第30話 ゴブリン達との戦い 前編
29話のタイトルを変更しました。内容は特に変わってません。ややこしくて申し訳ないです。
誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。
戦う覚悟を決めたリリア達は逃げるのをやめ、それぞれの武器を手に握る。
リリアとハルトが剣、タマナが杖だ。
「いいハル君、無理だと思ったらすぐに逃げなさい。私もゴブリンキングとゴブリンメイジを相手にするとなったらハル君のことを助ける余裕は無いわ」
「わ、わかった」
初めての実戦ということで若干声に緊張を滲ませたハルトがリリアの言葉に頷く。
リリアもゴブリンキングと戦うのは初めてのことなので最大限に警戒している。冒険者ギルドの定めたゴブリンキングの討伐難易度はA級。ゴブリンメイジの討伐難易度はB級だ。A級の難易度は簡単に言ってしまえば精鋭の騎士が十人がかりでようやく勝てるかどうかといったレベルだ。普通に考えればリリア一人には荷が重い。しかし、それでもやるしかないのだ。ハルトを守るために。
「かかってきなさい」
ハルト達がゴブリンと交戦を始めたのを確認したリリアは意識を目の前のゴブリンキングとゴブリンメイジに集中させる。
「ゲギャギャ!!」
「ギャッ!」
ゴブリンキング達がたった一人で立ち向かおうとするリリアのことを見て小馬鹿にしたように笑う。しかし、それを見てもリリアは表情を全く変えない。むしろ侮ってくれるだけありがたいと思っていた。
(最初から全力で行くしかない……姉力を、解放する!)
ゴブリンキング達に出し惜しみしている余裕はないと思ったリリアは、自分の中に眠る姉力を一気に開放する。それだけで先ほどまでとは比べ物にならない力がリリアの中に満ちる。
「一気に片付ける!」
姉力を足に集中させたリリアは一息でゴブリンキングの懐へと潜り込む。
「幻影剣!」
リリアが振るうのはザガンの使った幻影の剣だ。上段から振り下ろすのはフェイク。本命は下段からの斬り上げだ。本命の剣閃は姉力で覆い隠し、上段から振り下ろすと見せかけるリリア。しかし、その一撃はゴブリンキングに僅かに傷をつけるにとどまる。
「っ!」
「ゲギャッ!」
思いもよらぬ所からの一撃を受けたゴブリンキングは、そこで初めてリリアに対して警戒心を抱き、ゴブリンメイジに何かを命じる。するとゴブリンメイジが何か呪文のようなものを唱え、ゴブリンキングの体が光に包まれる。
(ゴブリンキングの傷が治った……今のは治癒の魔法? まさかそんなものまでゴブリンメイジが使えるなんて。今の一撃でゴブリンキングを仕留められなかったのはまずかいもしれないわね。力を上手く調節できなかったせいでギリギリで攻撃がバレたみたいだし……幻影剣はもう使えない)
リリアの攻撃が上手く決まらなかったのは姉力の力を制御しきれなかったからだ。魔力ほど繊細に扱えないせいで、剣閃を上手く隠すことができずにバレてしまったことに加え、思った以上に踏み込んでしまい剣閃がブレてしまったのだ。
(せめて魔力と併用して使えたら……なんて言ってても仕方ない)
リリアは剣を握りしめながら油断なくゴブリンキングのことを見る。ゴブリンメイジはゴブリンキングの傍にいながら杖を構えて呪文を唱えている。そしてその視線の先にいるのはハルト達だ。
「それは許さないわよ!」
呪文の邪魔をしようとゴブリンメイジに肉薄するリリア。杖ごと叩き切ろうとするが、その前にゴブリンキングが割って入りリリアに剣を受け止める。
「ちっ」
「ギャギャギャ!」
「この……邪魔するなっ!」
押し切ろうとするリリアだが、想像以上のゴブリンキングの膂力にそれもできない。むしろ気を抜けばリリアの方が押し切られそうな勢いだ。
「くっ……」
このままではまずいと思ったリリアはゴブリンキングの持つ剣を弾き、距離を取る。しかしゴブリンキングはそれを見越していたかのようにリリアのことを追いかけ、横なぎに剣を振ろうとする。
リリアはゴブリンキングの攻撃を受け止めようとした。しかし、その直前で脳が警鐘を鳴らし、受け止めるのをやめてその場から飛び退く。その直後、リリアのいた場所を通り過ぎる剣。それは横なぎの軌道ではなく、まっすぐな突きであった。
「まさか……幻影剣!? 一度見ただけで覚えたっていうの」
驚きに声を震わせるリリア。ゴブリンキングはただ一度見ただけでリリアの使った技を覚えたのだ。そして、この理解力と成長速度こそがゴブリンキングがA級の討伐難易度に設定されている所以である。
「やってくれるじゃない」
「ゲギャギャギャ!」
そこから始まるのはゴブリンキングのリリアに対する熾烈な攻撃の嵐だ。姉力を解放しているリリアですら防戦一方になってしまう。
そして、リリアがゴブリンキングに抑え込まれているうちにゴブリンメイジが呪文を完成させる。
そしてゴブリンメイジの前に大きな魔法陣が現れ、その中心から大量のゴブリンが現れた。その数はゆうに三十を超える。
「まさか召喚術!? ハル君、タマナさん、後ろに気を付けて!」
咄嗟に注意の言葉を飛ばすリリアだが、ハルト達は複数のゴブリン達と戦うことに集中していてゴブリンメイジがゴブリン達を召喚したことに気付いていない。
そして、ゴブリンメイジはゴブリン達を召喚するだけでなくさらにハルト達に向けて呪文を唱えている。魔法の知識が足りていないリリアにはそれがどんな呪文かわからなかったが、どんな呪文にせよハルト達をさらに追い詰めるものであることには違いない。
焦るリリアはハルト達の元へ行こうとするが、ゴブリンキングに邪魔させてそれすらできない。
そうして手間取っている間に、ゴブリンメイジは呪文を唱え終えてしまう。そこから放たれたのは炎の魔法だ。その魔法は一直線にハルト達の元へと飛んでいく。
「ハルく、ハルトォオオオオオオオオオオッ!!」
リリアの悲鳴のような叫びが森の中に響き渡った。
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次回投稿は3月3日18時を予定しています。




