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第104話 ーー殺人事件 後編ーー

「一体何の騒ぎだ…」

「急に呼び出すなんて…」

「誰か事情聞いてないのか!」


 みんながワーワーと騒いでいる。それもそのはず、この旅館で事件が起きたからである。旅館の宿泊者達に緊急招集という形で集まってもらった。


「お静かにお願いします!さっきこの旅館の第2温泉にて死体が発見されました!」


 みんなが黙りしーんとした空気が流れる。だがそのすぐ後、「そんかことか」「それで招集?」等の言葉が飛び交う。ローディアでの殺人はそこまでおかしなことじゃない…が、問題は旅館で起きたということだ。この場所すら危うく思えてしまう。そうなると旅館の評判に関わる


「この場で犯人を突き止めて、警察に叩き出してやるのです!」


「どうでも良いけどよ〜。こんな山奥だし殺しちまった方が早くね?」


「やってること犯人と同じじゃないですか!ダメです!」


 ケルトさんも呑気そうだ。これだからこの世界に染まりきった人達は…。


「とにかく!第2温泉を使った人はリストでまとめてあります。使ってない人は帰って大丈夫です」


 そう言うとそそくさと文句を言いながら帰ってく。中には利用したのに帰ろうとしてる人も居るので要注意として閉じ込めておく。


「よし、これで全員ですね。今からみなさんは容疑者です」


「ちょっと。この事件って男湯で起きたんでしょ?何で女の私達まで帰してもらえないのよ」


「単純な話です。この場にいるほとんどは能力者です。能力があれば男湯に行って帰ることだって出来ますし、殺すことは可能です」


「どうやってリストでまとめたの?」


「監視カメラです。女将さんが見せてくれました。入って行った人の顔を覚えているのでそれで集めました」


 殺された人はほぼ始めから入って出て行った様子がない。後半は入る人がほぼ居なくて死体が放置されていたようだ。


「問題は誰が殺したかです…能力者なら死体の一つや二つ、無視して温泉を楽しむぐらい出来るはずです…」


「いや死体とお風呂入るの嫌なんですけど…」


 僕は真剣に悩むが全く分からない。明らかな証拠が無い。それが能力の面倒くさい所だ。


「チッ、私は帰るよ。こんなの馬鹿馬鹿しい」


 出口から出ようとする女の人。そこにビームで出口を塞いで檻にする。


「あんた、ふざけんじゃないわよ。こっちは血を洗い流しにここに来てんだ」


「血を洗い流す!?被害者を殺した時に付いた返り血を洗い流すって意味ですか!?」


「違うわ!!毎日血を流して戦ってるからたまには休みに来てんだって言いたいんだよ!わざわざこんなとこで殺し合いなんかしたくないってんだ」


「まぁその意見は分かるの。実際この場に殺気立ってるものは居ない(イリウスに対してを除いて)」


「うーむ…でも明らかに他殺です…」


 犯人が自ら自首してくれれば良いのに…そう思いながら全員を観察する。


(おそらく神器での殺人…何の武器かは分かんないけど刺されてたみたいだし。山すぎて警察呼べてないから殺された時間も分からない。あれ?そういえば死体どうなったんだろ…)


「女将さん、死体ってどうしたんですか?」


「あの死体なら担架に乗せて移動させました…警察が到着するまで別の場所で置いておこうかと…」


 能力者である以上動機なんてものいらない。でも何で休みに来てるのに殺すのかが疑問点だ。


「あのー…入ってから上がるまでその人生きてましたよ」


「そうだ。そいつ結構長風呂野郎でな。俺が入ってる間もずっと入ってたんだ。殺されるようなこともしてねーよ」


(こう見ると怪しいのは1番最後に温泉を出てきてるあの人…2人きりになった所をグサっと…いや、共同犯の可能性もある。それか女湯の最後の人が男湯に1人しかいない被害者をグサっと…うわーん!可能性がありすぎて訳分かんないよー!)


 能力が絡んでくると現行犯以外での捕まえる方法がほとんど無くなる。絞ろうと思ってもみんなが怪しく見えてくる。


「良い加減にしてくんないか。外部からの攻撃の可能性もあるんだ。私達じゃないこともありえる。その時点でこの議論は無駄なんだ」


「で、でも!」


「もうあんたを殺した方が早いかもね」

「そうだ!こっちは休みに来てんのに何で巻き込まれなきゃいけねーんだ!」

「「「そうだそうだ!」」」


 反乱が起きた…目立った証拠は無いしやってないと言われれば何も言い返せない。全員が僕を殺そうと動いた時、みんな足を止める。


「まぁ落ち着けって。実際こいつはこの旅館のことを思ってこう言ってる訳だ。てめーらだって旅館が潰れて欲しくねーだろ?もう少し付き合えよ」


 ケルトさんがいつもの殺気を放ちみんなを落ち着かせる。でも何か不自然にニヤけている。まるで犯人が分かっているような…。


「分かりました!」


「「「!?」」」


 僕は目を輝かせた。遂に納得の行くような答えが出たんだ。


「第2温泉は2階。外部の人が来るには少し高いです。それだったら第5温泉の方に行った方が良いでしょう。つまり外部者はなしです!

