第108話 ーー忍者 前編ーー
「ふ〜腹一杯だな!」
「焼き魚に漬物、白米とか全部昔っぽくて良かったです!ケルトさん達はちょっと食べ過ぎでしたけど…」
宿に戻った僕らはすぐに晩御飯を食べた。世界観を大事にしているのもあってか少し質素だった。お腹いっぱいになった僕らは部屋で何か話すことに。
「んでよ、そん時のイリウスの顔みんなに見せてやりてーよ」
「もう!余計なこと言わないでくださいよ!」
「「「あはははは」」」
他愛のない会話をしていたら、外はもう暗くなっている。部屋には電気がほとんどなく、蝋燭で灯りを確保しなければならないらしい。
「そろそろ暗くなってきたな。もうちょいしたら出かけるからな」
「えー。僕もうこのまま寝たいぐらいですけど…」
布団の中に潜りながらそう言う。でもちょっとだけ気になることもあるし、仕方なく出かける。
外はもう真っ暗。提灯に明かりを灯して出発だ。今にも何か出てきそうで怖いが、他にも歩いてる人がいるので少し安心だ。
「全然真っ暗ですけど….何かあるんですか?」
「確かあっちの方にあるはずだぜ」
僕はケルトさんが行くままに進む。この道だとまだ行ってないエリアだ。近づくにつれて段々と音が聞こえてくる。賑やかで楽しそうな音だ。歩いていると一つの門が見えてきて、そこを潜ると、
「わー!明るくてすごいです!」
さっきまでの暗さとは裏腹に随分明るくなっている。人もたくさんいてまるで祭りだ。と言うか射的とか金魚掬いとかって祭りなんじゃ?
「当時には祭りなんてなかったけど、ここでは定期的に世界観を壊さねーくらいの祭りが開催されんだ。まぁ見た目的にもあってもおかしくないしな」
「時代を再現するだけでなくみんなを楽しめるよう多少の改変を入れる。よく出来てますね!」
僕らはそのまま祭りを楽しんだ。そういえばお祭りなんて人間界以来だ。そういえば何か…
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「優斗!」
「あれ?○○じゃん!どうかしたの?」
「お前の母と父が探してたぞ。早く行ってやらねーと」
「あれ?………じゃあ僕迷子!?」
「はぁ…とっとと行くぞ」
僕は手をひっぱられて連れてかれる。誰か分からないけど知ってる人だ。友達…なのかな。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「また記憶が…お祭りの記憶。あの時の人って誰なんだろ。記憶を思い出すたびにあの人を見る気がする」
「どうしたの?そんな深刻そうな顔して。あ!金魚掬いやりましょうよ!」
僕はナビに連れられて遊ぶ。チョコバナナとかリンゴ飴とかも買ってもらって食べた。一通り遊び終わると気になることに移行する。
「ねぇナビ。あのお城に行ける?」
「え?行けるけど。何を見てきて欲しいの?」
「ふっふーん。警備が甘そうな所と侵入出来そうな所」
「ちょっと!入っちゃダメって言われてるでしょ!」
「見るだけでだよ見るだけ〜。それに巻物が盗まれるかもしれないから入れてもらえないとか勿体無いじゃん」
「はー…止めても無駄ね。行ってくるから待ってなさい」
ナビにお願いしてお城への侵入を計画する。もちろんケルトさん達には言わない。そうこうして待っていると周りが慌ただしくなる。
「侵入者だー!侵入者が出たぞー!」
「侵入者?演出にしてはちょっと凝りすぎじゃ…」
「イリウス!」
ケルトさんが慌てた様子でこっちにくる。着いて早々安心したように抱き抱えられる。
「ったく心配してたんだぞ!侵入者とやらが来たらしくてな。他のやつに聞いたが、恐らく例の巻物を盗もうとしてるやつらしい」
「じゃあお城の警備態勢もマックスですかね…」
「ん?まぁそうだろうな。お前が無事なら良かった。忙しそうだし今日は帰るぞ」
抱っこしたまま宿に帰らされそうになったから僕は急いで言い訳を考える。流石にナビを置いてくわけにはいかないし。
「あー!落とし物しちゃいましたー!」
「は?」
「ハンカチ落としちゃったみたいです!取り行ってきます!」
