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第106話 ーー味覚の秋 後編ーー

「すっごい綺麗な川だね!これなら良い感じの食料ありそう!」


 僕は川の周りを漁る。岩を浮かしたその下に何か隠れていないかなど探す。穏やかな川だから魚とか居ないかと見ているが見えない。何故か貝が落ちてたのでそれだけ回収して上流に行く。上流には魚が居ると思ったからだ。フワフワと浮きながら川を登って行くと、次第に魚が見えてくる。


「本当に居た!泳いでるしこの距離なら…」


 神力を使って4匹捕まえた。人数分あれば平気だろうと思ったからだ。何か音が聞こえると思ってもう少し上流に登って行ったらトラさんが居た。


「あ、トラさ…」


 僕が呼ぼうとした瞬間、バシャっと音を立てて川に手を突っ込む。気付いた時には魚を持っていて、後ろにポイっと投げる。何かあるのかと思い後ろを覗いてみると山のようになってる魚が…


「環境問題です…」


「イリウスか。お前も秋刀魚を取りに来たのか?」


「え?秋刀魚?どういうことですか?」


「この世界だとこれが秋刀魚だ。秋になると脂が乗ってて美味くなる。川に居るし捕まえやすくて便利だ。おまけに増えやすいからいくら取っても問題ない」


「そうなんですか。環境問題に発展しなそうで良かったです」


 魚はトラさんがいっぱい集めてくれそうだったから川を後にして森の奥に行く。見たこともないキノコが生えていたからそれらも取って行った。段々と紅葉からかけ離れた本当の森になってきた。


「ちょっと薄暗くて怖い…お化けでも出てきそうだよ」


「お化けなんて私が居るじゃない。もっと怖いのは人なんだから」


「それはそうだけど…あ、あれって食べれそうじゃない?」


 木に生えてる不思議な実を発見。見た目は桃だが色が変だ。


「これカビてない?」


「カビじゃないと思うんだけど…ケルトさんの血あるし齧ってみようかな」


「あんた平気なの?」


 ナビに心配されつつも僕は一口齧る。柔らかくて甘くて美味しい。桃とは少し違うけど似てる。皮は食べられなさそうだ。見た目が不思議なのは勿論のこと、もっと不思議なのは種がない所だ。どうやって成長するんだろうと思いながら先に進もうとする。


「ん?またこの木?同じ果物だし…」


 さっきの桃みたいなのと同じような実を付けた木がいくつもある。どんどん増えて行っていつの間にか周りの木が全てその木に…


「これおかしいよ。あの果物って種無かったはずじゃん。なのに何でこんなたくさん生えてんの?」


「さぁ。私に聞かれても分かんないわよ。種が無い状態で増える物って何?」


「え…花?は種子があるか。動物?もまぁ種あるし…あ!キノコとかカビとかかな!胞子は種とはちょっと違うし、それならたくさん生えてる説明がつくよ!」


「じゃあこれ全部キノコかカビってこと?そんなことある?」


 確かにおかしい。キノコもカビも、湿度や温度の条件が必要。暗くて湿ってるのはそうだが全部この木々のせい。本当は日当たりが良いはずだ。色々考えてるとドスドスと大きな足音が聞こえてくる。


「うおっと。地面がすごい揺れてるけど。あっちから聞こえるし、ナビちょっと見てきて」


「りょーかーい」


 ヒラヒラと暗い森を飛んでいったナビ。しばらく時間を置かない内に急いで帰ってくる。


「逃げてイリウス!全部こいつの罠よ!」


 突然地面が崩れる。身体が落ちて行く感覚に気を取られて神力で浮くのに時間がかかった。ふと下を見ると、巨大な亀のような生物が口を開けて僕を食べようとしている。飛ぶだけじゃ間に合わないと思った僕はテレポートを使ってなんとか食べられるのを阻止する。


