第19話 リリアvs騎士 前編
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アウラから衝撃的な事実を聞いた数分後。服を着替えたイルがマリナに連れられて戻って来る。
昔リリアが着ていた服を着ているイル。そのいかにも女の子らしい姿を見て、元男ですと言っても信じる者はいないだろう。
イルは男だった時とは反対にとても小柄で、ハルトと同い年だとはにわかには信じがたい風貌をしていた。笑えばたいそう可愛らしいであろうが、今その顔は不機嫌そうに歪んでいた。
「なんだよ」
「いや、その……君、あの時の?」
「だからそうだって言ってんだろうが。見てわかんねーのかよ」
「いやわからないよ。あの時の君はそんなに小さくなかったし、何より……男だったし」
「ぐっ……くそ、なんだってこんなことに」
悔しそうな顔をするイル。その様子を見ても女の子が悔しがっているようにしか見えない。
「それじゃあイルも戻って来たことですし、話の続きをしましょう。イルも座って」
先ほどアウラとリリアに睨まれたことが応えているのか、嫌そうな顔をしながらも何も言わないイル。
「この子は《神宣》の時にある《職業》に選ばれました。それが私と同じ《聖女》の《職業》です」
「《聖女》? この子が?」
「はい」
「とてもそんな風には見えないけどね」
「ですが事実です。この子は《神宣》の時に《聖女》に選ばれ、女性になった」
「どうして?」
「それは私にもわかりません。そもそも男性が《聖女》に選ばれたことなどありませんから。前例が無いのです」
これに関しては神殿の側も対応に困った。しかし、《聖女》として選ばれたのだからそのように扱うしかないということになったのだ。
「あれから一週間、元に戻る気配もなく、ならばということで女性としての生活の仕方を教えているのですが……成果はご覧の通りです。情けない話ですが」
「いきなり女らしい生活しろなんて言われてできるわけねーだろ。オレは男なんだからな」
「ですが元に戻れない以上慣れていくしかないでしょう。それにあなたのお父様は——」
「うるせぇ!」
「……そうですね。今この話は関係ありません。それでは本題に入りましょう。単刀直入に聞きます。ハルト君、《勇者》として《魔王》の討伐に行っていただけますか?」
声に緊張を滲ませながら問いかけるアウラ。それも無理はないだろう。ここでの返答次第でこの後の行動が大きく変化するのだから。
そして、問いかけられたハルトもまた緊張に満ちた表情をしていた。行くことは決めている。しかし、行くと言ってしまえばもう後戻りはできない。それがわかっているからだ。
それでもハルトの決断は変わらなかった。
「ボクは……行きます。《勇者》として《魔王》の討伐に」
「本当ですか!」
「はい。ちゃんと考えて決めました。ボクがどこまでできるかはわからないけど、できることはしたいですから」
「ありがとうございます」
ハルトの答えを聞いてホッとした様子のアウラや騎士達。場合によってはハルトを説得するために時間を使わなければいけないかもしれないと思っていたアウラ達からすればハルトの答えは僥倖であったと言えるだろう。
「そんな、お礼なんていいですよ」
「これからあなたには多くの苦難が待ち受けることでしょう。ですがハルト君ならば乗り越えられると私は信じています。これから共に頑張っていきましょう」
「はい。頑張ります!」
「それではこれからについての話を」
「ちょっと待って」
それまで黙っていたリリアが会話に割って入る。
「どうされましたか?」
「私はハル君の意志を尊重したいから、《魔王》討伐の旅に行くのは認めるわ。でも一つだけ条件がある」
「条件……ですか?」
「私もついて行くわ」
「えっ!」
「ダメだって言うの?」
「そういうわけでは……」
アウラの本音を言うならば反対だ。《魔王》の討伐というのは簡単なことではない。《勇者》を除いて対抗できる手段がほとんどないのが現状なのだ。以前アウラはリリアの職業が《村人》だということを聞いた。《村人》は戦闘に向いたスキルをほとんど得ることができない《職業》だ。危険な《魔王》討伐の旅に行くことは自殺行為に等しかった。そんなことをアウラが認めるわけにはいかない。だというのに、それを素直にそれを口にできないのは以前見たリリアの力が気にかかっていたからだ。ただの《村人》がまがりなりにも《騎士》であるホークを倒したのだ。そこに何か秘密があるようにアウラは感じていたのだ。
「私の実力が心配と、そう言いたいわけ?」
「あなたがただの《村人》であるというならば、その通りです」
アウラの妙な言い回しに、《職業》について疑われているということに気付くリリア。しかし、この場で本当の《職業》について話すわけにはいかない。ならばリリアのとれる行動は一つだけだった。
「……じゃあこうしましょう。あなたの連れてきた騎士と戦うわ。それに勝てば満足でしょう」
「なっ」
このリリアの言い方に腹を立てるのは騎士達だ。今ここにいるのは厳しい訓練に耐え、アウラを守る任務を請け負った騎士達だ。《村人》に負けることなどありえないと思っていた。
しかしアウラは違う。この間のホークを見ていたから。そして、もう一度その戦いを見ることができれば何かわかるかもしれないと考えた。
「なるほど。その条件を呑みましょう」
「アウラ様っ!」
「すいません。ですが必要なことなのです。どうかお願いできませんか」
「……アウラ様がそこで言われるのであれば。しかし我らとて《騎士》としての誇りがあります。手加減はできませんよ」
「だ、そうですが。構いませんね」
「もちろん」
そしてリリアは、アウラの連れてきた騎士と戦うこととなった。
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次回投稿は2月14日21時を予定しています。




