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54話・親子川の字で


「そう。かっこいい人なのね? そのアンバー侯爵と言うのは? 何だか鉄仮面のようだとも聞いたけど?」


 母はサーファリアスと直接会ったことはない。情報はオウロからだと知れた。


「感情的になるのを避けているのだと思う。宰相だし他人に侮られないように振る舞っているせいなのかも」

「二十代で宰相だなんて凄いわね」

「そうでしょう? でもお父さまもそうだったと聞いたけど?」

「まあね。二人とも立場的に似ているのかも知れないわね。お父さまも今では落ち着いたけど皇帝になるまでは色々あったから」


 ふふふと二人で笑っていたら「何を話しているんだ?」と脇から声があがった。噂をすると影? ではなくて本人がいた。


「お父さま!?」

「リーリオが寝台にいないからここではないかと思ってな。今夜は父も一緒に寝るぞ」


 父も母と同じように寝間着にガウンを引っかけて現れた。掛布を持参していたが小脇に二つ枕を抱えていた。わたしに拒否する隙も与えずに寝台に上がり込んできた。


「リーリオ。枕を忘れているぞ」


 そう言いながら枕を母に手渡す。もともと大きな寝台なので大人三人入ったくらいで狭くは感じられない。母とは反対側に父が収まったので親子三人川の字のようになった。


「こうして親子三人頭を並べて寝るのも悪くない」


 欠伸を漏らしながら父が言う。遅い時間まで政務に追われていたのだろう。


「これも余達がやってみたいことの一つだった。また一つ叶った」


 ありがとうマーリー。そう言って頭を撫でる手が大きくて温かかった。パールス家で使用人扱いされて心を凍らせるしか無かった過去の自分に言いたい。大丈夫、あなたの未来はこんなにも温かいと。


 わたしは自分から両親の手を握った。大きく何もかも包み込むような手と、指が長くて癒やされるような細い手。どちらもわたしの身を案じていることが指先から伝わってきた。

 両親に挟まれて寝たことで熟睡出来たようだ。翌朝、清々しい気分で目覚めることが出来た。


それから数日間、両親が就寝前に部屋を訪れ共に寝ることでわたしの不眠は解消されてきた。


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