第10話 ーー年越しーー
朝8時。僕はいつも通り起床していつものルーティーンを過ごす。いつもより真剣で精神を整えた状態を保つのです。そんな厳格な表情で朝食を食べる
「あー何だ?また何かあるのか?イリウス」
「今日は12月31日なのです。22時には寝れないのです」
12月31日といえば。
「あー年越しか。蕎麦買ってこなきゃな」
「もうそんな時期か。別に0時まで起きてる必要はないんじゃないか?」
「むむむ…嫌なのです!年越して朝日を拝むのー!」
「イリウスはイベント事が好きなんだな」
僕はこういう時意地になる。子供だから、とかじゃなく、楽しめなかった人だったから。
「だって特別感があるじゃないですか!僕そういうの好きです!」
「んまぁ本人がこう言ってんなら俺は構わないけどな」
「今日は起きてなきゃいけないから気を張るんです!」
そんな何気ない会話と朝食を終えて僕は部屋に戻る。いつも通り本を読み、時間が経ったら昼食を食べ、気付いた時には午後だ。
「イリウスー買い物行くかー?」
「行きます!」
今日も今日とて散歩ついでにケルトさんと買い物に行く。
「クリスマスからそんなに経ってないのに装飾が全部変わってます…」
街の景色はガラッと変わり色々な文化が入り混じってる。クリスマス自体は全世界そこまで浸透してなかったんだろう。年越しは全世界で浸透しているからそれぞれの文化がある。もちろん人間界のもあるが変なお面だったり謎の食べ物が売ってたりした。
「とりあえず買いてぇ物は買ったな。どうする?イリウス」
「え?どうするって何ですか?」
「もう帰っちまって良いのか?」
「うーん…」
確かに色々あるけど食べたいくらい食欲がそそられる物もないし…遊ぶ物も特にない…
「お、あっちで何かやってるみてーだぞ?」
ケルトさんは妙に人だかりが出来ていて盛り上がっている場所を指差す。とりあえずは行っていることに。
着くと、1人ローブを羽織り顔を出している青髪の青年が椅子に座り、もう1人通行人らしき人が立っている。それに群がっているようだった。
「おいお前、この群がりは何だ?」
知り合いでもない人にこの態度…。流石と言うか何と言うか。怒られないと良いけど。
「あぁここ、記憶屋って言うらしいぜ。その人の良い記憶とか見せてこの一年を体験して振り返れるらしい」
「記憶屋…」
「要するに能力者って事だな。こんな風に能力を商売にしてるやつも居るから覚えとけよ。ただ、こう言うやつは命知らずか強いかのどっちかだ。喧嘩は売らねー方が吉だ」
「人の記憶を探れるなんてすごいんですね!」
「世の中色んな能力者がいるからな〜」
僕らはそこを後にして帰った。少しだけリビングのソファーで寝ちゃったが、晩御飯の時にトラさんが起こしてくれた。
「美味しそうです!」
テーブルの上には出来たての蕎麦といっぱいの天ぷらがあった。
「うまそーだろ?早く食おうぜ」
「「「「いただきまーす!」」」」
僕は美味しい料理をいっぱい食べれてまたもや満足だ。何はともあれ夜22時。僕はとても眠くなっていた。
「別に寝たって良いと思うぞ?また来年もあるんだし…」
「ダメです!一年後なんて僕待てないです!」
「一年ってそんな長いか?」
「我々を基準に考えてはダメだぞ、ケルト」
みんなでお笑い番組を見ているが僕は眠くてそんな暇ない。そんな僕を見て少し考えたバクが提案する。
「そんなに眠いのなら一つ話をしてやろう」
「何のお話?」
「そうだな〜。目を覚ます為だからお主の興味を引くものが良いな。だーかーら、我が戦ってきたやつで強かったやつランキングー!」
「お話??」
ランキングをお話と言って良いのかは置いておいて、少しだけ興味がある。四大勢力の話もあるかもしれないし。
