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002 宿の確保

 目の前に小さな町があるなら入るしかない!

 ということで、私は〈ポンポコタウン〉に入った。

 町の名前でポンポコって、なんとまぁ可愛いことだろうか。


 ポンポコは推定人口1000人ほどの小さな町だ。

 ゆったりした間隔で家々が建っていて、町民は大人が多い。

 10代20代が殆どいないのは、この町が田舎であることを物語っていた。


「まずはお金を調達せねば!」


 幸運にもレミントン王国とルーベンス王国の通貨は同じだ。

 不運にも私は1ゴールドのお金すら持っていなかった。


「すみませーん! 生活保護の申請に来ましたー!」


 まずは町役場で弱者救済サービス、通称「生活保護」の受給申請。


「え、国籍はレミントン王国? しかも元貴族令嬢で国外追放された? 無理無理、そんな人間を救うためのものじゃないからね、生活保護は!」


 素直に話したところ、全力で拒否された。

 そんなことだろうと思っていたので気にしない。


「仕方ない……脱ぐか!」


 私は服屋に向かった。


「私の着ているこのドレス、買い取るならいくら!?」


 ドレスを売れば10万ゴールドにはなるはずだ。

 なんたってこのドレスは王国随一の職人が手作業で作り上げた特注品。

 手つかずの素材だけで50万はするし、そこに職人の手が加わったとなれば――。


「1万2500ってところだな」


「え? いちまん?」


「おう」


「×10とか?」


「いや、1万2500だ。あんた訳ありだろ? そういう奴からは安く買い叩く。これ商売の基本」


 どうやら店主のおじさんはびた一文負ける気はないようだ。


「じゃあ1万2500に替えの服もつけてよ! 服がないなら裸で過ごすことになってしまうのよ!」


「俺としては裸のほうがいいけどな、ヘヘヘ」


「そんな冗談はいいから! いいでしょ?」


「仕方ねぇなぁ。あそこのセール用ワゴンにあるワンピースの山からから適当に見繕いな」


「了解! 私、寒がりだから10枚くらい着込むけど許してね」


 ここでたくさん着込めばあとで着替えられる。

 賢い私、なんと賢い。


「いや、1枚しか認めん。男にスケベな目で見られたくなけりゃ丈の長いやつを選ぶこったな」


 この店主は悪魔だ。

 なんともケチな男である。

 しかし、この店に女性用の服を買い取る店は他にない。


「分かったやい!」


 私は煌びやかなドレスを捨て、1万2500ゴールドと地味なワンピースを手に入れた。


 ◇


 金貨1枚に銀貨2枚、そして銅貨5枚。

 これで1万2500ゴールド、私の全財産。

 なんだいこの少ないお金は。


「文句を言っても始まらない、がんばれ私! うおおおー!」


 このお金は大事に使わねばならない。

 まずは寝泊まりする場所を確保するためお安い宿屋へ。

 ポンポコ一番の安宿にやってきた。


「あんた、本当にウチに泊まるのかい?」


 宿屋のおばさん店主は私の顔を見て目をギョッとさせた。


「はい! ダメですか?」


「ダメじゃないけど、看板は見たんだろうね?」


「見ました! 盗難・強姦・自己責任! ですよね? 大丈夫です!」


「あの看板は『女は来るな』って意味だよ。そんなことを書いたら男女差別でアウトだから言い方を変えているだけでね。たしかに盗難も強姦もこの町じゃ起きないけどさ、知らないよ?」


「安いのでヨシ!」


「今時の子は恐れ知らずだねぇ全く」


「うへへ! 料金は食事なしで1泊2500ゴールドですよね?」


「あんたは訳ありみたいだから2000でいいよ。部屋も一番いいところにしてやるさね」


「ありがとー! おばさん!」


「はいよ」


 一泊2500でも相場の半値近い。

 それがさらに2000まで値下げされるとは恐れ入った。


「おい聞いているか服屋の主人! これが人情ってものだ!」


「ここには私とあんたしかいないのに何言ってんだい。ま、私も若い頃は唐突に精霊と話している振りをしたさね」


「ぬわっはっは」


 そんなこんなで宿は確保した。

 ひとまず道ばたでくたばることはなさそうだ。

「面白い」「続きが気になる」と思っていただけたのであれば、

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