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機械仕掛けのリフレイン  作者: リリー
リフレイン
9/14

オラクル

「美味しい・・・。本当に。」


「ふふ。」


 俺は涙を隠しながら、最高のカレーを食べた。食べ終わると沸かしたお湯でコーヒーを作ってくれて、テーブルにマグカップを二つ置くとリフレインは話始めた。


「例えば。どこからともなく提供される料理。それは君の時代にあって良いものだろうか。否。あってはならないもの。便利な道具。それは通常の価値観、社会通念に違反するもの。高度な技術だから。それは私も例外ではない。まあ飲んで。コーヒーには心が落ち着く作用があるから。」


 促されてコーヒーを飲む。


「私はロボット。私が起動した【日常製造機】によって。許されざる世界に存在を認められている。目的はなんだと思う?」


「便利な人型ロボットが俺を助けに・・。きたようではなさそうだな。」


「地球への移住のため。君達にとっては侵略。そのための人間についてのデータ収集。」


 冷たい目で、まるで無機質なロボットのような目をしてリフレインは言った。


 そんなこと言わせたくなかった。違和感はずっとあった。集会を秘匿する彼女。内容は『ロボットにおける人間との接し方』。ロボット達がそんなものを学んでいるというなら、沢山のロボットが俺らの周りにはいるはずだ。しかし。俺はリフレインしか知らない。


「・・・にしては、随分と友好的だな。」


「たぶん10分の1。今、地球の人口はそんなもの。人間は知らない。存在ごと消される。ロボットと人間の共存にはどれくらいの比率が良いのかという答えが算出された。減らした分はロボットが代わりに補完する。んぐ。」


 リフレインは俺の発言を無視し、コーヒーを一口飲んでから砂糖を足した。今日は甘めがいいみたいだ。そしてもう一口飲んでから、話を続けた。


「地球への移住計画の実行。私は命令を下された。私以外のロボットも。地球の人口を100分の1にせよという命令。ここで大誤算があった。ロボットが誰かを殺害すると、その誰かの存在がロボットに置き換わる。Aさんを殺害したロボットBくんはAさんとして生きていく。それで途中で何人殺したかが分からなくなった。馬鹿な話。そうしたら、急遽、緊急会議に。一旦、中止になって人類についてもっとデータを取れという命令になった。方法は個々に任せると。」


「馬鹿すぎるだろう。だってロボットは人を殺して置き換わるのなら、そのロボットの集計をすれば。」


「できないの。人への擬態が完璧過ぎて。人を殺したロボットは最初からその殺害した人間として生きているつもりなのだから。命令の受信方法すら忘れて。中止命令を受信できたのはまだ殺害を行なっていないロボットだけ。」


 つまり、リフレインは人を殺していない。それが何よりも嬉しかった。


「なんだその顔は。・・・変わらないよ。タイミングが良かっただけだよ。」


「何故そんな周りくどいことを?置き換わる?地球に存在する全員がロボットでいいじゃないか。」


「それはね。地球にずっと住んでいる君たちの方が地球に詳しいということと、君たちの形成する社会は優れているということがあるから。感情が豊かで生産性以外のところにも喜びがあるじゃないか。だから、ロボットは人間が羨ましいんだよ。蔑みながらも、認めているんだよ。君たちの叡智を。技術を。」


「でも、お前は、リフレインは。」


「うん。君たちにこれ以上危害を加えたくない。加えさせたくない。だって。」


「だって?」


「大好きだから。ねえ、アルク君。」


「どうした?」


「私がさっき破壊したのは戦闘に特化したロボット。同じ一律の命令がロボットに下されているわけではないから、きっとあのロボットには秘密裏に私の知らない命令が下されている。予想だと、君を襲ったのは、人間とロボットを見分けるためのサンプル採取ってとこかな。そして、あんなことをすれば、いつか、そう遠くない未来に。見つかる。」

「・・・誰に?」

「【オラクル】に。リフレインは裏切り者だってね。」


「なら、そのオラクルとやらに言ってやる。俺にとっては恩人で友人だって。」


「ごめんね。・・・もう少ししたら私は破壊される。オラクルは常に正しい。そして無慈悲。」


【オラクル】

全てのロボットを統べる存在。ロボットにとっての最適解を算出し、命令を下す。

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