表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強のキョウダイ  作者: ジータ
第一章
77/309

第76話 孤立した村32 癖を読む

誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。

 リリアが謎の少女と戦っていたちょうどその頃、ハルトとワーウルフの戦いもまた激化していた。防御をかなぐり捨てたワーウルフはハルトに斬られながらも攻撃を止めない。

 引けば負けると思ったハルトも傷つきながら攻撃を止めない。二人の体は傷を増やしながら、もつれあうようにして部屋中を動き回る。

 その最中、戦っていたからこそハルトは感じていた。ワーウルフの動きが先ほどまでよりも少しずつ速くなっているということを。そして逆にハルト自身は少しずつ動きが鈍っていた。体力の限界が近づいているということもあったが、何よりも【カサルティリオ】に魔力を吸われ過ぎていた。

 このままではまずい、そう思いつつも思うようには動けない。焦りがハルトの心に募っていく。それに気づいたリオンが注意を飛ばす。


『おいハルト、焦るでない。焦りは隙を生む』

「そんなのわかってるよ!」

『わかっているなら落ち着くのじゃ』

「わかってるけど……」

「考え事をしているなよ《勇者》! 隙を見せれば貴様を喰らうだけだ!」

「このっ」


 詰めてきたワーウルフを剣で押し返すハルト。いよいよを持って余裕が無くなろうとしていた。

 それを見ていたリオンはしょうがないかと、イルに向かってロックゴーレムの時と同じようにイルに話かける。


『おい、イル。聞こえておるか?』

「な、なんだよいきなり」


 ハルトとワーウルフの戦いを目で追うことで精いっぱいだったイルは突然声を掛けられたことに驚いてしまう。


『騒ぐな。ただの念話じゃ。それよりも聞きたいことがあるのじゃ』

「なんだよ」

『お主、あと何発魔法を撃てる?』

「……さっきのでほとんど打ち止めだよ。頑張っても、カスみたいな威力の魔法が後一回撃てるかどうかってところだ」

『なるほどの……まずお主に伝えておくが、悔しい話じゃが。このままでは妾達は負けるじゃろう。このワーウルフ、思ったよりも強かったようじゃ。いやはや、予想外というやつよ』


 負けてしまうとは言いながらも、どこかリオンの声音は楽観的だ。

 しかしそれを聞いたイルは楽観的ではいられない。ハルトの負けというのはすなわち命を失うということだし、そうなれば次に殺されるのはイル自身なのだから。


「どうすんだよ!」

『騒ぐなと言っておるじゃろう。負けるのはあくまでこのままであったら、の話じゃ』

「どういうことだ?」

『あと二発じゃ。二発魔法を放て。妾達が隙を作る。合図を出したら魔法を放つのじゃ』

「あと二発って、一発も厳しいって言っただろ!」

『それはお主の魔法効率の悪いせいじゃ。妾の見立てでは二発は十分な威力のものを放てるはずじゃ。できぬなら……負けるだけじゃな。もう猶予はない。準備しておくのじゃぞ』

「あ、おい!」


 それっきりリオンからの念話が途絶える。そしてイルの目の前では依然としてハルトとワーウルフの戦いが繰り広げられている。様子を見る限り、ハルトが押されているのは確かなようだった。


「できなきゃ負ける、か。あぁもうわかったよ、やってやる!」


 魔力を使い過ぎて最早クラクラとしているが、体内に残った魔力を必死にかき集める。


(魔力効率が悪い? じゃあどうしろっててんだよ。あいにくだが、オレは魔法の扱いはそこまで得意じゃねぇんだよ)


 無駄を省く。そのためにイルは目を閉じて自分に意識を集中させる。ロックゴーレムの時に放った【ホーリーランス】の魔法。確かに、注ぎ込んだ魔力に対して、威力が足りないという気はしていたのだ。


(たぶん、オレが使った魔法は威力が拡散していたんだ。だから威力が分散して、注いだ魔力に対しての破壊力が足りてなかった。あれと同じ威力でいいなら……もっと削れるのか?)


