第90話 再会②
ヨシュアが、最後に残ったカリカリの小さいポテトを食べ、ロアがそれにいちゃもんをつけた辺りで陽が沈んできた。
「あっ、そろそろ帰らなくっちゃ。R.A.Y.S.のロサンゼルス寮って門限早いんだよね」
「話題を巧みに逸らしたな」
「うっ」
捕まった猫の様な顔をするヨシュア。
「しょうがない。次のポテトが君のおごりならいいよ」
「けち」
ふたりのハバフレ──ハンバーガーフレンド──はそうして笑いながら店を出た。すると少し先を歩いていたヨシュアは、後ろに手を組んで、くるりとロアの方を見た。どきりとするロア。ヨシュアは少しもじもじしている。
「もよお」
「催してないよっ」
もーっとヨシュアは怒る。そして改めて言う。
「あのね、ヒーローの話とか本の話出来て、わたしすっごく嬉しかった! ……その、もし良かったら、今晩うちに来ない? えと、うちのお父さん、夜はいないの」
ロアの心は最近複雑だ。セナと出会ったときは無垢で真っ白な空っぽの心を持っていた。それでもいろんな人と関わって、少しずつ感情を知って、意見すら持てるようになった。だから、彼女から向けられる視線の意味がわからないわけではなかった。
「ヨシュア……」
ロアは瞑目し、やがて目を開ける。
「さては語り足りないんだな??」
「うん!!!」
このハバフレ達の間にある謎の連帯感においては、もう恋などという脆いものは発生しないのかもしれない──。
そのあとヨシュアは南街のある一軒家までロアを案内した。こじんまりした家だったが、過不足ないという感じで、ロアはその様子が好きだった。
「あ、電気ついてる。まだエルヴィスいるのかな。ごめんね、すれ違いになるかも」
ロアは問題ないと伝え、逆に問題ないか? と聞くと、優しい人だから大丈夫だという。なんでも、防犯上の理由で、寮に第三者を入れてはいけないのだという。ただ、ロアは身元も黎明旅団が保証する人間だから大丈夫だろうとの彼女の判断だった。
玄関前でヨシュアはポッケに手を突っ込んで鍵を探していた。すると、その音を聞いたのか、内側から鍵が開けられた。扉が開かれる──。
そこには、物腰柔らかな壮年の男性がいた。
「おや、ヨシュア。お客人なら先に連絡をくれないと。しまった、何も用意がない」
「どうも。名前はロア、その、どうぞお構いなく」
「そうだよパパ! ただの友達だって!」
彼女は男性の事をパパと呼んでいるので、お父さんなのだろうか。とロアは思ったが、実家を出てR.A.Y.S.に入ったと道中に言っていたので、手続き上のという意味かもしれない。
「あ、パパ、お茶いれてね!」
「まったくこの子は。本当に『内弁慶』だな」ふふと微笑んでいる。
ロアは男性に歓迎されて、そのままリビングに向かった。内装はマゼランの談話室に少し似ているが、よりカントリー──古風な調度品等もあった。ロアはソファに腰掛ける。
奥に下がったエルヴィスはどうやら紅茶を淹れてくれたらしく、こちらに持ってきてくれた。ヨシュアはというと、自分の部屋に必殺技のネタ帳があると言って取りに行ってしまった。そういう自由な所が、少しセナに似ているなと思った。
「どうも、私はエルヴィス。あの子の父親代わりみたいなものです」
エルヴィスはシックな服装をしていた。動きもどこかゆっくりで、優しい。
「すまないね、ヨシュアは懐く人にはとことん懐くんだ」
「僕も楽しい。だから大丈夫だ」
「ああ、そうだ。時に、ロア君には好きな人がいるのか?」
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