「んなもん俺がすぐに…」
「行ってきまーす!」
テレポートで抜け出してこれた。でも流石に怪しまれてるだろうと思ったが気にしてる場合じゃない。さっきの場所に着くとナビが待っていた様子だ。
「イリウス!急に警備員達が集まりだしちゃったけど何かあったの?」
「侵入者さんが来たみたいで…入れそうな所ないよね…」
「あったわよ?普通だったら厳しいでしょうけど、神力で身体を浮かせれば入れそうよ」
「ど、どこ?」
「下の方に下水管みたいなのがあるの。四角い穴なんだけど歩けるくらいの広さはあるわ。多分中から水を流してると思うから入ることは出来るはずよ。ロックがしてあるけどあなたの歪みを使えば入れるでしょうね」
ナビの言った通り、下の方を覗くと鉄出てきた網みたいなのがある場所から水が出ている。僕は僕が歪みを使って姿を見えなくする。その後は浮きながらその場へと向かった。その場に着いたら鉄の網を歪めて中に入った。勿論入った後ちゃんと治した。
「うわー湿ってて嫌な感じ。掃除もされてないみたいだしどこに繋がってるんだ?」
特に変なものは流れてこない。匂いもしないし下水道ではなさそう。しばらく歩いてると水が来ている入り口を発見した。
「これってなんだ?奥に登れそうな所あるし行ってみようかな」
梯子があったからそこを登るとマンホールみたいに蓋がしてあった。ゆっくりと開けて周りに誰も居ないのを確認すると音を立てないように出る。
「水ってこの噴水からだったんだ。でも流れちゃうんだったらどうやって水を溢れさせてるんだ?」
「さぁね。見た目的にも流す装置が組み込まれてるとは思えないけど」
僕とナビは不思議な噴水に気を取られるがすぐに自分のやることに移る。
「とりあえず全部見て回ろっと。奥の方には何があるのかな?」
「イリウス!誰か来るわよ!」
入口の方から足音や喋り声が聞こえる。ドアがバン!と開くとそこにはたくさんの警備員と…ケルトさん達が居た。咄嗟に隠れたがどうしてケルトさん達が?
「ったく平気だって言ってんだろ?ご主人様とトラは俺の仲間だっつーの!侵入者と関わりなんてねーよ」
「それが分からないので両手を縛らせてもらってるんですよ!あなたには恩があるので縛っては居ませんが、本当はダメなんですからね」
「はいはい分かったよ。イリウスー!!」
どうやら僕を探しに来たようだ。でも見つかったらせっかくのお城を探索出来なくなっちゃう…
(どうしよ…でも今出ないと怒られるよね…)
心が右往左往してる中、足元に気付かずパキっと音がなる。
(やばい!)
「見つけた」
音速すら超える速度で捕まえるトラさん。そのままバク達の所に戻ったが違和感が。
「ん?それイリウスじゃないぞ?と言うか誰だ?」
そう、捕まったのは僕じゃなかった。
「忍者みたいな格好だな。真っ黒だし、刀とかあんじゃねーか」
「離せ!」
「そいつが侵入者だ!」
「それじゃあ早く捕まえ…主?」
「トラ!何をしておる!離さんか!」
「忍法身代わりの術」
忍者みたいな人は知らない間にバクと入れ替わっていた。僕もずっと見てたはずだけど気付かなかった。みんな大慌てで周りを散策してるけど見つからない様子だ。そりゃあそうだ。
「くそ…見つからなければ面倒を避けれたのに…」
(何で目の前に居るの!)
透明化してる僕に気付かず目の前に居るのだから。僕を見つけれなかったのにこの人を見つけられるはずがない。というかこの人が見つかったら僕も見つかる。どうにか出来ないかと迷い動こうとしたら…
床「パキッ!」
「ん?」
「あ…」
「静かにしていろ。そうすれば殺しはしない」
背後を取られ刀を首に向けられている。正直戦っても良いがそれだとバレてしまう。
「俺が気付かないなんて中々だな。名は何と?」
「い、イリウスです…」
「そうかイリウス。俺の巻物を取り返す手伝いをしろ。拒否は許さん」
「はい…」
僕は泥棒の手伝いをさせられることになった。
ちょっとでも先が気になる!おもしろい!と思いましたらブクマ、感想などしてもらうとモチベになりますm(__)m