 【ホーリーランス】を放つために魔力の掌に集めるイル。散ろうとする魔力を逃がさないように意識しながら魔法の準備を進める。必要なのは二発。右の掌だけでなく、左の掌にも魔力を集め始める。疲労を訴える体がもう無理だと、限界だと訴える。額に汗が滲み、魔力が足りなくなっているせいか頭はガンガンとしていた。それでも集中力を切らさない。やがて、イルの手の中で魔法が完成し始める。


(はは、なんだよ。やればできんじゃねぇかオレ。あぁでも、これ……相当キツイな。早くしてくれよハルト、リオン)


 苦痛に表情を歪ませながら、イルはリオンからの合図を待ち続けた。





 そして、イルの魔法の準備が整い始めたことを確認したリオンはその隙を作るための準備を始める。


『聞こえておるかハルト。あぁ、返事はせんでもよい。ただ聞くのじゃ。今、イルが魔法の準備をしておる。で、あるからして妾達は隙を作らねばならん。その隙にイルの魔法をワーウルフに当てる。奴の肉体ももはや無傷というわけではない。今であればワーウルフにも効くであろうからな。そのためにまず動きを止める。足を狙うのじゃぞ。いいな』


 一方的に言い放つリオン。それが簡単できたら苦労はしないと文句を言ってやりたいハルトだったが、今はその余裕もない。勝つためにやるしかないと思ったハルトは、ワーウルフの足を止めるための手段を考え始める。

 その時、不意にハルトの脳裏をよぎったのはリリアとの鍛練のことだ。敵の癖を読むということ、そのためにしっかり観察しなければならないとリリアは言っていた。今ハルトはかろうじてではあるが、ワーウルフの攻撃を防げている。それは何故か。どこからワーウルフが攻撃してくるかをなんとなくではあるが予想できているからだ。ハルトは自分でも気づかないうちに、完璧ではないがワーウルフの癖を読んでいたのだ。

 ワーウルフの攻撃はハルトの隙をつこうとするものが多い。右の警戒を緩めれば右から、左の防御がおろそかになれば左から。確実に殺すということを目的としているせいか、隙を狙う攻撃がワーウルフには沁みついていたのだ。


(隙を狙われる……隙を作る? 今の【カサルティリオ】に強化された状態のボクなら、わざと隙を作ってから対応できるはずだ)


 そう決めたハルトは、隙を作るチャンスを伺う。そして、ハルトはわざと足を滑らせた。ワーウルフはハルトの考えに気付くことなく、ハルトの作り出した隙に引っかかってしまった。

 爪を突き出すワーウルフ。しかしその攻撃を予期していたハルトは空中で身をよじり、微かに切り裂かれながらも攻撃を避けたハルトは、今度は逆に隙を晒したワーウルフの足を狙って剣を振る。


「なんだとっ!」


 身を引こうとするワーウルフ。しかし間に合わない。ハルトの剣は狂いなくワーウルフの足を切り裂いた。足を斬られたことで体勢を崩すワーウルフ。

 

『今じゃイル、撃て!』

「敵を打ち払え——【ツイン・ホーリーランス】!」

「ぐわぁあああああっ!」


 イルの両手から放たれる【聖魔法】。それは狂いなくワーウルフに直撃する。傷ついた体に魔法は流石に堪えたのか、苦悶の叫びをあげるワーウルフ。


『ハルト、今じゃ!』

「終わりだ——『地砕流』!」


 ハルトの全力の一撃がワーウルフに直撃する。ハルトの手にも確かな手ごたえがあった。ハルトの攻撃をもろにくらったワーウルフは吹き飛び、壁にぶつかり、派手な土煙を上げた。


「……倒した?」

「勝てた……のか?」


 少しの沈黙の後、ハルトとイルが呟く。

 少しずつ土煙が晴れていく。するとその向こうに立っている人影が見えた。


「クハ、クハハハハハッ!」

 

 土煙の向こうから聞こえる哄笑。やがて土煙が完全に晴れた直後、そこには変化が解け、シアの姿に戻ったワーウルフが立っていた。


今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

ブックマーク&コメントしていただけると私の励みになります!

それではまた次回もよろしくお願いします!


次回投稿は5月6日21時を予定しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