はガソリンを使った物から直接的な物まで様々だ。いずれもきっと同一犯。色々考えながら食事を終わらせる。ケーキは甘くて甘くて美味しかった。


「ごちそうさまです!」


「おうよ!腹一杯なら、みんなで外行きません? 丁度良いもん買ったんですよ」


「ん?良い物?何だそれは」


「洗い物してるんで、そこの袋見てください」


 バクがケルトさんの買ってきた物を漁る。取り出してみると、そこには仮装道具があった。どれも僕とバクのサイズだ。


「これは…イリウスが選ぶやつよの」


「え?バクも着るんじゃ…」


「お主の方が似合っておる。ほれほれ、好きな物選んで着るとよーい!」


 そんなことを言われて全ての服と共に部屋に入れられた。この中から選べと言われたがどれが良いかとか分からない。普段着もケルトさんに選んでもらってるし…


「うーん…あーもう!」


 全部見ても分からないのでとりあえず着る。


「まだかの?そんなに迷うものではないのだぞ〜」


「楽しみだ」


 バクはあくびしながら、トラさんはしっぽを振りながら待っている。トラさんとバクが待ちくたびれた頃、僕は部屋のドアを開ける。


「なっ!」 「おー!」


「ど、どうですか?」


 いっそのこと合わせてみようと、ドラキュラの牙とマント、狼男の耳と尻尾、フランケンのネジ、ミイラ男の包帯を足回りに少し、を組み合わせた。この天才的なアイデアにひれ伏すことだろう。


「ま、まぁまぁ。我にはない発想だったの。トラはどう思う?」(こやつ、ここまで可愛いやつなのか…)


「………え?あ、はい。とても似合ってるぞ」


「トラさん鼻血出てます!」


「す、すまん」(やばい流石に可愛すぎる…)


 トラさん達の反応がイマイチだ。もしかして似合ってない?そう思いながら着替えようとしたが、バクが止める。


「良い事を思いついたぞ。その格好でセリフを付けるのだ!」


「せ、セリフ?」


「そうだ。ケルトが来たら…」


 こしょこしょと耳元で話され、僕は納得する。ケルトさんが喜ぶというなら全然歓迎だ。しばらくも待たないうちに、ケルトさんの足音が近づく。バクとトラさんに隠してもらった状態で、いきなりびっくりさせる作戦だ。


(イリウス、何の仮装にしたのかな〜。俺的にはやっぱ狼男だよな。狼だと同種族だし、そん時は本気で好きになっちまいそうだな〜。てか同種族なら結婚も出来るよな。俺の血で何とかイリウスの自我だけ残せねーかな。今度適当に悪いやつ生け取りにして実験しよ)


「おうよ、イリウス〜。って何やってるんですか? イリウスは?」


「ムフフ、どうだ!」


 バッ!とバクとトラさんが退くと、例の仮装をした僕が現れる。そこで決めの一言だ。


「お…お菓子くれなきゃ…いたずら…しちゃいますよ!」


 ガオーみたいな決めポーズと共に、僕の可愛さが炸裂する。ケルトさんの方を見ても特に反応なしだ。


「もう!無駄に恥かいただけじゃん!」


「おや?もっと良い反応得れると思ったのだがの〜。可愛かったんだがの〜」


「もうやんないからね!」


 ムっとほっぺを膨らませる。それにしてもケルトさんが妙に静かだ。バクも不思議に思ったのか「ケルト〜」と呼んでいる。目の前まで確認しに行って、


「き、気絶しておる…」


 こんな事実が発覚した。ケルトさんも目を覚まし、いよいよ外に出かける時間。僕はワクワクしながら歩く。


「全く、あんな可愛く出来たんなら普通に言ってくださいよ!可愛すぎて気絶したじゃないですか!」


「すまんすまん。イリウス好きのお主がどんな反応をするのかと気になっての。トラも同じだろう?」


(意識が飛びかけたことは言わないで良いだろう…)「はい」


 4人で仲良く話しながら夜のお散歩だ。ライトアップされた街は不思議な感じだ。クリスマスの時みたいな綺麗な感じとは違って不気味な明るさ。それでも、仮装した人々や可愛らしい飾り付けのおかげで楽しいの方が勝つ。


「すごい賑わってます!ナビも来ればよかったのに」


 ナビのことは誘ったが来てくれなかった。珍しい。筆は…誘うわけにはいかない。浮いてる筆とかホラーだし。


「あ!おっきいかぼちゃです!」


 こんなワイワイ楽しんでいるが、僕の目的はこれじゃない。放火の犯人を探す事。このままでは妖怪の立場も危うくなってしまう。


「どうしたイリウス。ソワソワしてんな」


「え?あ、あぁ…と、トイレ行きたくって」


「んなら行ってこいよ。待ってるからな」


「は、はい」


 僕はトイレに行くふりをして、こっそり抜け出す。後で怒られるのは重々承知だ。放火した場所には規則性がない。見つけられるかは完全に運だ。裏を中心に、そこら中を回った。それでも見つかる気配はしなかった。


「はぁはぁ…どこに…」


「何がだ?」


 後ろを振り返るとケルトさん達が立っていた。少しだけ怒ってそうな顔だ。腕を組みながら、僕を睨んでいる。


「え、えっと…トイレの場所が…」


「嘘は嫌いだぞ?」


「…放火魔を探してました…だって、あの妖怪がそんなかとするなんて思えなくて…何でも妖怪のせいにするのが許せなくて…」


「その気持ちはまぁ分かる。お前のことだろうからよっぼど同情してんだろうな。だが、それならそれで俺らに言え。何で1人で抱え込む?」


 僕は俯きながらも話す。


「特に…危ない目にも遭いませんし、僕の身勝手な調査ですので…」


 放火のやり方から見ても、能力を使っているとは思えない。素の人が相手だと、能力を使ったらすぐに捕まえられる。負ける要素はない。


「だとしてもだろ。それならそれで正しく判断して許可を出す。良いか?お前の判断より、俺らの判断の方が基本は上だ。お前が危ない目に遭うか遭わないかを決めるのは俺らだ。そこちゃんとしろ」


「はい…」


 人が誰もいない一本道。こんな所で叱られる。暗い暗い道の中、ある言葉が僕に向かって飛んでくる。


「トリックオアトリート!」


 目を凝らすと、そこには記憶に新しい、かぼちゃ頭がいた。

ちょっとでも先が気になる!おもしろい!と思いましたらブクマ、感想などしてもらうとモチベになりますm(__)m

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