デート大作戦(仮)!
そして、この度も遅れてすいませんでした!(限界越えの土下座)
少し、私の過去話をしよう。
私これといって何もない、普通の家庭に生まれ出た。稼ぎも家の大きさも家族で過ごす時間も、なにもかもが普通の家庭で生まれ育って行った。
楽しい思い出を共有して、悲しい思い出を分割して。そんなこんなで生きてきていた。
ただ、私はそれが幸せなことだと気づかなかった。そう、ざらに言う『幸せは失ってから初めてその意味を知る』だった。まさしくそれだった。
私は例外なく、それを感じ取っていた。
ニュースで見た光景。新幹線の脱線事故の光景だった。
"え?あれには母さんと、父さんが、いるはず………"
"え、まさか、まさか、まさか?"
そして、悲しみは津波のように押し寄せてきた。
隣で泣く弟。並べられたパイプ椅子。唱えられていくお経。鼻腔をくすぐる焼香の匂い。飾られた花束。そしてそれの中央に立てかけられた、大好きな家族の写真。
それだけで悲哀と涙は、十分だった。
♦︎
「絶好のデート日和ですね」
「ああ、そうだな!」
恵の声にそう反応する神楽。神楽は一度俺たちの方に向き直るとこう言いかけてきた。
「いいか!私たちの目的はあくまでもいざという時の助っ人だからな!そこを間違うなよ!」
「分かってますよ〜」
と、挑発的な態度をとる香澄。俺は内面それにヒヤヒヤしながらも神楽の言葉を待った。
「……………だが、せっかく来たんだ。ちょっとは遊ぶために今から二手に別れるぞ!遊ぶ側と見守る側を交代でやるからな!」
「「「………」」」
その場にいた全員、香澄、俺、恵は全てを理解してしまった。
「な、なんだ?!なにか言いたいことがあるなら言ってみろ!」
恥ずかしそうに視線を逸らしながら、手をブンブン振っている神楽は正直、可愛い。
俺たち3人は揃ってブンブンブンブンと首を左右に勢いよく振った。
♦︎
「さて、兄さん。遊びますか」
「いや、俺たちが先に助っ人する番だからな」
そんな俺たちの前には箱舟、赤坂さんの姿があった。もちろん、騒いだところで箱舟には顔を知られてないわけだから、バレることはないのだが。
時折、赤坂さんの方から凍てつくような視線を当てられるんですよね。
「そんなの知りません!第1自分の恋路を誰かに預ける方が悪いんです!さあ、デートしましょう。兄さん」
「受けた仕事はちゃんとやらないとな。それにほら、終わってから遊べるし」
「兄さんはそんなに赤坂さんのことが大切さなのですか?」
「なんで、そっちにいく?」
香澄の暗い目は俺を見つめて、そう問いかけて来ていた。
「彼女が1秒でも視界から離れることがそんなに嫌なんですか?」
「いやそんなこと言ってねーよ」
と、返したところでこのモードになってしまった香澄は収集がつかない。よって強引にでも連れていくことが大事だ。
そう思った俺は香澄の腕を掴み、まるで彼氏が彼女のことをエスコートするみたいに引っ張った。
まあ、実際はエスコートなんて生易しいものでないが。
「いくぞ!香澄!」
「へ?兄さん。兄さんからこんな強引に………」
う〜ん。もう否定するのもめんどくさい。
「あれ?赤坂さんはどこに?」
oh! where is Akasaka!
「やばい、まじでやばい」
そうして俺は赤坂さんを探すべく人混みの中へと突っ走っていった。
♦︎
「さきに私たちが遊ぶ番だからな!この瞬間を楽しもうぜ!」
私はそんな神楽さんを見ながら、『あ、さてはこいつ最初からこれ目的で来たな』とか考えていた。
「神楽さん………今日テンション高いね」
「当たり前だろ。だって遊園地で遊べ…………初任務での屋外仕事なんだから!」
一瞬本音が出かかったが、うまく押さえ込んだようだ。でも、やっぱり神楽さんはこの日を楽しみにしてたようで。
とても、良い笑顔をしていた。
「わかりました。精一杯楽しみましょう!」
「おう!恵!」
とは、言ったものの。
こうなることを誰が予想しただろう。
「神楽さん今、どこなんだろう」
なんと、ハイテンション神楽さんが走り回った果てに私が追いつかなくなるや、離れ離れになってしまったのだ。
そうして、私は電話をかけてみる。だが、その返事は来なかった。
充電が切れたのだろうか?でも、電話で探すことはできなくなった。
楽しみすぎて電話に気づいていない可能性もあるが、それならそれでゲームオーバーだ。
「もう、どうすれば」
ふと、横目に見たのは赤坂さんと箱舟くん。
そう、今たくちゃんと香澄ちゃんが助っ人をしているあの二人である。とにかく、合流しようと私はそっちの方向に向かっていく。
だが、そこには二人の姿はなくて。
「ああ」
私はなんとなく自体を察していた。大方香澄ちゃんが仕事を投げ捨てて遊ぼうと言ったのだろう(大体合っている)。
じゃあ、どうするか。
どうせ神楽さんは楽しんでいるのだろうから、まあ最低探さなくても大丈夫だ。
だが、依頼人を助けれない状況にだけはしてはいけない。
仕方ない、ここは。
「私がやるしかないね」
そう言って、私はその二人の後ろに入っていった。
次の話は1週間以内に………