そして女湯の方の人です。露天風呂の方から浮いて入ることが出来るし殺した可能性はゼロじゃなかった…しかし!さっきの血を洗い流すと言う言葉で分かりました。被害者の人は出ている血の量が少なかった。つまり被害者は一度血を洗い流されているんです。女湯の人が男湯に来てあの位置にいる人の血をしっかり洗い流すとなると時間がかかる。その間に女湯に入ってきた人に男湯から浮いて戻って来たことがバレてしまう。つまりそんな暇はなかったはず。

 次に男湯の人です。みんなバラバラに入って行ったことから仲間がいると言う可能性は低いでしょう。そしてやはり死体があれば気になるものです。つまり1番怪しい人はそこの最後に出てきた人です。2人きりになった所を誰にもバレずにグサっと刺した…可能性もあります。でも、僕は気付いたんです。あなたはそんなに強くないと。神力量や体格からしてあの人に勝つ事は不可能な域です。それにやられたならやり返すのが普通。あなたがやったのならあなたも怪我をしていないとおかしいです。

 そして残るは…」


 僕の完璧な推理にみんな少し感心した様子だ。中には強くないとディスられて悲しがってる人もいたが、


「女将さん、あなたです」


「わ、私!?」


 犯人はきっと彼女で間違いない。確かに動機はないけれど、もうそれ以外思い浮かばない。


「さっき言いました。被害者もやられるだけでは終わらず必ずやり返したんじゃないかと。でも、それはあくまで反応出来ればの話です。完璧に油断した状況での反撃は難しい。女将さんは掃除という口実で男湯に入った。その際に理由は分かりませんが何かあって殺してしまったんです。女将さんは能力者じゃないですし使った凶器は隠しておいたんでしょう。死体を別の所に運んだのも、警察に見つかる前に撤去する予定なのでは?」


「そんな…!私はそんなことやってません!」


 僕の完璧な推理の前でまだ逃げようとするのかと思い僕は素直に自首を勧める。


「女将さん…何があったかは僕には分からないです…でも、やってしまったなら素直に罪は償うのが…」


「えーっと、ちょっと良い?このビーム邪魔なんすけど」


 ん?と思い出入り口の方を見るとタオルを巻いている殺された男性が…!?!?


「え?え?な、何ですかあれ?幽霊ですか?」


「え?いや、幽霊じゃない…わよ?」


 幽霊かと思い動揺するがナビが見ても幽霊じゃないらしい。


「女将さん!何で俺があんなとこに居たのか分かんないっすけど服どこっすか?」


「え…えっと、第2温泉にまだ置きっぱなしでございます…」


「あ、了解っす。所で今何してたんすか?監禁されてたっぽいっすけど」


「し、死んでたんじゃ?」


 女将さんも驚いてる。


「あー気絶してたんすよ」


「「「「気絶!?」」」」


「事の発端を説明しますと、まず俺結構長風呂しちゃってのぼせてたんすよね。その状態で外行こうと思ったんすけど途中で足滑らしちゃって。神器を杖みたいにしてたんすけどそん時腹に刺さっちゃいましてね。まぁそれは良いんすけど、その後頭打ちつけちゃったみたいで気絶してたんすよ。ちなみに回復系の能力者なんで腹の傷は問題無いっす!じゃ!」


「つまり全部自業自得…」


 まさかの展開に顔が青ざめる。みんなの時間を奪った挙句女将さんを犯人と決めつけた最低人間になってしまった。


「すいませんでした!!!」


 僕はその場で全員に土下座する。こんな事しても許されないなんて分かってるがするしかない。


「まぁしょうがないっしょ…」

「生きてるなんて思いませんしね…」

「丁度刺激が足りなかったとこだったし?」


 何とかカバーしてくれてるが罪悪感で否めない。


「お前、女将さんに1番謝るべきだろ。勝手に犯人にしてんだから」


「本当すいませんでした!!!」


「あの、解決したので大丈夫ですから顔を上げてください…」


 子供の土下座なんて見てられないという感じなのかすごく遠慮している。でも1人だけ違う人がいた。


「ほらほら、この前も言ったの聞いてただろ?土下座は、頭を地面にめり込ませる勢いで、やれって!!」


 ケルトさんが僕の頭にかかと落としを入れる。頭が地面にめり込みすごく痛い。頭蓋骨が軽く骨折したがケルトさんの血で治っていくのを感じる。


「ここまでしてやっと許されるくらいだよな?」


「さ、流石にやりすぎじゃあ…」


「これが俺の教育方針だ。悪い事したなら痛い思いさせてでも謝らせる。その方がこいつも罪悪感抱えなくて良いんだよ」


「うぅ…ごべんなざい…」


 と言うことで殺人事件は幕を閉じた。その後、丁度夕陽が見える時間帯だっので温泉巡りを続けていた。


「うぅ…まさか生きてるなんて思わないですよ…」


「はっはっは!間違いなんて誰にでもある。次に活かせばいんだよ!」


「そういえばケルトさん、妙にニヤニヤしてました。何だったんですか?」


「あー。別に何でもねーぞ?」


「こいつ、生きてるの知ってたぞ。心音が聞こえてたからな」


「え!?」


「おいお前余計なこと言うなって…」


「ケルトさん!!!何で先に言ってくれないんですか!」


 トラさんの助言もあり、ケルトさんには特別叱らなきゃいけないと分かった。


「やれやれね」


ーーーーーーーーーー次回予告ーーーーーーーーー

「わー!いっぱい生えてます!」


 山の中、イリウス達は食材を集めにやってきた。別世界に移動したイリウス達は人が居ない秋の山にキノコなどと言った食材で料理することになる。山という危険な場所で安全に集められるのか?

 まつたけ…栗…秋刀魚…色んな料理が作れそうだ。どうなるか楽しみだな。


           次回「ーー味覚の秋ーー」

ちょっとでも先が気になる!おもしろい!と思いましたらブクマ、感想などしてもらうとモチベになりますm(__)m

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