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第125話 ーー神得化ーー

「へへへ。負け戦なのに頑張るじゃねーか!」


 何とかトラさんが僕らの方に近付けれないようにしてくれている。それも長くは持たなそうだ。僕らの援護にも限度がある。少しでも気を抜けばトラさんに攻撃が当たる。


「おーらよっと!」


「うわぁ!」


 ケルトさんはトラさんとの戦いの最中に石を飛ばしてくる。あんまり油断し過ぎていると投石にやられてしまう。何はともあれあっちは余裕そうだ。痩せ我慢ならありがたいが。


「おらおら!まだ遅いぞ!」


「くっ!」(一撃でも当たれば勝ちなのに…こいつに当てられない! こうなったら…)


「ダメだトラ!」


 トラさんが防御出来ないよう大振りをしようとした時、バクは大声で止める。でも既に遅かった。


「自分から隙を晒すなんてな」


「グボぉ!」


 野晒しになった腹に、ケルトさんの一撃が入る。その威力は凄まじく、トラさんの腹に穴が開くほどだ。そのまま後ろに吹っ飛んでいき、遠くまで行ってしまう。


「トラさん!」


「だから、何で人の心配なんてしてんだよ」


「イリウス!」


           ゴキッ



 そんか音が聞こえた途端、目の前が暗くなる。浮いていたはずが、上も下も分からなくなる。うっすらと見える物は、ケルトさんの腕だけだった。


「まずは1人。お前、不死身だろ。俺も一緒だから分かんだよな。対処法」


(まずい…イリウスの首が完全に折られている。このままでは死ぬ…どうにかせね…ば)


 気付くと、我は首と胴を離されていた。一瞬で、しかも我が気づかない速度で、頭を掴まれていて驚いた。


「すぐ再生するやつは、こうやって!頭だけ遠くに飛ばすと復活しにくくなるんだよな」


「主!イリウス!……お前」


「やっと戻ってきやがったか。さっさと始めんぞ」


 目の前には首が折れてるイリウス。肉も抉られている。あれではケルトの血を使っても時間がかかる。主の胴体が走って行くのが見えた。対処されたのか。押さえ込むのは俺しかいない。


「貴様は、絶対に許さない!」


「んなら殺してみやがれ!」


 変わらず繰り広げる戦い。だが、イリウス達の援護が無ければ押される。腹に空いた傷も相待って、勝ち目はほぼ無い。でも俺がやらなきゃ誰がやる!


(痛い…喉が熱い…でも、立たなきゃ…)


(イリウス?立つな!もう立たなくて良い!ケルトにバレたら…もうお前の命は一つしかないんだぞ…)


(僕が居なきゃ…やらなきゃ…)「ゲホッ!」


(何で…何で立つんだ…もう止めてくれ…)


「あ?生きてんじゃねーか。お前も不死身か?そうは見えないが…まぁ念の為もっかい殺しとくか」


(僕が…戦わなきゃ…トラさんを…バクを助けなきゃ…命を…)


 あぁ…イリウスが狙われる…。ケルトに殺される。子供1人も守れないのか。俺は…俺は…


        なんて弱いんだ


 俺は涙が出てきた。自分の情けなさに。子供が傷だらけになっても戦わせてしまう弱さに。このままイリウスが殺されるのを見届けるしかない。もう…間に合わない。


「命を…賭けてでも!」


 ケルトがイリウスに辿り着くまで数メートル。一瞬で過ぎ去るはずの時で、イリウスの気配が変わる。ケルトが一歩引いた。俺も毛が逆立つように警戒せざるを得なくなる。


(何だ、この気配は…間違いなくこいつからだ。震えが止まらねー。俺が怯えてるって言うのか?ありえねー。見掛け倒しだ。今すぐぶっ殺して…)


(おり)


 ケルトが動き出した瞬間、イリウスの囲がケルトの行動を制限する。すぐさま檻の如く閉じ込められ、


「おい! 何だこ…」


 全て言い終える前に、見たことのない出力のビームが下から伸びる。ビームが出きった後、中からは黒焦げのケルトが出てくる。


「…んだよこれ…骨まで焼けてやがる…」


「何これ…力が…神力が溢れる…?」


 僕はおかしな状況に困惑する。いつもなら出来ない技、出来ない出力、今それを体現している。心なしかケルトさんの動きも遅く見える。


「あ、あれは…一体…」


「可能性としては…神得化」


 いつの間にか帰ってきた主が、観察している。


「神得化?それは一体…」


「我も諸説しか知らんが。神の憑き人が、誰にも知らされていない条件を達成することで、『神力をより多く得る状態』になるとされている。普段我々が受け取っている神力は、精々神の持つ神力の2〜3割。それが神得化になることで、7〜8割まで上がる。そこまで増加すると、普通は無い身体能力の強化までもが勝手に付与される」


