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最強のキョウダイ  作者: ジータ
第一章
30/309

第29話 ゴブリンの巣 後編

誤字脱字がありましたら教えてくれると嬉しいです。

 ゴブリンの巣の目前までやって来たリリア達が目にしたのは、コボルドを一方的に虐殺するゴブリン達の姿だった。

 しかし、それは普通であればありえないことであった。ゴブリンとコボルドの戦闘力に大きな違いはない。両種族が戦えば、どちらも大きな損耗は免れない。だからこそ普段は戦うことなくお互いの縄張りを犯さないように生活しているのだ。

 

「これは……」

「酷い……」

「えぇ確かに酷い光景。でもハル君、これが戦いというものよ。魔物と戦うって言うのはこういうことなの」

「……うん」

「でも、今回のこれはおかしいかな……ゴブリン達がここまで強いなんて」

「もしかして……上位種ですかね?」

「その可能性もあるかもしれません」


 この常識外の光景を目にしてリリアとタマナの二人が考えた可能性、それが上位種の存在であった。


「上位種?」

「えぇ。魔物の種族によっては上位種が存在することがあるわ。特にゴブリンは多くの上位種が存在することで有名なの。もしここに上位種がいるとしたなら……一度引く必要があるかもしれないわ」

「そんなに強いの?」

「普通のゴブリンよりははるかにね。そして、他のゴブリンを強化できる可能性があるのは……【ゴブリンメイジ】。魔法を使えるゴブリンよ」

「もしゴブリンメイジがここにいたなら私達の手に負えるものではないかもしれません。上位種が一匹いるだけで討伐の難易度は格段に跳ね上がりますから」

「それじゃあ今は何もせずに帰るの?」

「いい、ハル君。戦うことにおいて情報というのはとっても大事なの。知らなければ思いもよらぬことで危機を招くかもしれない。ハル君がこれから《勇者》として戦うなら覚えておいて。情報の収集は怠らないこと。危ないと思ったら引くのも一つの方法として入れておくということを」

「……うん、わかったよ」

「それじゃあせめてどのゴブリン上位種がいるかだけでも確認したいんだけど……あの町長、まさか知ってたなんてことないわよね」

「あはは……まさかそんなことないですよ。きっと」

「だといいんだけど……あ、静かに。洞窟の奥からなにか出てくるわ」

「「っ!」」


 リリア達が話している間に、ゴブリン達がコボルドを殲滅し終える。その後、洞窟の奥から大きな気配が外へと出てくるのを感じる。

 リリアが険しい目で洞窟から出てくるゴブリンの姿を見つめる。そのゴブリンは他のゴブリンとは違い、ローブを身にまとい、杖を持っている。それはリリア達の予想通り、【ゴブリンメイジ】の特徴と一致するものだった。


「やっぱりゴブリンメイジでしたね。このことを早く町長さんに伝えて対策を——」

「ちょっと待って」

「どうしたんですか?」

「他にも気配があるわ」


 洞窟の奥から出てきたゴブリンメイジ。そのゴブリンメイジからも大きな力を感じる。しかし、それ以上の力をリリアは洞窟の奥から感じるのだ。とてつもない嫌な予感と共に。

 その直後のことである。リリアの嫌な予感が的中する。


「そんな……」

「あれは……」


 ゴブリンメイジに続いて奥から出てきたのは薄汚れた王冠をつけ、一振りの大きな剣を持ったゴブリン。その特徴を持つ上位種はたった一つ。【ゴブリンキング】である。


「ゴブリンキング……」

「まさかあんなものまでいるなんて……」


 タマナが恐れを含んだ声音で呟く。


「あんなものまでいるとなったらとても三人では無理よ。見つかる前に引きましょう」

「そ、そうですね」


 目の前ではゴブリン達が殺したコボルドに群がり、勝利の雄叫びを上げている。

 見つからないようにそっと引き下がろうとするリリア達、その途中でのことである。パキリとタマナの足元から小枝が折れる音がする。


「ゲギャッ!」

「っ!? 走って!」


 その音にいち早く反応を示したのはゴブリンキングである。気付かれたことを察したリリアはハルトとタマナに走るように命じる。


「ゲギャギャギャギャ!!」


 ゴブリンキングがリリア達のいる場所を指さすと、その他のゴブリン達が一斉にリリア達の元へと走って来る。


「ひぃいいいいいっ!」

「っ!」


 必死に走り続けるリリア達。しかし、森の中を走るということにかけてはヒトよりもゴブリンの方が速い。ゴブリンとリリア達の距離はどんどん縮まっていく。


「まずい……」

「リリアさん、あ、足が……もう」

「姉さん、このままじゃ追い付かれる!」


 もともと走ることが得意ではないタマナは逃げ切る前に限界を迎えてしまう。このまま走っても逃げきれないということを悟ったリリアは腹を括る。


「戦うしかないわ」

「えぇ!」

「このままじゃ逃げきれない。体力のあるうちに戦うしかない。ゴブリンキングとゴブリンメイジさえ倒すことが出来たら残りのゴブリンはどうにでもなる。やるしかないわ」

「うぅ……わ、わかりました!」

「ハル君は普通のゴブリンの相手をお願い。私がゴブリンキングとゴブリンメイジをおさえるわ。タマナさんはハル君のサポートを」

「そんな、姉さん一人なんて無茶だよ!」

「無茶でもやるしかないの。大丈夫よ。私、お姉ちゃんなんだから。信じなさい」

「……わかった」

「私も腹を括りました! やります! やってやりますよ!」


 タマナも気合の入った返事を返す。


「それじゃあ……行きましょう!」


 武器を握りしめたリリア達は振り返り、ゴブリン達との戦いが始まった。



今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

ブックマーク&コメントしていただけると私の励みになります!

それではまた次回もよろしくお願いします!


次回投稿は3月2日18時を予定しています。

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