表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黎明旅団 -踏破不可能ダンジョン備忘録-  作者: Ztarou
Act.1 The First Complex
95/131

第78話 内緒①

 ゴールデンゲートブリッジ攻略、天空作戦から3日が経過した。


 結果としては、魔鍵の奪取、発見は失敗に終わった。シンジケートによる進撃を防ぐことも、重軽傷者の人数から見れば失敗に終わったと言っていい。


 ラウラはサリンジャーの病室で、梨をかじりながら彼女の寝顔を見つめていた。ラウラが何かを考えこむことは珍しい事ではないが、それを人に見せることはしない。故に、いつの間にか目を開けていたサリンジャーにその顔を覗かれたのは不覚だった。


「人のフルーツバスケットから梨だけ取ってくの、やめろよ」

「ははっ。減らず口が叩けるのならもう十全だね」


 かしっともう一口梨をかじるラウラ。

 ラウラはある程度の怪我は治すことが出来る。《踊子》は現実を改変するからだ。それでも「契約」による代償は必ず果たされる。故に、肺を取り戻すことはもうできない。


 しかし、彼女はできることは全てした。医療部門の見立ては、このような回復はありえない、神の御業だ、といったものだった。だが、ラウラは昔から神というものをあまり信じていない。


 サリンジャーはラウラから顔を背け、窓の外を見た。


「なあ、ラウラ。アタシはもって何か月なんだ」


 あの日、長年サリンジャーの身体を診てきたポップコーンの目だけは、ラウラでも欺くことが出来なかった。ポップコーンは手術室から出てくると、珍しく深刻な顔をしていた。ポップコーンは、彼女の身体がもう手の施しようがないほどに定義の代償で破壊されていること、ラウラが起こした奇蹟が、気休めのまやかしでしかないことを見抜いたのだ。


「ポップから聞いたのか? あいつにしかバレてないと思ったんだけど」

「アタシの身体の事はアタシが一番知ってるさ。ほんとは肺を無くす前から、そういう契約をしてたんだ」


 ラウラはサリンジャーに背を向け、そのまま彼女のベッドに腰掛けた。


「探検家ってのは愚かだよな。アーツなんて、なんでもできる魔法みたいなものを、本当に魔法だと勘違いしちまうんだからさ。アタシらは所詮、ただの人間でしかないってのに」


 そう言ったサリンジャーの言葉を、ラウラはひとつひとつ聞いていた。


「ま、もっともアンタがほんとに人間かは知らねーけどさ。でもそうありたいんだろ?」


 ラウラは口端を少し緩めた。


「そうだね。誰だって、バケモノになりたいわけじゃない」


 カモメが海辺を飛んでいる。開いた窓から、優しい風が入ってくる。潮風の香りがする。


「じゃあ、この際アンタが持ってる重いもの、ちょっとだけ持ってあげようか」


 軽い調子でサリンジャーはそう言った。


「重いよ、それは重いものなんだ」

「こう見えてアタシ、結構鍛えてんだよね」


 ゆっくりと上体を起こしたサリンジャーは上腕二頭筋をムキっとするとニッと笑う。


「ははっ。……ばかだなあ」


 ラウラは彼女の額に人差し指をつんとあてて、寝かせる。


 そして、静かに昔話を語り始めた。

お読みいただきありがとうございます!!!


続きが気になった方は☆☆☆☆☆からご評価いただけますと嬉しいです!!


毎日投稿もしていますので、是非ブックマークを!


ご意見・ご感想もお待ちしております!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブクマ・ポイント評価お願いします!

同作者の作品

魔刃学園の不刃流《アンワイズ》

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
[気になる点] 取り戻せない……移植しても、それが機能しないって事かしら(;'∀') [一言] サリンジャー(´;ω;`)ウゥゥ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