ボクのことも、嫌いなん?
あの時のボクの感情……。
たぶん、悔しいが妥当なんだと思う。
もっと的確に表現するとすれば、「あんまりだ」って気持ち。
「そんなのって、ない」って想い。
ボクは幽霊のお姉さんがかわいそうだったのだ。
みんなに怖がられてることは子ども心にもわかる。
真夜中に立っている姿をみたという目撃者の話。
幼い理解力では幽霊のお姉さんは『みんなにイジワルをしたせいで独りぼっちなお姉さん』だったのかも知れない。
そうだ。
そう考えれば、いろんなことに納得がいく。
胸が絞めつけられるような想いの決意。
なかなか実行できない自分を謝りながら泣いた日。
打ちのめされそうなくらい遠い距離を、挫けずに進めた使命感。
すべてがしっくりくる。
そして、目の前に現れたお姉さんに、すべてを打ち砕かれた。
ボク、何もしてないのに。
ボク、何もしてないのに。。
そんなことを思ったように思う。
強く覚えてるのは、泣く顔を見せてやらないという気持ち。
こんな、わかってくれないお姉さんに、自分の何も見せてやらない。
ボクはもう涙はこぼれてるのに、必死に歯を食いしばって泣き声を出すまいと堪えた。
ヒクッ、ヒクッ、とお腹を痙攣させながら。
そして、逆襲のような気持ちだったんだと思う。
ボクは、悔しさを言葉にして絞り出した。
「お姉ちゃんは、ボクのことも嫌いなん……?」
お腹がヒクッヒクッと痙攣する。
静かな時間。
流れは、いきなり変わった。
目の前にあった気配が、いつ遠退いたのか、ボクは気づいていない。
後ろから、ボクはいきなり抱きしめられた。
驚いて反射的に目が開く。
ボクを包む、女の人らしい細いけど柔らかな腕の感覚。
「ほッ!?」
ボクは、そんなマヌケな声を挙げたと思う。
そして、固まった。
ボクの顔の横に、もたれ掛かるように寄り添う顔を感じていたからだ。
細くサラサラと長い髪は、気持ちよくて、くすぐったかった。
静寂。
やがて、耳元で声がした。
「ごめんな」
低いけど優しい、呟きのような声。
腕も、頬の横の気配も消えた。
代わりに、左の肩と頭に手が置かれ、頭の上の手は、何度もボクの頭を撫でた。
ボクは、捕まえた何かを逃すまいとするかのように、その手に自分の手を添えた。
細い指の、しかし骨張ってない柔らかな手だった。