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祭りの夜、旅立ち前夜

初投稿です。

至らぬところなど多々あると思いますが、生暖かい目で見て頂ければ幸いです。

燃え盛る焚火を囲んで踊る何組もの男女。

時折視線を絡めあいながら踊る彼らは皆夫婦か、いずれはそうなるであろうカップルたちだ。

幸せそうだなぁとは思いつつ、自分がいつかその輪に加わることは想像がつかなかった。


「ビオラ!」


不意に名前を呼ばれそちらを向くと、そこには1人の青年が立っていた。

彼の名はティム、このベータント村の村長の息子である。

農村住まいにしては白い顔を上気させた彼はどこか緊張した面持ちでこちらを見ており、

その後ろでは数人の青年――私や彼と同年代の友人たちだ――がニヤニヤしながらこちらを伺っている。

そして周囲の村人たちもどこか微笑まし気にこちらを見つめていて、

この後何を言われるのか大体察しがついてしまったが、礼儀として何も気づいていないふりをして首を傾げる。


「ティミー、どうかした?」

「そ、その……ぼ、僕と……踊ってくれませんか!」


――先述した通り、今日ここで踊るのは夫婦かそれに準ずる男女である。

そんな彼らに混じって一緒に踊ってほしいという申し出は、自分たちも同じ立場にならないかという誘いである。

要するに、私はたった今プロポーズされたわけだ。

彼は私に向かって手を差し伸べた姿勢のまま、じっと返答を待っている。

――村長の息子ではあるがその立場を鼻にかけず、気弱なところはあるものの勤勉で優しく、

なによりも長男である彼はいずれ村長の立場を継ぐだろう。

紛うことなき優良物件だ。

この村の娘の誰であろうと迷わず頷くであろう状況、しかし私は――


「ごめんなさい、ティミーは良い人だけど、結婚したいとは思わない」


あっさりと断って、その場から逃げ出した。

世の中には良い人だけど付き合うのはちょっと……と思ってしまう相手というのが存在するものだ。

誤解しないでほしいのだが、彼に何か瑕疵があるとかそういう話ではない。

間違いなく彼は優良物件であり、プロポーズを蹴るだなんて考えられないことだ。

――普通であれば。

遅ればせながら自己紹介をさせてもらうと、私の名前はビオラ、庶民故家名はない。

そして、前世の名前は山岡 菫――所謂、転生者というものである。



 

ビオラがティムのことをティミーと呼んでいますが、これは愛称であり友人たちは皆彼をそう呼んでいます。


読んでいて違和感を感じる箇所などありましたらご指摘いただけると助かります。

後々説明する要素もございますのでご容赦ください。

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