「あっぶな!何これどういうこと!?」


「ここはあいつらの群生地ってことよ!何本も生えてたあの木、あいつらの背中から生えてる物だったの!」


 ひとまず空まで浮けばあの生物も追ってこれないみたいだ。急なことで驚いたがゆっくり休む。


「はぁ。なるほどね。あっちの方に小さいあの生物が居たんだ。多分子供だろうね。同じような木を背中に生やしてて急いで僕の方に戻ってきたのね」


「そう。あの木の実も罠だったってことね。野生動物が取ろうと苦戦してる所に地面を崩して食べる。よく出来てるわ」


 ローディアでは見たことない生き物に困惑と怒りを覚える。こんな危険なら先に言っててくれれば良いのに。


「とりあえず何個か実は取れたし、デザートくらいにはなりそうだね。キノコと魚と木の実。もうちょっと集めたいね」


「そうね〜。あ、あっちの方まだ行ってないわよ!キノコも少ないしもうちょっと取っていきましょう」


 僕らはそうやって2人で少し遠めの山へ行った。


           1時間後


「全員いるな!食料はちゃんと持ってきたか?」


「勿論です!美味しそうなもの持ってきたので優勝は僕が貰います!」


 遠めの山ではたくさんの食料を集めたから自信満々だ。


「あ、一応ルール確認だ。集めた食料は種類で得点取るからな。数が多けりゃ良いわけじゃねー」


「分かっているとも。トラから発表してくれ」


「はい」


 トラさんは自身のハコニワから色々取り出す。この世界の秋刀魚やら果物やら色々。


「俺は基本水の食べ物です。この果物はたまたま生えてるのを見つけて、食べると少し酸っぱいんです。こっちの木の実は胡椒みたいに辛くて絶品ですよ」


「そうよの〜。中々品揃えが良いな。この花や葉も山菜になるのか?」


「その葉からはお茶の香りがして、もしかしたらお茶になるかと。花の方は甘い蜜が少しだけ取れるので調味料程度に」


 流石という感じだ。健康面も味に関しても誰より追求してるだけある。次はケルトさんだ。


「俺は…これだ!」


 ドンっとハコニワから出したのは毛むくじゃらの何か。おそらく生物の死体だろう。


「肉だ肉!キノコも取ってきたぞ!しいたけみたいなやつだ。この肉は味見てねーから分かんねーけど1番美味そうなやつ殺してきたぞ!」


「随分ワイルドなんですね…ていうかどこにそんな生物居たんですか」


「あっちだ。人の気配がすると逃げちまうみたいだから気配消してまで狩ったんだぞ」


 この人毎回肉持ってきてる…。それはともかく次にバクだ。


「我はこんな物だ。向こうに鳥が居てな、何匹か拝借させてもらった。あとはキノコ類だ。少ないがな」


「へーキノコねー」


「ちゃんと毒はないやつだぞ?」


「へー」


「毒キノコ食わせたのは悪かったって言っておるだろう!」


 僕はまだ根に持ってる。最後に僕の番だ。この豪華な品揃えでみんなを驚かせてやると気持ちが昂る。


「僕はこれです!」


 地面いっぱいにキノコや木の実を並べる。その種類は圧倒的で正に勝利といった感じだ。


「どうですか!全部美味しそうなんです!」


「えっと…イリウス、その、なんて言えば良いか…」


「ん?なんか変なのあった?」


「変なのというか…キノコのほとんどが毒キノコなんだが…」


 完全に表情が固まった。


「うーん。毒キノコの見分け方ぐらいは言ったほうが良かったかもな。目立つ色してたり、異様に多くあるやつは大抵毒キノコだぞ。虫食いとかいると安心だが居ないやつは毒だ」


「そんな…僕の努力が…」


「でも毒じゃないやつもある。これとか美味いやつじゃないか。こっちの実は何だ?カビた桃か?」


「それはよく分かんない生物に生えてた桃です。甘くて美味しいです」


 毒キノコによるショックで萎えてたが、僕には秘策がある。


「うーん。これじゃあそんな得点には…」


「ふっふっふ。これをご覧ください!」


 箱に入れておいた大量のキノコをケルトさん達に見せる。見る見るうちに目を輝かせていく。


「これ!松茸じゃねーか!」


 そう、キノコの王様と呼ばれるほどの松茸。何故か分からないけど遠めの山に大量に生えていた。環境を崩さないレベルの量に収めたがそれでも箱いっぱいになった。


「こりゃあ優勝はイリウスだな。ここまでの食材集め、よく頑張ったな」


「はい!」


 そんなことがあり、ケルトさんとトラさんは全ての材料を使って料理を開始した。僕とバクが適当に遊んでるうちに料理は完成する。


「「「「いただきます!」」」」


「ん!この魚すっごい美味しいです!レモンみたいな酸味もあって食べやすいです!」


「この肉…猪に似てるな。臭みが少なくて美味い」


「お!やっぱり松茸は良い物よの〜。焼いてるだけなのにこんなに美味い物なのか」


「トラが作ったにしてはよく出来てんじゃねーかこの…鴨肉のソテー?よく分かんねーけどうめー」


 それぞれの食材を使った豪華な料理。それが取れた山で食べるご飯は格別美味しい。デザートに食べた桃みたいなやつはみんなもハマってて場所を教えてあげた。多分みんななら平気でしょ。僕の○○の秋の項目が一つ埋まった。



ーーーーーーーーーー次回予告ーーーーーーーーー

「すごい古そうな建物です!」


 僕ら一同は次の宿へと向かう。道中は変わることなく山だらけだが宿のある村の様子はまるで違った。例えるとすれば安土桃山時代みたいな感じだ。あくまでアトラクション的な感じらしいが何が起こる?

 世界によって時間の流れ方も違うから本当だと思っちまうよな〜。ちなみにご主人様のおかげで俺らの居る世界とローディアの時間の流れは同じだぜ。


             次回「ーーお城ーー」

ちょっとでも先が気になる!おもしろい!と思いましたらブクマ、感想などしてもらうとモチベになりますm(__)m

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