第63話 目的①
「アメリアの大統領とプラウダの大使。どっちも姿勢は崩さないそうだ。いい加減大国がにらみ合うのは建設的じゃないと思うが、私一人でどうこうできる問題でもない」
ラウラはあの日の晩、ひとり東海岸に渡りワシントンにて、アメリアの大統領とプラウダの大使と共に三者会談を行っていた。結果、ロサンゼルス事変の対応が後手に回った。というよりもその隙を狙われたというのが正しいかもしれない。
だが、これがラウラの今できる最も重要な仕事であることに違いはなかった。
内容は各国のシンジケートへの対応だった。アメリア共同体は寛容を掲げる国。シンジケートだろうが受け入れると、初めは強気の姿勢をとっていた。しかし、例の重力津波が起き、それを宣戦布告と受け取ったアメリアは軍を動かした。
プラウダ正義帝国はその動きに対し、忠告を行ったが、アメリアがそれを受け入れるはずもない。ラウラはいつかの冷たい戦争のことを思い出していた。
「ここが戦争の起爆点になるかもしれないね」
そのラウラの言葉に第5支部支部長ソフィアは瞑目した。
「それは……。──。させない……。──。橋は……。──。任せた」
ソフィアは近くに控えていたアルプスに、大統領へのホットラインをつなぐよう言った。そして簡易会議用テントを出ていく。
支部長が支部長に「任せる」と言うことは、つまり現場指揮の全権委任を意味する。
「シリウス。いつも通り現場指揮は任せるよ」
「まて、お前はどうするんだ」
シリウスは作戦資料に目を通しながらラウラに聞いた。
「ジュネーヴに行くよ。戦争を止めなくちゃね」
国際機構の本部ジュネーヴには、国際紛争調停評議会がある。ラウラはその場での発言権を23%保有している。筆頭発言者だ。シリウスもそれは理解していた。
「寄り道もするけど、そっちはすぐに終わらせる」
「だがゴールデンゲートブリッジは──」
ラウラは少しだけ振り返り、シリウスを見つめる。
「私はお前のことを信用してる。信頼じゃないよ。そのふたつは似ているけど違うんだ」
そうかと呟いたシリウスはテントを出ていくラウラに目をやらず、資料に向かった。
傍でそれを見ていたポンドは後頭部に手をやりながらつぶやいた。
「中間管理職って、大変スね」
「……黙れ」
お読みいただきありがとうございます!!!
続きが気になった方は☆☆☆☆☆からご評価いただけますと嬉しいです!!
毎日投稿もしていますので、是非ブックマークを!
ご意見・ご感想もお待ちしております!!