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第120話 ーー協力ーー

「いったい何があったんですか…」


 前回、旅行から帰ってきた僕らはゆっくりと部屋で休もうとした。そしていざ部屋の扉を開けてみると、そこら中の床や壁に絵の具で落書きされている。荷物を置いた時はこんなじゃなかったのに…


「ちょっと誰がこんなこと…って、あ!あの筆じゃない!」


 僕はナビの声を元に、筆を探す。今壁に描いている。


「捕まえた!勝手に動くなんて悪い筆だね」


「言ってる場合じゃないでしょ。全く、ピカソの筆なんて持ってくるからよ。え?なになに?」


「僕何も言ってないよ?」


「え?でも今確かに…」


 急に聞き返されて困惑する。ナビがしばらく周りをうろちょろした後、僕が持ってる筆に近付く。


「この筆、喋ってるわ」


「嘘でしょ?」


 どうやら喋ってるらしいので、話をさせてみることに。ナビが「うんうん」とか「そうね」とか相槌を打っていて、少し心配になったが話しているんだろう。しばらく経ってナビが僕の目の前に来る。


「えっと、つまるところ、『早く離せクソガキ』って言ってるわ」


「歪めて折ってやろうかなこの筆」


「まぁ待ちなさい。私達の欲しい情報をやるって言ってるわ。もしかしたら殺人鬼について…」


 もしそうだとしたら有用な情報だ。ただ、信用出来るかは別だ。なんせ僕はピカソを殺したと言っても良い。ピカソの筆なんだから復讐しに来た可能性も…とか色々考えていたが、それじゃあ始まらないと思い解放する。解放した後、少し広めの壁にちょんちょんと仕草をする。


「ここを掃除しろってさ」


「何この筆。自分で汚しといて」


「これらは腕慣らし、本番を描くから掃除しろだってさ」


 僕はムカムカしながらも雑巾とバケツを持ってきて掃除する。中々落ちづらかったが頑張って掃除した。掃除が終わると筆は勝手に描き始める。


「何描いてんのこれ」


「さぁ。そこまでは教えてくれなかったわ」


 描いてるのを見ていると少し嫌な予感がしてきた。完成後、嫌な予感は的中した。


「この絵…ピカソじゃないか!何でお前はこれを描いたんだ!」


 やはり復讐かと思い筆を折ろうとした時、ナビが僕を止める。


「それは器。このままだと喋りづらいから用意した。動かすには魔力が必要だ。俺に魔力を寄越せ。だってさ」


「魔力って…あの時使った分以外残ってないよ。今だと神力しか…」


「それで良いってさ。何を考えてるのかしらね。でももしピカソが蘇ったとしてもここなら充分に戦えるんじゃない?」


「…それもそうか」


 僕は納得し、その筆に神力をあげた。筆はたちまち動きだし、絵を仕上げる。終わった後、筆は止まる。


「あーあー。喋れてるな」


「うわ、ピカソが喋った」


「さっき言ったはずだ。俺はピカソじゃなくて筆だ。絵柄上声は変えられないから違和感あるだろうが仕方ない。話を進めるぞ」


 女の人の絵で声も女の人なのにめちゃくちゃ男口調…ピカソと戦った後だと違和感がすごい。ともかく有用な情報を貰えるんなら何でも良い。


「まず一つ。お前らの追う目取りの殺人鬼。そいつを描いてやる」


「!?描けるのか?あいつを」


「あぁ。俺はこの目で見た。描くことは可能だ」


 僕とナビは喜んだ。全く不明だった物が少しだけ明かされたんだ。それだけで充分。


「し、か、し!それなりの条件がある」


「くっ…良いよ。何でも呑む」


「まず、俺の手入れを欠かさないこと。そして良い絵の具とキャンバスを用意しろ。自分で動くのは面倒だ、お前が俺を使って何か描け。約束するなら描いてやる」


 そんなことかと拍子抜けしてオーケーする。いざ、描いてくれるのかと期待して待っていると。


「何してる?」


「え?描いてくれるんじゃないの?」


「壁で物を描けと言うのか?キャンバスを持ってこい!」


「えー!」


 まさか今からかと思い、ケルトさんの部屋に行く。ドアの前でノックし、


「入って良いぞ。何かあったのか?」


「ケルトさん。キャンバスが欲しいです」


「そこの棚に入ってるぞ。取ってけ」


「はい」


 僕はドアの横にあった棚からキャンバスを取り出す。


(イリウス…芸術家にはならないんじゃなかったのかよ…)


 静かに自分の部屋に戻り、描いてくれるまで待つ。


「何してる?」


「え?いや描いてくれるんでしょ?」


「こんな安っぽい絵の具で描けって言うのか?高い絵の具を持ってこい!」


「えー!」


 僕は仕方ないと思いバクの部屋に行きノックする。


「入って良いぞ。どうかしたか?」


「バク。絵の具ある?高いやつ」


「そこの棚に入っておるぞ。取っていけ」


「うん」


 僕はドアの横にある棚から絵の具を取る。


(イリウス…ついにブランド物に興味が出たか。絵の具とは珍しいが良い兆候だな)


 静かに自分の部屋に戻り、描いてくれるまで待った。


「何してる?」


「ねぇこの下り何回目?」


「俺に床でキャンバスに描けと言うのか?イーゼルを持ってこい!」


「?????」


 イーゼルとは、キャンバスを立てる時に使うあの木の台みたいなやつだ。僕はトラさんの部屋に行き、ノックする。


「入って良いぞ。何の用だ?」


「あの………イーゼルありますか?」


「そこの棚に入ってるぞ。持っていけ」


「?????」


 僕はドアの横にあった棚からイーゼルを取り出す(?)。


(あれってイーゼルと言うんだな。適当に言ったが合ってるようで良かった)


 僕は半ギレで部屋に戻ってイーゼルをセットする。


「よし、良いだろう。じゃあ描くからな」


「あーもう大変だよ。これからずっとこの筆の世話しなきゃいけないの?」


「そうね。そういう約束だからね。嫌なら描いた後折っちゃえば?」


「流石に出来ないよ…意思あるみたいだし。他に情報持ってるかもだしね。協力してくれるんなら敵にする必要はない」


「よく分かってるじゃねーか。流石はピカソの上っ面を剥がしたガキだな」


 途中で筆が止まったり、色合いを独特にしたりで時間がかかりそうだったからついつい寝てしまった。この部屋の惨状を見たら怒られるだろうな〜と思いながらスヤスヤと寝てしまった…


ーーーーーーーーーー次回予告ーーーーーーーーー

「こ、これが殺人鬼の正体?」


 突如動き出した筆。その筆は協力的で、何かと情報をくれる存在だった。殺人鬼の姿を描いたと言った筆はどんな絵を完成させたのか。筆は他に何を持っているのか。

 芸術家にはならないって言ったじゃねーかよ!変人になるのだけはやめてくれ!


              次回「ーー姿ーー」

ちょっとでも先が気になる!おもしろい!と思いましたらブクマ、感想などしてもらうとモチベになりますm(__)m

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