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第103話 ーー殺人事件 前編ーー

「わぁー!すっごい良い景色です!お部屋が最上階なんてお洒落ですね!」


 前回、僕らは旅館に到着した所で終わった。色々手続きを済ませて部屋まで行くと絶景が待っていた。


「なかなか良い景色じゃねーか。ここら辺は紅葉も進んでるし、微妙に聞こえる滝の音で落ち着くぜ」


「ここの醍醐味は何と言っても温泉だ!露天風呂からの景色もまた素晴らしいものぞ!」


「え?温泉行くの?私いけないじゃない」


「別に来ても良いんじゃない?幽霊だから見えないでしょ」


「むさ苦しい男達の裸なんて見たくないわよ。あと妖精ね」


 そういえばそうだ。ナビは女の人なんだ。今まで女の人との交流が無かったせいか感覚が鈍っていた。そう考えると温泉で裸になるのも抵抗が…。


「ほーら!早く行こうぜ!」


 ケルトさんに手を引っ張られて温泉に向かう。どうやら何種類かあるらしく今回は遠くから見る絶景スポットに行くらしい。


「降りんのに階段しかねーなんてちょっと不便だな」


「見た所全部木造建築みたいですし、エレベーターなんてあったら世界観が崩れちゃいますよ」


「それにしてもだ。12階はある建物だぞ?年寄りとかどうやって登んだよ」


「まずある程度運動出来なきゃここまで辿り着かないだろう。ちゃんと山だしの」


 そういえば僕らの他に客は居るのかな?窓から見た時も道らしい道は無かったし来るのがすごい大変そうだけど。そう思いながら階段を降りる。広い旅館だったし廊下が長い。しばらくするとナビが部屋から出てきたみたいだ。


「どうしたの?」


「あんたを1人にしとくのも危ないと思って。それに女湯の方行って入る気分だけでも味わおうかと」


 ケルトさん達の強さは知ってるし純粋にお風呂に入りたいのが見え見えだ。せっかく来たのに楽しめないのは損だしそこは任せることに。特に何も問題なく温泉に着いた。丁度入ろうとした時、


「おっと、わりぃわりぃ」


「いえいえ、お先にどうぞ」


 丁度人が出てきた所だ。こんな所でも来る人が居ることに驚きつつも安心する。ナビと別れて中に入る。


「人、居るんですね」


「こんなとこでもまぁ居るだろうな。有名所だし」


「能力者に会わなきゃ良いんですが…」


「んなこと気にすんな。俺らが付いてんだから何も問題ねーよ」


 お風呂には人がたくさん入っていて驚いた。中にはお爺さんとかも居てどうやって来たのか気になるくらいだ。そして何よりも驚いたのは…


(能力者居すぎでしょ!)


 僕には神力が見えるから能力者かそうじゃないかは判別がつく。必死に右手のひらを隠しながら身体を洗って露天風呂に浸かる。滝が見えるし紅葉は綺麗だしで景色は絶品だ。


「ひぅ〜。あったかいです〜」


「お前、右手隠しすぎて逆に分かりやすいぞ?」


「!!あんまり言わないでくださいそう言うこと!襲われたらどうするんですか!」


「ここの誰も襲いなんてしないさ」


 驚きのあまりバシャと水飛沫を立ててしまった。気付かないうちに後ろにおじいさんが居たからだ。声がするまで全く気づかなかった。


「すまんすまん。驚かせてしまったようじゃの」


「い、いえ…さっきの、どう言う意味ですか?」


「襲わないって話じゃろ?単純なことさ。みんなここに何しに来てると思う?」


「何しに?……温泉に入りに来てるんじゃないですか?」


 僕の回答にわははと笑いだす。ケルトさんも何かと警戒してる様子だ。


「あながち間違ってないのう。正解は、休みに来てるんじゃ。普段から神から授かった力を使って、守り、戦う使命を持った者が心と身体を癒しに来てるんじゃよ。休むつもりで来た者が戦いたいと思うか?思わんだろう」


「確かにそうですね…でもそう言う時こそ狙い目だと思って来るやつも…」


「それなら戦うしかないのう。ただし、ここに居るやつらは少なくとも戦って生き残ってきた者達。簡単に勝てるとは思えんがのう」


 言われてみればそうだ。僕が見える能力者はみんな身体に傷が付いてたり、神力量が明らかに多かったりしている。このおじいさんも同じで。


「イリウスー!こっち殺伐とし過ぎて居られないわよ!あんたらの言う能力者なのか分からないけどすっごい殺気だってて嫌になっちゃったわ!あそこに居るくらいならこっちに居た方がマシよ!」


