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黎明旅団 -踏破不可能ダンジョン備忘録-  作者: Ztarou
Act.1 The First Complex
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第81話 内緒④

 仲間の見舞いに行く途中、開いた戸からふたりの話を聞いていたロア。初めは少し耳に入っただけだった。しかし、途中でラウラが、ロアをサリンジャーから隠すようにベッドに座って、ロアと目を合わせた。まるで、いまから重要な話をするから、そのままで居ろと言うように。


 ロアはその信じがたい話を少しずつ咀嚼した。マクスウェルの魔笛は時間を巻き戻す。ラウラは2週間後から巻き戻って来た。自分は決められた運命から逸脱していて、すでに死んでいて、でも巻き戻って、この先の未来を変えられるかもしれない──。


「(僕だったら──)」


 ロアはラウラの事を心の底から信じているわけではなかったが、彼女の持つ深淵の一端に触れ、少しずつラウラ・アイゼンバーグという人間の輪郭を捉え始めていた。


 しかし、魔眼ダークロードが言っていた冷帝ラウラというのは一体。


 ロアはあの瞬間から、そのことについて考えていた。


 ……──3日前、ソフィアに救出され、サンフランシスコで一件の終着を待っていたロアは、シリウス直下のエキドナ隊とアイアンメイデン隊に保護され、旅団まで戻ってきた。

 マゼランの中は混沌としており、廊下には血の跡がいくつもあった。医療部が忙しくしていたため、健康状態に問題がないと判断されたロアは自室にて静かにしていた。

 事の顛末はソフィア──既に喋り方はゆっくりに戻っていた──が丁寧に教えてくれた。そしてソフィアと別れ、3日が経った。


 彼は皆の状態を聞こうとポップコーンの所へ向かった。相変わらず東奔西走と忙しくしていたポップコーンだったが、暗い顔をしていたロアを見ると、彼女はとててっと駆け寄り、彼に大切なことを伝えた。


「無事でいてくれて、ありがとうっ!」

「ポップ、コーン」


 そう言われ、ロアはそこで初めて涙がこぼれた。ロアはポップコーンに、子どもの様に泣きついた。仕方ないなぁという風に、ポップコーンは彼の背を撫でる。


「よしよし」


 彼は全て自分のせいだと、己を責めた。けれど、ポップコーンは、旅団の人間は彼を責めるようなことはなかった。探検家は、自分の責任を自分で果たす。そういう生き物だ。だからこそ、自分の責任を感じるロアの姿勢は探検家として正しいよと、ポップコーンは言った。


「こんどは、どう果たすかだねっ」


 優しい声で言ったポップコーンは、お気に入りの白衣を涙と鼻水でぐしゃぐしゃにされても怒らず、ただ静かに、彼の背中を撫で続けていた。


 2時間後、ようやく泣き止んだロアは、疲弊したポップコーンをようやく解放──その間そこから動けなかったが仕事はちゃんとこなすポップコーン──し、皆の病室番号を聞くと、会いに行くため、歩き出した。感謝を伝え、そして話し、生きてゆくための作戦会議をしようと。


 道中でサリンジャーとラウラの話を偶然耳にしたロアだったが、サリンジャーの部屋は後に回して、ポンドたちの元へ向かった。もうその足取りは、重くない。

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