試合!
『四宮さん。どんなトスほしい?』
チームのセッターの女子が鈴子に聞いてきた。
『え?ええと…なるべく高いトスかな。叩きつけたいし、高く飛ぶから!』
『うん!わかった!』
鈴子は助走を多めにとるため、高いトスがほしいのだ。
『とりあえず、アタッカーよろしくね!』
もう一人の女子にそういわれる。
その時に審判の笛がなった。サーブは葵のチーム。
サーブを打つのは葵だった。
『来るよ!葵ちゃんのサーブは気をつけて!』
ビーチボールバレーのサーブは上からは打てないのですべてがアンダーサーブになる。葵はボールのつばを左に向けた。
『ふぅ…』
葵は深呼吸をして、全力でサーブを打った。
サーブはものすごい回転で鈴子の方に向かっている。
『私だって…レシーブ出来る!』
鈴子は落ち着いてサーブをレシーブした。そのままセッターのところにボールを回した。
『はい!』
鈴子はすぐにボールを呼んだ。
『四宮さん!』
鈴子にボールが行った。
『ドンピシャ!』
鈴子は高く飛び、全力でスパイクを打った。ブロックの頭を抜ける高い位置から放たれるボールは、葵に向かっていた。
『葵!』
(私は止める!なぜなら、元リベロだから!)
葵は完璧にレシーブした。
鈴子のスパイクを取った葵はものすごい嬉しそうだった。
『初めて…初めて四宮さんのスパイク取れたぁ!!』
そう、葵は鈴子のスパイクをレシーブしたことがないのだ。取れたときの嬉しさはものすごいだろう。
『葵!そのまま!』
愛結からのトスが来る。
(どうくるの?島田さんの場合は…フェイント?それとも…ブロックアウト?)
『いっけぇ!』
葵は鈴子の選択肢にないスパイクを選択した。それも、鈴子に向かって打った。反応できなかった鈴子はレシーブを失敗してしまった。
『なっ…』
『どうだ!』
葵はどや顔で鈴子を見た。鈴子は予想を越えた選択でビックリしていた。
『…やるじゃない!』
しかし、すぐに切り替えた。鈴子の度胸は一人前だった。
そのつぎの葵のサーブは大きく外れてアウトになった。
『ごめーん!』
『ちょっと!ちゃんとやりなさいよ!』
彩香がそれに反応し、しっかり注意した。
次のサーブはセッターの人であった。
普通のサーブをうち、セッターである愛結を狙った。もちろん愛結はそれをレシーブした。そして、
『私の出番じゃない!』
そのレシーブを彩香に回した。そのまま彩香は全力でスパイクを打った。
(ツーアタック!?)
鈴子はレシーブした。
しかし、思わぬ行動でセッターからボールが離れてしまった。
『お願い!』
他のアタッカーにトスを回した。
そのままスパイクを打ったが葵がしっかりレシーブをした。
これで2-1。葵チームの優勢である。
『ごめん。ボール変なところに飛んじゃったね』
『ううん!大丈夫!むしろツーアタックによく反応したよ。』
鈴子は悔しい気持ちでいっぱいだった。
『次はもっとレシーブしてやるから!』
鈴子は大声で言った。
『…やっぱり』
葵はそれを見てそう言った。