葵の挑戦
『はぁ?』
鈴子は葵のお願いが真剣なことにびっくりした。葵は話を面白くするために、よくふざけた質問をしていた。だから今回もふざけたものと感じていたらしいが、真剣な質問であったのだ。
『ビーチバレーって、あの浜辺でやるバレーのことでしょ?』
『違うよ!』
鈴子の質問を葵は否定した。
『じゃあ、どんなバレーよ!』
鈴子は強めに葵に質問した。
『ビーチボールでバレーボールをするの!ネットの高さは低いし、コートは狭い。だから、四宮さんのジャンプ力とスパイカーとしての実力を見てお願いしてるの!』
『あなたが私のなにを知ってるのよ!』
鈴子は強く言い返した。
『知ってるよ!』
葵も負けじと強く言い返した。
『だって私、決勝の相手のリベロだもん!』
そう、葵は中学バレーボール全国大会決勝で戦ったリベロだった。鈴子のスパイクを止められずに決勝はボロ負け。
彼女はそのトラウマからバレーボールをやめざるを得なかったのだ。
『だから、あなたのスパイカーとしての実力は知ってる!だから、入ってほしいの!』
葵は鈴子の目をしっかり見ていた。その目から嘘は感じられなかった。
『でも…私はバレーをしたくない…』
鈴子は目をそらして答えた。
『…わかった。なら、勝負しよう!』
『勝負?』
葵はその真っ直ぐな目で鈴子を見つめながら言った。
『今、体育の授業でビーチボールバレーしてるんだ!それで勝負しようよ!』
『…わかったわ…乗ってあげる…』
鈴子は葵の目をしっかり見ながら不安そうに答えた。