夜明けの村、旅立ちの道
まだ薄暗い中目が覚めた。それなりに緊張していたはずではあるのだが、案外安眠出来たようだ。
そっとベッドを抜け出すと、いつの間に帰ってきたのか家族は皆寝静まっていた。
物音を立てないよう荷物を取り出して愛剣と共に肩にかけ、リビングに向かうとテーブルの上に用意しておいた手紙を置いた。
家族は皆字が読めないが、村長なりティムなりに頼めば読んでくれるだろう。
手紙には「村を出て冒険者になります、心配しないでください」「親不孝な娘でごめんなさい」といった内容が書いてある。
最後に家の中をぐるっと見渡してから、口の中で小さく「いってきます」と呟いて家を出た。
村の中は昨晩の騒ぎが嘘のように静まり返っていた。この景色もしばらく見ることはないのだろうと思うと、自然と歩みは遅くなる。
旅立つことに対する躊躇いはないが、生まれ変わってから10数年過ごしたこの場所を目に焼き付けておきたかった。
駆け抜ければ5分もかからないような道のりを倍以上の時間をかけて歩いていくと、
すっかり出発の準備が済んだ馬車の前でベルントさんが待っていた。
「……よう、心の準備は出来たか?」
「……はい、よろしくお願いします」
乗りな、と促す声に従い、幌の付いた馬車の荷台に乗り込む。
私が具合の良い場所に腰を落ち着けようとしている間にベルントさんも御者台に乗り込み、ゆっくりと馬車が動き出した。
幌の隙間から少しずつ遠ざかる村の様子を眺めているうちに何故だか涙が溢れだして、自分でも少し驚いたが、すぐに理由が分かった。
……そうか、私――なんだかんだあの村が、あそこに暮らす人々が好きになっていたんだなぁ。
徐々に昇り始めた朝日が、世界を照らしていく。
村が小さくなって、やがて見えなくなるまで、頬を拭うのも忘れてその風景を見つめていた。
序章はここまで、これ以降は順次投稿します。
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