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家の外、村の中

自分が異世界転生などという小説の中でしか有り得ないと思っていた状況にあることに気づいてから数年。

私は5歳になっていた。

それまでは危ないからと家の外にも出してもらえなかったのだが、この頃ようやく外出することが許されて

近所の子供と遊んだりするようになった。

最近双子の弟妹――弟はセージ、妹はトレニアと名付けられた――が生まれたこともあり、私ばかりに構っていられなくなったというのもあるのだろう。

個人的には自由な時間が生まれたので有難いくらいだし、前世では一人っ子だったこともあって小さな弟妹達が可愛くて仕方がない。

大きくなったら反発されたりもするのだろうかと思うと少し悲しくなったが、どちらかというとこれは親の目線な気がする。

精神年齢的には今世の両親と大差ないのだから仕方ない。


家族以外の人間と接するようになって得られた情報もある。

例えば、大体の住民は生まれてから死ぬまでこの村の周囲から出ることはないらしいということ、

他にも村長など村の外と交流するような立場の人間でもなければ読み書きができないのが普通らしいということなどだ。

前置きしておくと、そんな生き方が悪いだとか言うつもりはない。

しかし折角ファンタジーと呼ばれるような世界に生まれ変わったのだから、

どうせなら冒険者になって胸躍るような体験をしてみたいと思うのが人情だろう。

ましてや、画面の向こうや紙とペン、ダイスと想像力で冒険していたような世界が目の前に広がっているのだ。

この穏やかな農村で一生を過ごすことなど、私には考えられなかった。


この辺りから私はこの村を出て冒険者として生計を立てるための計画を立て始めた。

まずは学だ。情報を得ることもそうだが、村を出れば身一つで世間を渡っていかなければならない。

その中で文字の読み書きが出来なければ人から騙されたりすることも出てくるだろう。

ではどうやって勉強の機会を得るかだが……運の良いことに、同年代の子供の中に村長の息子がいたのである。

歳が近いことを利用して彼――ティムという少年に近づき、仲良くなった頃に

「わたしもティムといっしょにおべんきょうしたい!」

と、幼さを全面に押し出し主張した。

自分の目的のために子供を利用することに罪悪感がないわけではなかったが、

農家の娘が勉学をするためにはそれしか手段がなかったのである。許せ、ティム少年。

ともあれ、思惑通り私は彼の勉強に便乗して読み書き計算などを教わることが出来るようになった。


しかし冒険者になるのであればもう1つ必要なものがある。

そう、自衛の手段――即ち武力である。

魔法に対する憧れはあったが、少なくとも現時点では学ぶ手段がないこともあり、ひとまずは武器の扱いを学ぶことにした。

これに関しては学力を得ることよりも簡単だった。近所の男の子のチャンバラごっこに混ぜてもらったのである。

こちらは勉強とは違って拾った木の棒を打ち付け合う遊びであるから混ざること自体は難しくなかったし、

もう少しちゃんとした技術が学びたいと思ったら父にねだればよかったからだ。

女の子なのに、と少々渋い顔もされたが、

「おとうさんみたいにかっこよく剣を振れるようになりたいんだもん」

と、少々甘えたような声音で言ってみれば、父は一瞬で陥落した。父親は娘に甘いというのは異世界でも共通の事実だったようだ。


こうして学力と武力という2つの武器を身に着けるための下地が整ったわけだが、村を出るためにはまだ足りないものがある。

それは移動の手段だ。

村長の家で行われる勉強会の際にこの国の地図を見せてもらったのだが……

最寄りの町に行くのでさえ徒歩では途方もない――ギャグではなく、純然たる事実だ。

とにかく、身1つで移動するのは厳しいということがわかっている。

馬に乗れればその問題は解決するかもしれないが、そもそも小さな村であるが故に馬は数頭しかおらず、

馬という生き物は兎角高級品であり、維持費もかかる。よって自分の馬を手に入れるのは絶望的だろう。


そこで私が目を付けたのは、定期的に村へと訪れる行商人である。

商売人同士の縄張りでもあるのか、月に1度程やってくるのは毎回同じ商人だった。

しかしいきなり見知らぬ子どもがやってきて馬車に乗せてくれと言われても断られるに決まっている。

故に私はまず彼と顔見知りになることにした。

「ぎょーしょーにんさん、こんにちは!わたしはビオラ!」

ここでも幼さを利用し話しかけてみれば、彼はにこやかに応対してくれた。

気の良い親父さん――名前はベルントというらしい。

行商人であればこの村以外にも様々な場所に行っているであろうから村の外の情報を得られる上、

会話を重ねることで親しくなれば、来たるべき旅立ちの日には協力してもらえるだろうという一石二鳥の作戦だ。

そんな私の下心も知らず、彼は村を訪れるたび色々な話をしてくれた。


そうして私は、着々と旅立ちの下準備を重ねていった。



 

読んでいて違和感を感じる箇所などありましたらご指摘いただけると助かります。

後々説明する要素もございますのでご容赦ください。

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