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黎明旅団 -踏破不可能ダンジョン備忘録-  作者: Ztarou
Act.1 The First Complex
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第09話 過去①

 ロアは夢を見ていた。


 彼は身ぎれいな格好で、図書館にいるのだ。その図書館は想像を絶するほど大きい。


 永遠にも思えるのだ。いくら歩いても奥に辿り着かないので、終点を見つけるのはあきらめた。一冊本を取ってみると、それは『白鯨』という本だった。


 ロアはそれを知っていた。読んだことがあったのだ。しかし、記憶がない。


 ──どこで? いつ? わからない。


 ロアはそれを本棚に戻し、図書館を後にした。なんとなくそうした方がいい気がして、図書館に鍵をかける。鍵なんてさっきまで持っていただろうかと疑問に思う。


 外に出ると快晴で、白い街並みが目に入る。階段状の街は、図書館を中心に広がっていた。


 壁は漆喰だ。陽光が少しまぶしいが、慣れたら美しい。ロアはその景色に見覚えが──。


         ***


 ぱっと目を覚ますと、知らない天井が目に入った。


 ロアは辺りを見回す。彼自身は拘束用ベルトでベッドに縛り付けられている。

 セナがロアの手を握ったまま寝てしまっている。足元の先にはサリンジャーが居て、大鎌の柄にあごを乗せている。

 ベッドにはラウラが腰かけていて、デスクではポップコーンが物を書いていた。


 いや、知っている天井だった。ここはポップコーンの病室である。


「こいつは封印すべきだ。得体の知れない奴に身体を乗っ取られていたんだぞ。そいつは少なくとも80等級を超えてる。尋常じゃない」

「私が居れば問題ないよ。その証明はもう済んでいると思うけど」

「もしあんたがいないときにそうなったら?」

「お前がどうにかすればいいサリンジャー。私の一番弟子じゃないか」

「──アタシの師匠はアイラだけだ」


 すごんだサリンジャーの声もラウラは無視する。


「でもそうだね。お前じゃ力不足か。私が面倒を見るよ。それで文句ないだろう? だって私は支部長なんだから」

「こういう時だけ支部長ぶるな」

「付き合いは長いけど、言い方には気をつけなよ」


 それを聞いていると、顔の上にポップコーンの顔がにゅっと現れる。


「あーっ! ロアくんおきたっ!」


 それを聞いてセナがばっと目を覚ます。よだれも気にせず。よだれは気にしてほしい。


「これはどういうことなんだ?」

「えっとね、ロアくんが危険な力を持ってるから、どうするか決めてるの!」


 ポップコーンが言うので一大事も柔らかく聞こえる。


「サリンジャー。お前がシスコ……セナ想いなのは知ってるけどさ」

「妹じゃない弟子だ! だからシスコンじゃない!」想ってるのは認めるサリンジャー。

「このもやしみたいな少年がほんとに危険因子に見える?」もやしって。

「だけどあの時は確かに感じたんだよ……。まるで極地の底に居るみたいだった」


 ──僕は一体、何をしてしまったのだろう。


「まってよ~! 乖離等級が高かったのは、乗っ取られていた時だけでしょ~?」


 ポップコーンがそう指摘するが、ロアには乖離等級というのがなんなのかわからない。こちらを見たセナがそれを察してか、ロアに説明する。


「乖離等級は、脅威・熟達度同時評価指標というもので、俗っぽく言えば『つよさ』です。普通からの乖離度を示す値なのですが、あの時のロアはそれが非常に高く──」

「乖離等級89、化け物だ。高難度極地でも見たことねぇよ」


 サリンジャーの指摘にラウラは鼻で笑う。


「乖離等級は共通の指標さ。支部長の連中なんて軒並み90等級以上あるよ」


 それはアンタらの話だろ。サリンジャーはラウラに反駁し、それは正しかった。


 実際、高等級の人間とそうでない人間にとって、高等級に対する見方は違う。


「危険なら、無害化する方法はないのか」


 ロアはそうこぼす。


 ラウラとサリンジャーはポップコーン医師の方を向く。


「それが不思議なんだよねぇ。サリンジャーのCocytus(コキュートス)には89等級の記録があるんだけど、今は等級0なの。ぜろだよ?」


 通信チョーカー、別名Cocytus(コキュートス)。観測船マゼランを中心として半径10㎞圏内の相互通信を可能にするチョーカー型デバイス。体調や乖離等級の測定までこなすことができる。チョーカーでない形もある。と、セナが耳打ちをする。


「一般人は等級が01って定められているから、それ未満だねぇ。これが素の値だと思う」

「ほら、あれは一過性のものなのさ。何も問題は起きないよ」

「でも! その暴発が万が一セナの前で起きたら──」


 ──SHIIIIIIIN。


「私が『問題は起きない』と言えば問題は起きない。もう一度言った方がいいかな」


 シンと空気が止まる。


 ラウラのその一言はサリンジャーとセナとロア、彼女らを総毛立たせた。付き合いのながいポップコーンはくるくる椅子に上ってラウラをぺしっと叩く。


「こらっ。そんな人を威圧するようないい方しちゃだめでしょっ」

「うるさいよポップ。格好つかないじゃないか……」


 ポップコーンはそのままロアの方を向いて話す。


「チーフドクターとしてのけんかいを言うね。ロアくんの今の状態はとても安定しているよ! 話す限り真面目で心優しい子だし、じんちくむがいとすら言い切れるね。それとこれはいち研究者としての提案なんだけど、黎明旅団で保護、経過観察ってどうかなぁ」


 研究! 研究! とポップコーンは目を輝かせている。ロアは若干寒気がした。


「そりゃいい、賛成だ」


 ラウラは賛成する。サリンジャーは難しい顔をしている。


 異論は? とラウラが皆の顔を見る。そしてセナをじっと見た。


 セナはロアの手をまだ握っている。


「少しだけ、時間を頂けますか?」

「ちょっと面白そう」と思っていただけましたら……!


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― 新着の感想 ―
[一言] 確かにのぅ。 こいつぁみんなで見張ってないとアカン案件や(;'∀')
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