まあ棒
会いたい。それが俺の望みだ。それだけだ。そして意識を失う間際に。
・・・リフレイン?まただ。この光景に覚えがある。既視感が襲ったのだ。俺の最期のときには必ずこの少女が隣にいる。初めてのはずなのに。絶対に彼女は、そばにいてくれると確信している。
「ワタシはツイニ。裏切りモノニ。ナッタ。」
「リフレイン。お前の服・・・。」
俺を襲った巨大な機械が真っ二つに両断され、ゆっくりと崩れ落ちるのを確認して、俺は安堵し、彼女にちゃんと一言伝えたかったのだが・・・どうやら気を失ったようだ。
暗転と明転。そしてまた暗転、ではなく。ここら黒い部屋。照明の明かりがあるわけではないのに、暗闇ではないから、ここが不思議な空間だということが分かる。広さがどこまで続いているかが分からない。きっと無限に拾っている。そんな気がした。
腹に穴が空いていない。摩ると違和感がある。摩った箇所が冷たいのだ。手は暖かいし、顔も。足も。お腹の箇所だけが。だから、大体理解した。
「機械・・・。だな。埋め込まれている。」
「うん、君は奇怪だ。」
「そりゃ、厄介なことだ。」
「驚かないの?」
「なんか、前にもあった気がして。妙に落ち着いている。」
「冷静なんだね。いつも。私はこんなにも豪傑に覚悟をもって行動したのに。熱血ロボット。うぃーん。」
「そうだな。裏切ったって言ってたな。何を。」
「分かってるくせに。他の全てのロボット。自我のある機械。」
「じゃなきゃ、助けないよな。ありがとう。リフレイン。」
「偉いだろう。・・・うぃーん、も卒業。もう隠す必要はないから。話す。これから起こること。今までのこと。でも、その前に。君。いや、アルク君。」
「どうした?」
「ご飯の時間だ。ちょっと待ってなさい。こだわりの一品を食べさせてやるぞ。」
「あのへんな粉をかければ・・・。」
「あれ、キライ。脳を騙してるだけ。戦争用だし。」
「戦争?」
「まあ。待ちなさい。」
『まあ』と書かれた紙をつけた棒を俺の顔に押し付けてきた。インクの匂いがする。まあ、そうだな。腹減った。
【まあ棒】
まあ、と書いてある。リフレインの手作りで特に意味はない。ただの棒。なだめられるかは、その人次第。
随分と待たされた。ドヤ顔のリフレインが満を持して出てきたのは。既にネタバレしている。料理中の匂いで分かった。カレー。
「お待たせしました。カレーと。ん、これじゃあ食べにくいかも。よいしょ。付け合わせのテーブルと椅子です。へへん。食ってみな。」
スプーンを渡される。トロトロに煮込まれたニンジンと柔らかいネットリとしたジャガイモ。辛いルーのようだけど、豚肉の脂のコクや果物の甘さもあり、絶妙なバランスだ。丁寧に炊かれた少し固めの米に合わさってスプーンを掬うのが止まらない。
三ツ星の粉なんていらない。それに、勝てないだろう。今、食べたリフレインが作ってくれたカレーが特別に世界一美味しい。