第127話 ーー秘めた力ーー
「そんでそんで?俺はどうなったんだ?」
「その後トラさんに殴られて、元に戻ったんです」
前回、ケルトさんが記憶喪失になってしまい昔のケルトさんに戻ってしまった。戦い好きの殺し好き、そんなケルトさんを止めるために僕らは全力で挑む。それでも圧倒されてしまった僕らは諦めかけていた。そんな中、僕の秘めた力、神得化が発現したことにより何とか抑え込むことに成功する。さっきは、記憶が戻ったケルトさんに説明しているところだ。
「なるほどな。あいつの初キス奪っちまったのか。わりーなトラ!」
「許さん!」
涙目のトラさんといつも通りのケルトさんがじゃれ合う。いつもなら微笑ましい所だが、こうなった責任は全て僕が持つべきだ。
「本当にごめんなさい…あんなことになるなんて…」
「んーまぁ俺の不注意もあるしな。結果的にお前が尻拭いしたんだから許してやる」
優しく注意してくれるケルトさん。でもすぐに目の色を変える。
「そんで、詳しく聞きたいことなんだが。神得化についてもっと話してくんねーか?」
「え?神得化についてですか?なんで急に…」
「本気の俺を相手にボコしたんだろ?気になるに決まってんだろ!」
ケルトさんから見れば僕は期待の星。強くなる原石だ。気になるのも仕方ない。
「というかお主、神得化について知っておるのか?」
「まぁそうですね。その名前の事は知りませんでしたが、過去に似たようなものを使ったやつがいましてね。それと同義かと」
「身体の中にある神力が溢れてきて…身体能力も上がりました。あと、神力を使った攻撃も全体的に強化されました。何故かスキューが呼び出されましたが…」
僕の説明を聞いてもいまいちピンと来てないようだ。指を顎に置いて考えてる様子。何を悩むことがあるんだろう?
(身体能力の強化に能力の強化…か。いつものイリウスは知ってる。もしあん時戦ったやつも神得化だとしたら強化倍率おかしくねーか?聞いた話だと俺を丸焦げにしたらしいしな)
「ケルトさん?」
「んあ?どうした?」
「いえ…なんか考えてるみたいでしたので…」
「まぁな。それに関しちゃ、後の方で考えれば良い。それよりな、下手したらあと1年でお前が1番強くなるかもしれねー」
驚いた形相でバクがこっちを見る。トラさんも落ち込んだ状態から復活したようだ。僕もどんな顔をすれば良いか分からない。
「えっと…僕が1番!?」
「まぁあくまで俺らが成長しない、お前の成長ペースが一定だった場合だがな。俺の聞いた話が事実なら、お前に憑いてる神『生物を生みし神』は、神力量が他の神と比べ物にならないくらい多いんだ。その神の神力を6割吸えた時点で、お前の強さは10倍近く行く」
「ちょ、ちょっと待ってください!いまいち整理出来ません!」
僕が1番?強さが10倍?訳が分からない。生神様の憑き人になったこと自体が特殊ってこと?全く分からない。神様に直接聞くしか…
「単純に言おう。生神に憑かれる時点で、お主の器の大きさは半端なく大きい。生神の1割が、我の8割程度。そう考えれば分かるであろう?」
「うーん…実感湧かないよ…神得化ってそんなに凄いことなの?」
「凄いも何も、800年生きてる我ですら一度も見たことがないほどだ。神得化の条件自体、本人が滅多に遭遇しない状況に設定されてるみたいだしの」
どうやら凄いことらしい。聞いている限りだと、神得化はめちゃくちゃ強くなって、その時の強さは常識を超える。そして意識して出せる物じゃないから使えるかは分からない。よって理論値で言えば、僕も最強になりうる。
「詳しい事は神様に聞こ…とにかく戻って良かったです」
「そうだな。飯飯〜」
「ケルト、少し良いか?」
トラさんは立ち上がり、ケルトさんの前に立ちはだかる。
「なんだ?キスで目覚めちまったか?わりーが男は…」
「違う!今度から本気を出す修行をしたい」
「さっき話してたやつか。俺らが本気の出し方忘れてるってやつ」
「そうだ。このままでは守りたいものも守れんのだ。おそらくトランプの時も、本気を出せていればあんなことにはなっていなかった」
「イプシロンでも来たら今度こそ大変だな!分かった。ちゃんと修行してやるよ」
秘められた力を持ってるのは僕だけじゃないみたいだ。昔のケルトさんでは、今の力を上手く扱えていなかっただけ。今のケルトさんの本気は、僕が神得化したところで比べられるほどの物なのだろうか。
「あ、さっきも言ったが、一定のペースで強くならねーと1年どころか10年かかっても俺らには追いつけねーぞ。今みたいにサボってばっかだと、神になる前に死ぬからな」
「は、はい…」
期待に応えるには強くならなきゃ。そう思いながらハコニワの外に出る。そろそろ外も冷えてくる。
ーーーーーーーーーー次回予告ーーーーーーーーー
「お、お菓子くれなきゃ…いたずら…しちゃいますよ!」
ケルトの件から心機一転、イリウスが大好きな行事だ。仮装にお菓子、あらゆることが輝いて見える。ローディアでは、不思議な夜が始まろうとしている。
ハロウィンで喜ぶなんて子供ね。これぐらい元気な方が丁度良いわね。
次回「ーーハロウィンーー」
ちょっとでも先が気になる!おもしろい!と思いましたらブクマ、感想などしてもらうとモチベになりますm(__)m