「まずは一位からだな。そうよの〜、トランプが厄介であった。あやつらな〜飛び道具を使うやつがいるんだがすごい当ててきてな。おまけに殺傷能力が高いから手に負えんのだ。それがリーダーの1人スペードなんだがな。」
「スペードってあのマークの?」
「そう、あれを生み出して飛ばしてくるんだ」
「変な戦い方…」
あのマークに殺傷能力を付けるなんて…。普通とは思えない。確かに先っぽ尖ってるけど。
「馬鹿に出来んぞ?相当強かったんだからの〜。後はクローバーの力も厄介だった。あやつは運がひたすらに良くてな。通常当たるはずの攻撃も当たらんのだ。その上そやつに触れている者までその効果を付与出来る。厄介だったの〜」
めちゃくちゃ強い。バフ系の力でも最強なんじゃ?そう思ってしまう。
「トランプって確か四大勢力の一つだよね。ケルトさんがダイヤとハートを逃したって言ってたけど…」
「あぁ、逃したさ。クローバーによる幸運おかげだろうよ。ダイヤの力は物理攻撃無効化、ハートは分からん。またぶつかった時は絶対逃さねー」
「とにかく厄介だった。続いて2位と行くか。そうだな〜、やはりεだな。宇宙船で襲来して来た時はどうなるかと思ったがの〜。あいつら科学技術でどんな事も出来るんだ。変なビーム打ってくるし我の攻撃吸ってくるしであー大変。宇宙船もケルトやトラでも壊さない特殊素材で出来ていたんだがな、あの時だけ2人で協力して真っ二つにしたんだ。街の復興にはだいぶかかったぞ…」
一度襲撃してきた化学兵器を扱う宇宙人。どんなのかは分からない。
「ε…宇宙人ですよね。確かそれもまた来るかもって…」
「あの時のリーダーには娘が居るようだった。報復に来てもおかしくない」
「怖いです…」
「心配するな。あの時で大半の勢力が削られたはず。そう簡単には来れんよ。宇宙人と言ったが見た目の特徴は人間と変わらん。ただ肌の色が青くて触覚が付いているだけだ」
「そこら中に居そうだね。ローディアなら」
「そうよの、いつ来てもおかしくはない…。では3位と行こう。……………そうよの〜、居ないな」
「え?」
3位無し!?ランキングとしても破綻してる…。
「居ない。正直あの2つと比べてしまうと劣る者が多くての〜。苦戦と言う苦戦を強いられたのはあの2つだけなんだ」
「でもでも!確か四大勢力はもう一つ…」
「Masker。我々は触れられていない。妙な集団だ。目的も、特にこれといった行動もしていない。ただ仲間を集めているという情報だけが出回る。我々以外にもトランプ、εともこれと言った関係はない。まるで避けているみたいにな」
マスカーと言えば全てが未知らしい。ケルトさん達ですら何も分かっていない。
「どうして避けるんだろ…何を狙ってるんだろ…」
「おそらくだが、トップが慎重なやつなんだろ。ただ目的がでけーことに変わりはねー。それに俺らの事避けれるって事は俺らが思ってる以上に情報が取られてるって事だ。ぶつかった時には手遅れなんて事ならねーようにしねーとな」
バクが話してくれてある程度目が覚めてそのまま23時59分。僕は今にも落ちそうなまぶたと戦いながら待つ。
「10、9、8」
「7、6、5」
「4、3、2」
「1!」
「「「「ハッピーニューイヤー!!!」」」」
「いやーてっきり寝ちまうかと思ったがちゃんと起きれてるじゃねーか!このまま日の出まで…あれ?」
「スピー………スピー……」
僕は年を越せた安心感に駆られてぐっすりと寝てしまった。
「はっはっは!頑張っておったからの。新年初睡眠よの。おやすみ」
「とりあえずこいつベッドまで持ってきますね」
「ケルト、主、晩酌でもどうですか?」
「お、良いの〜」
「あ!俺が来るまで飲むなよー!」
「分かったから早くイリウスを寝かせに行け」
「ったく俺使いが荒いんだから……イリウス、おやすみ」
こうして年越しは終わった。