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第100話 ーー月見ーー

「ほんっとむかついちゃうわ!あの『トラ』ってやつ私の事じっと見つめちゃって!」


 相変わらず元気そうに飛び回ってるナビ。トラさんはナビのことが見える分気が散るんだろう。


「しょうがないよ。あれでもみんなに言わないでおいてくれてるんだから」


「だからっていかにも殺してきそうな目で見つめることないでしょ!」


「ご飯の時に毎回来なきゃ良いんじゃ…」


 トラさんなりの警告だろう。「イリウスに手を出したら祓う」っていう。それにしてもトラさんが何もしないのは珍しい。いつもはすぐバクに相談するのに。


「あ、そういえばニュースでやってたんだけど今日お月見らしいわね。月が大きく見えるらしいわよ」


「え、そうなの?ケルトさんから何も言われてないや」


「忘れてるのかもね。歳を重ねるとイベント事なんてどうでもよくなるもの」


 ケルトさんと僕では過ごしてきた何月が40倍近く違う。僕みたいに寿命が短い人間とは意識が違う。そんなことに少し寂しさを感じたが、


「イリウス〜。団子作るんだが手伝ってくれるか?」


「団子…?」


「ほら、今日月見だろ?それ用に食う団子だ。手伝ってくれるか?」


「…はい!」


 それでも楽しく過ごせるのはこの人のおかげだ。嬉しい気持ちになりながら僕は小麦粉の塊を丸くする。


「ここからどうなるんですか?丸くしたのいっぱいありますけど」


「こっから茹でんだよ。そうすりゃモチモチの団子の出来上がりだ。喉に詰まらせんじゃねーぞ?」


「そこまで子供じゃありません!」


 みんなで笑い合っている中、ナビだけは様子が違った。


「本当の家族じゃないのに…本当みたいね」


「ん?」


 僕は小さな声で反応する。ケルトさんに少し怪しまれてしまったから一旦廊下に避難する。


「いや、悪い意味じゃないのよ。私は、違ったから…」


「違う?ナビはどんな人だったの?」


 ナビは何かを渋っているみたいにその場に留まる。やっぱり妖精なんて嘘で幽霊なんだろう。


「少しだけ姿を見せてあげる」


 ナビは大きく光ったと思ったその時、人の姿へと変貌する。服装は制服?どこかの高校らへんの制服に見える。ポニーテールで少し大人びた顔をしている。


「これが私。本当の私。あの姿で居るのには理由がある」


「理由って?」


「それはまだ言えない。でもいつかあなたも会う事になる。その時は私が着いてるから平気だと思うわ」


「あんまり状況が掴めてないんだけど。何よりもどうして片目を閉じてるの?」


「…まだ見せられないの。いつか見せる時が来るわ」


 ナビはすぐに光の玉に戻る。隠し事が多そうで気になるが話したくないこともあるんだろうと何も言わないでおいた。でも多分殺人鬼の被害者だ。


「秘密はいずれ、大きなリスクになるよ」


「分かってる。でも今話す方が私にとっての大きなリスクよ」


「…分かった。信じるよ」


 ナビも僕もお互いを信じないと相棒にはなれない。殺人鬼を捕まえるためにも、協力しなきゃいけない。


「ぐつぐつ言ってます」


「沸騰したか。んじゃ、入れてくぞー」


 ケルトさんはそう言って丸めた団子を茹で水に浸していく。ある程度茹で上がったと思ったタイミングで引き上げて氷水に潜らせる。


「これがお団子?ぬちゃぬちゃしてて思ったのと違うです…」


「まぁ見てろって」


 軽く置いておくとぬめりが取れてもちもちになる。その状態で焼いたら完成みたいだ。


「おし出来たな。まずは味見を…ほら、」


「わーい!………美味しいです!」


 モグモグと団子を食べると甘くて美味しい。モチモチしててパリパリしててお餅みたいだ。


「へへ、そんなら良かった。あとは月見用に取っといて、晩飯の支度しなきゃな」


「僕も何かしますか?」


「大丈夫だ。部屋で勉強でもしててくれ」


 お団子の味見も終わったことで僕は部屋に戻る。最近ナビに夢中で勉強してなかったことに気づき少しだけ資料に手を伸ばす。


「何の資料読んでるの?…歴史的犯罪者?」


「そう。もしかしたら目取りの殺人鬼についても載ってるかもしれないし。手口から似てる人を探せるかもしれない」


「はえ〜頭良いのね。でもそんなんには載ってないわよ」


「何で分かるの?」


「もし載ってたとしたら私が見つけてる。それに、資料とかの類は『ニヒル』に消されてるわ」


「永遠の0だっけ。よく分かんないけどそんなこと出来るんだ」


「えぇ。あいつのいた痕跡を消す最大の障壁よ。あいつをやらないと辿り着くのは困難。不可能の域よ」


 殺人鬼の協力者。どうしてそこまでして誰かを殺したいんだろう。


「考えてもどうしようもないか〜」


 僕は資料を閉じて横になる。本当に捕まえることなんて出来るのかな。

 そんなことを考えているともう夜だ。晩御飯も食べ終わってみんなで屋根に登る。


「こんなとこ登って良いんですか?」


「登ったことあるやつがそれを言うかの…」


「この家頑丈だし平気だろ。丁度上の方平べったいしな」


 みんなで横並びに座って月を眺める。大きくて黄色い満月だ。月に兎が居るとか、宇宙人が基地を作ってるとか、気になる事がたくさんある月がこんなそばまで来てると考えると胸がワクワクする。


「そういえば今日は記念よの」


「記念って?何の記念?」


「知らんのか?100話到達記念だ!ここまで見てくれた読者様方には誠に感謝しておるぞ!」


「ひゃくわ?よく分かんないけどありがとうございます!」


「ここからが本番だから絶対見てくれよな!」


「俺の活躍も増やしてくれ…」


「私登場から3話目なんだけど?」


 と言うことで大きな月の下で感謝と要望を伝えた僕らは今日も平和に暮らせた。まだまだ面白い要素をたくさん用意しているのでぜひ楽しんでください。


ーーーーーーーーーー次回予告ーーーーーーーーー

「秋はやることがいっぱいです!」


 訪れた秋、秋といえば何を思い浮かべる?芸術、読書、食欲、色々ある。イリウスは全ての秋をコンプリートさせれるのか?

 絶対に無理だと思うぞ。主なんて暗殺の秋とか言っているからな。


           次回「ーー○○の秋ーー」

ちょっとでも先が気になる!おもしろい!と思いましたらブクマ、感想などしてもらうとモチベになりますm(__)m

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