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第113話 ーー慈悲ーー

「どうなってんの…これ」


「私にも分からないわ。ピカソという人物は1人だけなはず。それが何でこんなに」


「ふふふふ。どこで私の情報を掴んだのか知らないけど、中途半端にしか知らないみたいね」


 襲われる!そう思った時、最初の女の人以外が絵の中に戻っていく。


「おほほほほ。驚かせちゃったわね。初めまして坊や。私はピカソ。芸術家よ」


「ぼ、僕はイリウスです…」


 ご丁寧に挨拶に握手までしようとしてきた。挨拶は交わしたが握手は拒否した。


「そこのお嬢さんは?」


「私が見えてると言うの!?」


「聞こえてもいるし見えてもいる。どっちもよ」


「……ナビよ」


「よろし…」


「答えなさい!目取りの殺人鬼はどこにいるの!あなたはどんな力を使っているの!」


 ナビの怒号が響く。それも仕方ない。協力者にしてはふざけている。


「そうね〜。彼がどこに居るかは分からないわ。困った時に私の所に来て、気付いたら居なくなってるもの。私は絵の中を行き来する力を持ってる。それは知ってるでしょう?厳密に言えば、絵の中の人間に意識を移してるのよ」


「意識を…移す?」


「そうよ。意識は同時に複数の絵に移せる。だからさっきのようなことが出来たのよ。これで満足かしら?」


「…あなたは誰」


「私はピカソ!げいじゅ…」


「違う!あなたはピカソの本体じゃないはず。本物はどこに居るの!」


「…そうね〜。本物は私よ?いいや、全部が本物と言うのかしら」


「つまり…お前を捕まえるには…」


「私の絵。人が描かれている絵を全て破壊する必要がある。素直に諦めてちょうだいよ」


 このふざけたやつを倒すには、色んな世界に散らばってる全ての絵を壊さなきゃいけない。物理的に不可能はない。でも、それには長い年月を要する。そんなに時間はかけられない。


「諦めるわけにはいかない!殺人鬼は…お前らは!」


「そう…彼はあなたの大切な人を奪ったのね…彼も反省してるし、許してあげてくれないかしら?」


「反省?何を反省してるんだ?」


 こいつの言ってることが分からない。反省って何だ?どう言うことだ?


「あなたの大切な人を殺したこと。彼は悔やんでいるわよ。しっかりと悔やんでいるわ」


「反省してるんなら、何でまだ人を殺すんだ?」


「?それは関係ないじゃない。あなたの大切な人はもう殺せないのよ?」


 こいつらは化け物だ。人を個としてしか見ていない。


「………お前らは話が通じないんだな。分かった。僕も本気で怒ることにする」


 ビームを打ってそいつに当てる。身体がインクに戻ってドロドロと溶けていく。そうすると別の絵から、また出てくる。


「酷いな〜。描くのにも時間がかかるんだよ?」


「うるさい!」


 また溶かす。でも、そいつは何度でも出てくる。


「まぁ待て。良いことを教えよう」


 殺すんだったら情報を吐かせてから殺す。基本だ。ピカソは壁に文字を書き始める。


「明日、この住所に来ると良い。俺が待ってよう」


「この住所…この世界だな。待て!何を書いてる!」


「何って…」


 ピカソは文字を書いた後、その下に黒い球体を描いた。


「爆弾さ」


 大きな音と共に、部屋が黒い煙に包まれる。僕は咄嗟にバリアを張って防いだ。


「ゲホっゲホっ!あいつ!」


 部屋にあった絵は全て破壊された。壁に書いてあった文字も全て。ドアも壊れており、鍵が機能していない。


「宣戦布告だね。今すぐにでもとっちめてやる!」


 怒って今すぐ向かおうとするが、ナビはそれを止める。


「待ってイリウス!」


「待つもんか!あいつらは…あいつらは…」


「今行っても意味ないわ!全ての世界にある絵を壊さなきゃ!」


 僕は冷静さを取り戻す。今捕まえても、すぐに逃げられる。それなら意味なんてない。僕は泣きながら歩く。誰もいない個室で、悔しくて泣きじゃくっていた。

 気付くと夕方の17時だ。ケルトさん達との約束の時間。僕は急いで門前へと向かう。


「ケルトさん!すいません、遅くなっちゃって」


 みんな黙っている。何故だか分からない。


「イリウス。我は誕生日プレゼントを所望するぞ」


「え?そっか。バクは誕生日だもんね!お金無いからケルトさんのお金で買うけど平気?」


 みんな黙る。


「ちょ、ちょっと!そこは何か言う所じゃないですか!」


「イリウス。我が望むのは物じゃない。お主、何か隠しておるだろう?」


「え」


 ケルトさん達は目を合わせようとしない。僕はナビの方を見ながら焦る。嘘を吐くか、本当のことを言うか。


「ぼ、僕…何も隠して…」


「分かっているのだ!」


 バクは怒っている。いや、悲しんでるのかもしれない。


「お主は…ある日から、ずっと曇った顔をしている。いつもの笑顔の奥に、暗い闇が見える。今だってそうだ!お主は笑ってない…笑えていないではないか…」


 バクは手を震わせ、抑えているようだ。下を向き、一向に顔を合わせようとしない。


「我々は…家族ではないのか?家族とは…話し合うものではないのか?困ったことがあれば…助け合うものではないのか?」


 僕だって頼りたい。強すぎるこの人達にどうにかしてもらいたい。でも、止められるのが怖かった。本当の事を言うなら今しかない


「…ナビ。話して、良い?」


「…ええ。話しなさい」


 僕は、宿に着いた後、席に座って全てを話す。


「僕が追ってるのは、目取りの殺人鬼。僕の両親を殺した真犯人です」


ーーーーーーーーーー次回予告ーーーーーーーーー

「お願いします…協力してほしいです…」


 遂に真実を明かすイリウス。嘘を吐いてきたこと、黙ってきたこと、1人で抱えてきたこと。全部を知った3人はイリウスに何を言う?

 イリウス…俺ら、まだそんなに頼りないのか?


          次回「ーー秘密と家族ーー」

ちょっとでも先が気になる!おもしろい!と思いましたらブクマ、感想などしてもらうとモチベになりますm(__)m

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