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幼い決意 と痛み。

 派手に暴れたらしい。

 だけど、誰も傷つけなかった。

 傷つけなかった代わりに持っていた包丁で自分を傷つけて命を断った。

 どこをどーしたって話は知らないから、何度も何度も傷つけたのかも知れない。

 よっぽど悲しかったのか悔しかったんだと思う。

 幽霊を見た人の話は、玄関のドアの前に立って、じっと外を見ていたとかだったと思う。


 すべてが憎かったのかも知れない。


 そのドライブは親父のプチブームだったから、ボクはこの家の前を何度も通ったし、幽霊が出ることも工事をする人が困ってるという話も、何度も聞かされた。

 あの頃は、ボクの5歳の誕生日が近くて本人としてもそれを強く意識していた

 もうすぐ誕生日の幼児は、元気はもちろん、変な自信ややる気に満ちていた……んだと思う。

 どんなボキャブラリーでどんなことを考えたのかは覚えていない。

 どー考えたらそんな結論になったのかも覚えていない。

 ただ、一つの強い決意に至った。


 ボクがユーレイのお姉ちゃんに「ダメ!」って言うてやらんとイカン……。


 親戚の幼い子をみると、ナマイキな盛りにはやたらに注意したり叱ったりすることに興奮したり情熱を燃やしたりすることがある。

 そんな傾向の延長のようなものだったのかも知れない。


 ただ、ぼんやりと覚えているのは、少し胸が絞めつけられるような想いと焦りのような感情。

 幼かったボクは、幼かったボクなりに、なんだか胸を痛め、その“お姉さん”のことをなんとかしてあげたかったんだと思う。


 すぐには実行しなかった。

 年月が立って、あの場所に行ってみたり前を通りかかったりすることはあるけど、正直しょーじき、思いの外に遠い。

 そのたびに、「やりおるなぁ……」とあの頃のボクに感心するのと一緒に笑いがこみ上げる。

 きっと、大冒険だったろう。


 実行できなかった頃について、断片的な小さな記憶がある。


 昼間の光景だから、1人で留守番してたんだと思う。

 ボクはボクの部屋で押し入れから引っ張り出したタオルケットに身をくるみ、寝転びながらしくしくと泣いていた。

「ごめんな、ごめんな、ごめんな……」

 会ったこともない“幽霊のお姉さん”に謝っていた。

 まだ、何もしていないことを。

 タオルケットの端を涙で湿らせて。


 やっぱり、ボクはボクなりに、なんとかしてあげたかったんだろう。





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