「女湯の方はそうなってるんだ。女の人の戦士って凄い強い意志とか持ってそうだしそうなるかもね」


「何の独り言だ?誰か居んのか?」


「!!!」


 僕は慌てて口を塞ぐ。すっかり気が緩んでいた。ナビの存在はケルトさんには秘密にしていたのにこれじゃ怪しまれてしまう。


「わはは。女戦士は味方を信用しないからのう。戦いはしないだろうが警戒度はマックスなはずじゃ」


「そ、そうですよね〜はは」


 このおじいさん話に乗っかってくれた?と言うかナビの方見てる?もしかして…


「そうね、見えてるわよ。それに聞こえてもいるみたい」


 ナビが見えて聞こえてもいる。霊媒系の人なのか?不自然な状況が流れるがトラさんが終止符を打つ。


「ケルト、サウナに行くぞ」


「お、良いな。イリウスはガキだからダメだぞ。ここで大人しく待ってろよ」


「え?は、はい」


 僕は目でありがとうございますとトラさんに伝える。トラさんも去り際に親指を立ててくれてたので作戦通りなのだろう。そうして僕はおじいさんとナビの3人で話せる状況になった。


「見えるんですよね?この光の玉が」


「あぁ。わしは霊媒系の家系でな」


「ナビって言うんです。少し聞きたいことがありまして…」


「悪いことは言わんから、どっちも関わるのは辞めた方が良い」


 突然の言葉に動揺した。ナビも「どういうこと!」と怒っているがおじいさんはゆっくりと説明する。


「おそらく、そこのお嬢ちゃんはお互いの利害が一致してると思ってるんじゃろうな。だがそれは違う。お互いに目指すものが異なっておる。いいや、異なるべきなんじゃ。このままだとどっちも辛い思いをする」


「どういう意味ですか?全く分からないです」


「お嬢ちゃんは。隠してるのかい?」


「な、何のことよ…」


「あんた、悪霊のなり損ないみたいなもんじゃないか。本当は恨んで恨んで仕方ない気持ちを、救いたいって気持ちが上回っただけ。根本的には悪霊と変わらん。ただ少し気になったのは、恨みの気持ちが2人分ほどあるということ」


「あなたには分からないわ…私の…私達のことなんて!」


「君たちが何をしようとしてるかは詳しくは分からない。でも、お嬢ちゃんは救う為、君は恨みを晴らす為…この先、辛い思いをするよ」


 おじいさんの言ってることは理解出来ない。僕の察しが悪いのか、ナビのことを知らなすぎてるのか。でもこれだけは言える。


「おじいさん、僕は自分が辛い思いをしてもやりたいことがあるんです。それに、僕だって恨みを晴らしたいからじゃない。たっくさんの人を救いたいんです。もちろん、その中にナビだっています。ナビが悪霊であれなんであれ、一緒にやるって決めたんです」


「…そうか。ならそれで良い。それほどの決意があるなら飲み込まれることもなかろう。能力者が忘れてはいけんことがある、『決して呪いに飲み込まれるな』じゃ」


 ケルトさんが言ってたことと同じだ。呪いは自分の身を滅ぼす。言い聞かされて来た。


「イリウスー!大丈夫だったか?怪我ねーよな?」


「え、もう帰ってきたんですか?」


「こやつ、心配で仕方がないとうるさくての。まぁまた来れば良いし」


「全くもう…心配性すぎです!」


 ナビの正体が気になる所だったが、まだ聞く必要はない。そんなことより早く次の温泉スポットに行きたくてすぐに着替えて向かう。夜になったら景色が見えなくなっちゃうし。そんなこんなで次の温泉に向かってる途中、急に女将さんの叫び声が聞こえた。僕は急いで向かう。


「どうかしたんですか?」


「あ、あ、あれ…」


 女将さんは掃除をしにきたのか周りに道具が散らかっている。指を差す方は温泉の中、1人の男性が血を流して倒れている。


「これって…じ、事件です!」

ちょっとでも先が気になる!おもしろい!と思いましたらブクマ、感想などしてもらうとモチベになりますm(__)m

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