「つまり…今のイリウスは…」


「洒落にならないレベルの強さだ」


 少しでも目に神力を集めると、周りの神力で視界がぼやけてしまう。こう言う時には神力が見えない身体になってほしいと思うんだけど…そんなことを思っていると、ケルトさんの身体が治って行く。


「ゴォォォォォ!!!」


「あれ?スキュー?」


「ンゴ!」


「僕呼んでないけど…」


「ンゴォ?」


 何故かスキューが召喚される。心なしかいつものスキューより大きい。そんな呑気に会話している暇もなく、ケルトさんは瞬時に僕を仕留めようと動き出す。


「もう動かないで下さい!戦いたくないんです!」


 何も答えてくれない。ひたすらに僕を殺すことしか考えていないんだろう。ケルトさんから来る攻撃は、僕の目の前に覆い被さっているスキューの手によって守られる。反動も特にないし、スキューも苦戦している様子がない。


「スキュー…平気なの?」


「ンゴォ!」


「平気そうだね。じゃあケルトさんのこと捕まえられる?」


「ンゴォォォオオ!!!!」


 凄まじい速さで動いていたケルトさんを1発で掴み取る。そのまま僕の方に持ってきた。


「ケルトさん。もう止めましょう。無意味です」


 まだ少し火傷をしている。話かけるが無視してるみたいだ。直後に僕を睨みつけ、口を開く。


「はぁー…やっと回復してきた」


 口角を上げたと思ったら、ケルトさんを掴んでいたスキューの手が粉砕される。


「スキュー!」


 幸いスキューは使い魔だ。手とかは神力で修正される。それ以前に、


(ケルトさん…強くなってる?)


 何とか目で追いつくので必死。攻撃なんてプラスアルファだ。手が砕けながらも攻撃から守ってくれるスキューに頭が上がらない。


「スキュー!いくよ!」


「ンゴ!」


 2人でビームやら歪みやらを使って行動を制限する。例えるとしたら蜘蛛の糸だ。引っ掛かれば2人分の猛攻が来る。細かな隙間を狙って動かなければいけない。そこが狙い目。スキューはもう1人で平気と判断し、神器を取り出してケルトさんの元に向かう。


(スキュー。信じてるからね)


 僕はビームを交えながら剣で戦う。案の定受け流されたりするが、剣であるが故に打ち返したりは出来ないみたいだ。ケルトさんが僕に攻撃出来そうな隙を、スキューがビームで邪魔する。僕のビームで体勢を崩させ、そこを剣で斬りつける。


(チッ。面倒だ。こいつ、ここまでの力を持っといて隠してやがったのか?)


(そろそろだ…準備しなきゃ)


 僕の目当てはここで決着をつけることじゃない。誘導することだ。スキューと僕で決める、最大火力のビームを確実に当てる場所へ。


「今だ!」


 僕が合図を送ると、周りに放たれていたビームが囲の容量でケルトさんを捕まえる。


「ケルトさん、目を覚ましてください!!!」


 僕もビームを貯め始めると、ケルトさんは諦めたかのようにこっちを見る。


「なるほどな。お前って頭良いんだな」


 最大火力のビームが直接当たる。その威力は僕でも想像つかない。さっき出したビームの2倍火力ということだろうか。打ち終わった後、大丈夫かと様子を見に行く。


「流石にやりすぎたかな…」


 穴の空いた地面を覗き込み、中に入って行く。ケルトさんの原型が残っていれば分かりやすいはずだが…


「え、もしかして消滅させちゃった?いやいやいや、そんなまさか。僕がケルトさんを殺しちゃうなんて…そんな…嘘…」


 手が震え、涙が出てくる。怖くて不安になる。そうして立ち止まっていると、突然足を掴まれる。「!?」となったすぐさま、その姿は明らかになる。


「ケルトさん!」


 そういえば敵だったと、構えを取るがもう襲うつもりはないようだ。ゆっくりと再生していき、顔が戻ってきたくらいの時に、ケルトさんは言う。


「お前、俺のペアになれよ。お前となら、どこまでも高みを目指していけそうだ」


 本当のケルトさんじゃないのに、昔のケルトさんなのに、僕は認められて嬉しかった。心から安心して、段々と視界が暗くなっていき…


「おっとっと。おい、何してんだ…?寝てんのか?」


「神力切れだ。神得化を使った後、使用者は強制的に神力切れを引き起こす。やっと話を聞く気になったか?ケルト」


「…負けちまったしな。こいつに感謝するんだな。」


ーーーーーーーーーー次回予告ーーーーーーーーー

「ケルトさん…」


 神得化といういわゆる覚醒状態を生み出したイリウス。その強さは異次元で、昔のケルトを圧倒するほどだ。でも目的は倒すことじゃない。記憶を戻すために何をする必要がある?

 この俺が記憶喪失か。未来の俺はそんなに弱くなっちまってんのか?


           次回「ーー蘇る記憶ーー」

ちょっとでも先が気になる!おもしろい!と思いましたらブクマ、感想などしてもらうとモチベになりますm(__)m

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