コーラ
「ほい。」
いつもの公園に寄り、喉が渇いたので、自販機でコーラを二つ買い、その一つを渡してベンチに座る。
先にぷしゅという音がして、リフレインは、ぐびぐびと喉を鳴らす。
「コーラはうまいな、君。今日は君を拘束した。明日は自由にしてやろう。」
「リフレインは明日、用事でもあるのか?」
「特にないけど。でも、最近、集会の召集が多くて。今日はないことに賭けたんだ。賭けの結果は勝ち。」
定例的な会だった筈なのに、その頻度は増えていたらしい。どうやら俺が学校に行っていた間に行っていたみたいだ。予定が入る可能性が常にあるのは、暇とはいえない。そうか、リフレインの気は休まっていなかったんだ。今日は貴重な一日だったんだ。
「なあ。聞いて良いか?」
「なに?」
「何を話しているんだ?その集会は?」
「うぃーーん。」
「まあ、そうだよな。」
やはり誤魔化された。
「・・・あ、待って。」
リフレインが足をぷらぷらさせながら、少し考えて、ぴたっと動きを止めて何かを思い付いたようだった。
そして、すぐに砂に足で文字を書きだした。地面も見ずに器用に。
『スナデカイタコトハ↓』
そう書き終わると俺が読んだのを確認してから、リフレインは、ざっざっと足で地面を擦り、土をかけて文字を消した。
『コウガイシナイデ、ワタシニモ↓』
ざっざっ。
『キミハナニモ、ハンノウシナイデ↓』
ざっざっ。
紙に書かないのは・・・そうか、そういうことか。だめなんだ。リフレインは見てはいけないんだ。彼女自身が今書いたことを。口外しないで、反応しないで。そう書かれた砂の文字。すぐに消すことができるので証拠も残らない。
「君、コーラでも飲んでて。」
リフレインがさっき飲んでたコーラを渡してきた。
「自分のがあるよ。」
「一本残せばあとで飲めるから。お得。」
「随分と合理的・・・なのか?」
「ロボットだからね。」
リフレインがこっちを向きながら、下を指差す。続きを書き終わったみたいだ。
『シュウカイノナイヨウ↓』
ざっざっ。
『ロボットニオケル。ニンゲントノセッシカタ。』
ざっざっ。ざっざっ。
集会の内容。ロボットにおける人間との接し方。なんだ、そんなことをやっているのか。
今までなら、うぃーーん、で終わりだったのに、初めて内容を教えてくれた。紙に書けばリフレインは自分の文字を見てしまう。足で書いた砂の文字までは想定していないということか。
「・・・今日はありがとうな。砂場は楽しい。また来よう。」
リフレインは特定の質問には答えられないんだ。監視までされているのか?予定が急に入るだけではなく?誰か分からない存在に憤りを感じたが、それを押し殺して俺は平静を装い、リフレインにそう言った。
「そうだね。また行こうね、君。」
【コーラ】
甘い。しゅわしゅわする。