第04話 契約②
「具体的には、これから僕はどうすればいい?」
セナと共に草原を征くロア。向かう先は巨大な艦船。軍艦の様にも見えるが、セナ曰くそれは観測船らしい。
「そうなんですよね。それがわからなくて」
「君は、実は計画性が無い?」
「えっ、そんなことないですよ……──」
セナはよそ見をして誤魔化した。
「普通なら黎明学院を修了、見習いとなって、一人前と認められる乖離18等級を目指すという流れなんですが、ロアってそもそも社会保障番号とかないですよね」
「うん。なにも持ち合わせていない」
セナは口元に手をやってむむむと悩んだ。彼女にはいくつか選択肢がある。ひとつはサリンジャーに相談すること。指導教官に報告するのは、まあ順当である。しかし、自分の尻も自分で拭けないのかと言われそうな気がして憚られる。
ではふたつめ、第9支部総支配人のシリウスはどうだろう。駄目だ。あの男は冷徹無比すぎる。そんなイレギュラーを許すはずがない。大体、極地潜行許可証の偽造で、今怒らせている。
みっつめ、しれっと部屋で飼う。いやいや、ないな。すぐばれる。
セナは難しい顔をしながら隊員手帳をみつめ、抜け道が無いか探す。それを隣で見ていたロアは、自分がこの世界の言葉もわかるし、彼女が持っている手帳の文字も読めることに気が付いていた。そしてふと、あるページに目が留まる。
「──編入試験」
セナの顔がばっとこちらを向く。
「え、いや、今そこに書いてあったから」
セナは手帳を見直す。すると、その隅の方に特別編入試験なるものがあると見つける。
「(……目がめちゃくちゃ良い?)」
手帳によると、黎明旅団に所属する50等級以上の探検家を試験監督として、特別に才能が認められた場合、その国籍、出身、年齢を不問とし入団ができるというもの。
「これならいけるかもしれません! 医療部門のチーフでとても心優しいけど、実は高等級という人が居るんです! 彼女にロアを見てもらいましょう!」
ロアにはセナの言っていることがひとつもわからなかったが、彼女が喜んでいるということは、何か抜け道が見つかったということなのだろう。ロアはそれを信じてみることにした。
すると、セナがふと立ち止まった。ロアは振り返る。
「あなたといれば、私はアーツがまともに使えます」
彼女は手のひらを上にして、指を一度弾く。するとそこに陽炎が生じ、次第になにもないところから燃焼が生じる。炎が彼女の手のひらに生まれた。
「君は魔法使いなのか?」
ロアは風を受け揺らめく炎に目を取られた。
セナはふんふんと頭を横に振る。
「魔法とは少し違います。奇蹟ではなく、体系と因果がありますので」
セナは少々難しい言い方を好むな、とロアは思った。
「私たちはこういう能力をアーツと呼んで使います。私はいままで、よくこの炎の制御を失っていました。でもあなたの近くにいるときは炎が穏やかで」
「僕が何らかの影響を?」
そう思っていますとセナは言った。
「今この炎もそう。それとあなたが落ちてきたときも爆炎を飛ばしたんですが──」
「君はもしかして僕を吹き飛ばしたのか? その不安定な一か八かで?」
ロアの言葉にセナは口笛を吹いて誤魔化した。しかしセナの口笛は下手だった。
「まあ、助かったんだからいいじゃないですか。ともかく! あのときも、今も、力の制御が良く効くんです。今まで私はこの力を御することができないでいました。でも、あなたといれば──原理はわかりませんが──そのデメリットは無くせずとも、小さくできる」
セナは炎をさっと握ってかき消した。
その顔は、少し申し訳なさそうにしていた。手でもう片方の腕を抱えるようにして言う。
「下心で探検に誘ったのも事実です。そういったことは先に伝えるべきでした。もしあなたが気分を害していたら、すみません」
ロアは考えるまでもなく答える。
「役に立てるのなら、気にしない。それに、君には僕の旅に付いてきてもらう。そのアーツという力が安定するなら、そっちの方が僕にとってずっと頼もしい」
ロアはセナが変に気負わないようにそう言った。もちろん本心でもあった。
「ふふ。あなた、さてはいい奴ですね」
それは良かったとロアは答える。彼女の目にもう迷いはない。
「よし! じゃあこれから一流探検家への道を駆け上がりますよ!」
「ああ、行こう」セナの元気な声に乗っかるロア。
「あ、でも後から付いて行くのは私でなくロアの方なのでそこは勘違いなさらず」
「君はなんて細かいやつなんだ」
ロアとセナは互いの面倒くささを笑いつつ、目的地へ向け歩き出した。セナは思っていた。きっとシャンバラの門をくぐるときも、こんな感じなのだろうな、と。
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