開花前の日常④
ああ、妹のパンツを見てしまった。背徳感が凄まじい。罪悪感が凄まじい。
いやー。俺今日殺されるかな。包丁でグサグサと。
そんでその次に[自己規制]。
ほんとなんて言い訳しようかな。
「はぁ〜」
「どうしたの、たくちゃん」
俺の隣の席の女神は優しく語りかけてきた。ああ、女神様。
「懺悔をお聞きください」
「ざ、懺悔?」
「いや、なんでもない」
なんだ今の。ほぼ無意識に恵を女神と仮定していたぞ。
「朝はその…………ごめんね」
おそらく、朝の騒動のことを言っているのだろう。恵は凄く申し訳なさそうに顔を歪めている。
「いいよ別に。恵は悪くないし、恵の顔が可愛すぎんのがいけないんだし」
「か、可愛い?」
「あ、ああ。うん。そうだけど」
頬を赤く染めた恵がモジモジとしていた。どうしたんだ一体?何か悪いものでも食べたのか。
そんなことを考えて、俺は必死に自分の言った超恥ずかしい言葉を忘れようとしていた。
その時。
「よう!お二人さん!」
俺の席の後ろ、そこから陽気な声が飛んできた。金髪でやけにチャラそうなチャラチャラした男だ。
「今日も相変わらず仲良いね」
「えへへ…。そう?」
「おう!」と返事を返すのはクラスカースト上位に君臨する猛者、久瀬隼人。それと同時に中学校時代からの友達であったりもする。
相変わらずチャラチャラオーラ出しやがって。眩しすぎんだわ、これが。
「久瀬くん……きゃあああああああ!」
悲鳴とも間違えてしまうほどの絶叫。それが起点となり久瀬のところに女子たちが殺到する。無論その近くにいる俺はパチンコ玉のように軽くぶっ飛ばされる。
みんな俺の扱いが雑なんだよね。丁寧に扱ってほしい。まあ、近くにいるのが、女神とチャラ男だから仕方ないとは思うけどさ。
「その服おしゃれだね、どこの?」
「私ですか?ええっと……Z◯R◯です」
こんなことを気兼ねなく言える隼人すごすぎ!尊敬するわ。『恵の顔が可愛いすぎるのがいけないんだし』ああああああああああああああああああああああああああああああああ!!
ごめんなさい。忘れさせてください。
「たくちゃんどうしたの!そんな苦しそうに………」
「あぁ、恵。俺ちょっと過去の俺をしばきに行きたいからしばらく頼んだ」
「ああ!行かないで。たくちゃん行かないで!」
何、この子?!純粋なの?純粋なの?
「大丈夫どこにも行かないから、とにかく離れてくれ」
そう言って俺は俺に抱きついて離れない恵に嘆きの言葉を送っていた。
その時周りの目線はというと(特に男子)。
「チッ!(嫉妬)」
「チッ!(嫌悪)」
「チッ!(悪意)」
「チッ!(殺意)」
ああああ!怖い!めっちゃ怖いんだけど!
特に最後のやつ。
「いいから離れて!周りの目線が怖いから離れて!俺死んじゃうから離れてええええ!」
そんな叫びは虚しく、1時間目が始まるまでずっと恵は俺を抱きしめて離さなかった。
♦︎
「転校生の紹介をする。入りたまえ」
紹介を促され私はその教室へと入った。
「私の名前はかわな―――――――神辺香澄です。よろしくお願いします」
しばらくすると拍手がちらほらと上がり始め、最終的には教室を覆っていた。
「神辺さんはそこの席だ」
指された席に私は座る。その時肩をポンポンと叩かれた。そちらの方向を見てみると、髪を染めているイケイケな少年が私に挨拶をしてきた。顔は整っていて、かっこいい部類に入るのだろう、が。
ああ、退屈だ。こんなこと早く終わればいいのに。そうすれば、兄さんに会いに行けるのに。
え?!今何を考えてたの。
ああ、どうしてもう、こんなに兄さんのことばかり考えてしまうの。兄さんは一体、私の何なの?
次は四時です