勝ちたい!
体育の授業になった。準備体操もしっかり行い、コートを作って、試合形式の授業が始まろうとしていた。
『ルールは15点マッチでいい?これがビーチボールバレーのルールだから』
『わかったわ』
葵の問いかけに鈴子は答えた。
葵のチームはビーチボールバレーを一緒にやっていてチームを組んでる人達で構成されている。
鈴子のチームはビーチボールバレーをやったことはあるが、チームや実践経験が薄いチームで構成されている。この時点で差があった。それだけでなく、鈴子はビーチボールバレーは初心者だ。今の差をゲームで表すと、CPUのレベル5がレベル9に挑むぐらいの差がある。
しかし、鈴子はそれでいいと答えた。
『島田さんの実力見せてもらうわよ?』
『うん!次は絶対スパイク止めるから!』
鈴子は葵の実力が気になっていた。リベロだった人間がビーチボールバレーというスポーツのなかでどれだけ戦えるのかが。
『葵、なんであの子を誘ったの?』
『鈴子のこと?うーん…うちのチームはスパイクの威力が高い選手が少ないからかなぁ…だから、全国ナンバーワンスパイカーを入れたいの』
『そんなの、私と彩香でいいじゃない!』
『やっぱり愛結は頭固いなぁ。それじゃあ全国行けないよ?二人は姉妹で、意志疎通が出来るだろうけど』
彼女達は、天野愛結と彩香。姉妹である。
二人はビーチボールバレーを小さい頃からやっていて、チームを組まないかと葵に誘われた。二人は意志疎通が出来るため、チームプレイがすごくうまい選手である。そこをみられて誘われたのだった。
『いいじゃん愛結。私達は私達のいいところを出せばいいのよ』
『…そうね』
『葵は勝ちたいの?』
『勝ちたいよ!だって四宮さんがチームに入ったら、私達の全国出場は夢じゃないよ!』
『わかったわ。なら全力で協力してあげる!』
彩香は葵の真剣な表情を信じた。もちろん、彩香だって全国大会に出たいのだ。
『まあ、俺は適当にやらせてもらうぞー』
このチームには一人男がいた。
『ごめんね俊介。巻き込んじゃって』
俊介は葵の幼なじみである。ビーチボールバレーも彼から教わっていた。
『気にすんな。いつものことだろう?』
『うん。ありがとう』
葵は俊介に頭を下げた。その姿を見た俊介は頭を上げさせた。いつものことだからなれたのであろう。
『勝ちたいのなら、俺も全力で行くぞ!』
そう言って俊介はVサインをした。
『整列!』
先生の声が聞こえる。
『これから、四宮チーム対島田チームの試合を開始する!』
試合が始まろうとしていた。