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7、タレか塩か

 決戦当日。私は意を決して読書家を晩御飯に誘った。もちろん、焼肉屋さんに連れて行こうと思った。

「ねぇ、今日放課後晩ごはん一緒にしない?」

「あ、ごめん。今日は空いてなくて」

「じゃあ明日は?」

「明日もちょっと……」

 どうも態度が煮え切らない。何か隠し事でもあるのだろうか。

「焼肉だよ? 焼肉嫌いなの?」

ところが読書家はそれでも興味を示さない。男子高校生が焼き肉を嫌いな訳がない。私はそう思っていたので渋るのが不思議だった。

「ごめん、肉はちょっと」

「どういうこと?」

「俺、ビーガンだから」

「ビーガン?」

 聞き慣れないその言葉に一瞬フリーズした。

「ベジタリアンみたいな。完全菜食主義っていって、肉とか魚とか乳製品とかは食べないんだ」

「へ、へぇ」

 草食系男子なんだね、本当に。そこからは延々と屠殺がいかに残虐か、ビーガンになってどんなメリットがあるのか説明してくるけど、全然耳に残らなかった。肉食の否定は焼肉を否定することであり、焼肉少女である私の否定でもある。これはショックだった。

 恋愛において、本能的に真反対の人を探すはずだから読書家ともいつかは相性が良くなると期待していたが、真反対すぎて、これ以上は無理だと悟った。やはり王道の趣味や価値観が合う者同士で付き合うほうが良いのかもしれない。私の告白は告白の前段階から大きく崩れ去った。


 キン肉マンとはもう疎遠になってしまったし、読書家のビーガンとは価値観が合わない。どうも恋というものは相互関係で成り立っていて一向に進展しない、じれったいものである。

 3人のうち2人とはうまく行かなかった。結局残ったのは元転校生の伊藤くん。転校生は転校生なんだけど、もうすでにクラスに溶け込んでるし、転校生であるアドバンテージはもう無い。伊藤くんとは隣の席同士であるが仲が特別良いわけでも悪いわけでもない。ちぃちゃんみたいに付き合ってから好きになるパターンもあるから、きっかけを作ってみてもいいかもしれない。幸い、伊藤くんは失礼だけどモテそうにないし、実際周りには男友達しかいない。チャンスではある。運命かどうかは知らないけど、あの日の思い出という弱いながらもちょっとしたアドバンテージが自分にはある。

 ということで、急遽ではあるが、読書家に行う予定だった告白の相手を伊藤くんに切り替えることにした。

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