第118話 ーー星空の下でーー
「ふぅ〜。お腹いっぱいです〜」
僕は比較的虫要素の低い料理を平らげる。この村では虫を食べるらしいが僕は食べない。満腹になった所で、夜のお祭りを見に行こうという話になった。
「夜だと照明が効いてて雰囲気抜群ですね」
「心地良い暗さも残ってて丁度良いんだよな。あんま昼間と変わってねーけど」
真ん中の木の辺りで踊っている以外、そこまで目立った変化はない。屋台とかも変わってないように見える。
「うーん。もう全部遊び尽くしちゃいましたよ…ねーケルトさん。……ケルトさん?」
気付いたら居なくなっていた。周りをキョロキョロと確認するが居ない。バクに聞くと、誰かに連れてかれたらしい。どこ行ってるんだか…
「ナビ、何かやること残ってない?」
「私に聞かないでよね。屋台の種類なんてほとんど変わってないし」
何とかして楽しもうとするが難しい。とりあえずベンチで休むことにした。
「はぁ〜。遂に終わりですね」
「そうだな。ここまで時間を感じたのは久々だ」
「我も楽しかったぞ。色々あったがな」
色々の原因はほとんど僕だ。申し訳ない気持ちになりながら謝る。
「そういうことじゃない。早く言ってくれれば良かったんだ。もっと早く知っていれば対処も早く済んだ。今度からはもっと我々を頼るんだぞ」
「うん。殺人鬼探し、協力してもらうね」
「はっはっは。あんまり殺人鬼殺人鬼言うな。お主が言うと変に聞こえる」
そんなに変かな、と笑っているバクの横で首を傾げる。そんな時、目の前に大きな足が立ち止まる。僕がゆっくりと顔を上げると、そこに居たのは変な衣装を着ているケルトさんだった。
「え?ケルトさん?…ぷふ」
「何笑ってんだこの野郎。仕方ねーだろ頼まれたら断れねーんだよ」
「ケルトさんがそんな格好してるの初めて見ました。その草みたいなの、お似合いですよ」
「マジで殴るぞ?」
お互い目を合わせて、笑い合いながら接する。これが家族なのかな。僕はそう思いながら、ケルトさんがエルフの人達に連れてかれ、踊りを伝授される様を見る。何でケルトさんが選ばれたのかは分からないが、楽しそうだ。
「そういうイリウスも、楽しそうよ」
「え?……そうかもね」
みんなが楽しそうにしてるのを見て、僕も楽しくなる。それが僕だ。だからこそ、みんなの楽しみを脅かす殺人鬼を捕まえなきゃいけない。
「ナビ。他の協力者の情報はある?」
「あるけど…今はお祭り中よ。今日ぐらいその事は忘れて休みなさい。いつまでも気を張ってたら死んじゃうわよ。私はもう死んでるけど」
「ふっ、何それ。死んでる人が死を自虐するって」
「たまには言ってみたかったのよ。イリウス、あなたが絶対に避けなければいけないことは死ぬことよ。あいつを逃すことじゃない」
「分かってるよ。もうこの命は、僕だけの物じゃない」
ケルトさんが舞台上で踊ってるのが見える。エルフさん達の話を聞く限り、神様への感謝を伝える踊りだと。毎年毎年旅人の中から1人選んで踊ってもらうらしい。
「ケルトさーん!頑張ってくださーい!」
僕が手を振るとウィンクで返す。人の文化を決して否定しない所、ケルトさんの良い所だ。そんな事があり、祭りは終わる。僕らも宿に戻り、就寝の準備をする。
「あ、そういやここの屋上行けるらしいぞ」
「何ですかそれめっちゃ気になります」
ケルトさんの突発的な発言により屋上に行く。木の上に板材が乗ってるようでちゃんと乗れる。大きな木だったから周りの景色がよく見える。地上の景色は木のせいで見えない。
「わー!すっごい綺麗です!」
見上げると満点の星空。そこら中に星があり、この世界の全ての星が見えてるんじゃと思うほどだ。
「こんな星空、ローディアじゃ見れませんよ!」
「そうだな。ここらへんは一面森だからな。明かりが無いおかげでよく見えんだ」
頭を上げていると疲れるから、寝っ転がって星を見ることにした。どこを見ても輝いている。静かな森の中、満点の星空を見る。
「何かロマンチックってやつな気がします」
「ロマンチックの意味分かってんのか?」
僕らは川の字になり、話す。大事なことも、大事じゃ無いことも、
「それで、ピカソは自分の涙で溶けちゃったんです」
「なるほどな。芸術家は変人しか居ないって聞くが、本当なのかもな。お前は芸術家になんじゃねーぞ」
「僕には芸術のセンスが無いのでなれないですよ…」
ピカソについて、協力者について、ナビについて。洗いざらい全て話した。ケルトさん達は怒らず、真剣に、親身に聞いてくれた。
「俺に電車を止めさせたのは『エアス』ってやつなのか。復讐したいと思ってた所だ」
「ゾンビの力を持つものについては分からないのか。協力者ではないのかもしれんの」
「知らねーやつばっかだ。俺らの情報含めると、協力者は4人。うち1人死亡だな」
「ピカソはピカソで本当に強かったです。エアスも傷一つ付けられなかったし…」
「四大勢力並みって訳か?」
実力だけで言えばきっと半端なく強い。ピカソだって、ナビが居なければ一度目に閉じ込められた絵の中で死んでいた。他もそうだとしたら…
「俺らはお前の味方だ。何があっても飛んでくぞ」
「そうだ。大船に乗ったつもりでいるんだぞ、イリウス」
「我々も、力が有り余ってる所ぞ。遠慮するな」
「…うん!」
星空の下で、僕らの絆はより深まる。もう1人で悩まなくて良い。安心感からその場ですぐ眠りについてしまった。ケルトさんがベッドまで移動してくれて、風邪は引かずに済んだ。
次の日の朝、
「じゃあ、帰りますか!」
【秋旅行編 終】
ーーーーーーーーーー次回予告ーーーーーーーーー
「これも完了…これも出来ました…」
旅行が終わったイリウス達。久々の帰宅でゆっくり休む。イリウスは○○の秋を全て達成する目標を掲げていた。旅行でやったことにチェックを入れているとまさかのことに気付く。
あー疲れた。でも楽しかったな。イリウスとこんな長い旅行に行くのは初めてだ!また行きてーな!
次回「ーー達成するものーー」
ちょっとでも先が気になる!おもしろい!と思いましたらブクマ、感想などしてもらうとモチベになりますm(__)m