お風呂のワンシーン
「香澄さん、そろそろ出ても?」
「まだです」
即答で返された。俺の身体が香澄によって隅々まで洗われた。なんとか、最後は死守したが。そうすれば次は「私を触って…………洗ってください」とか可愛い目で懇願してくる。
いや、もちろん断ったけどさ。その度に「兄さんは私に触れたくないのですか?そんなこと、ありえませんよね」と覗き込んでくるのは怖かったな。
そして今は入浴中。もちろん二人でだ。
「熱いな〜、出ようかな〜」
「では冷水を」
「やめて!」
さっきからこの言い訳使おうとしては、冷水を入れられそうになっている。今この状況で湯気様がお亡くなりになれば、視界は明瞭に。そして、目の前に香澄の裸体が見えてしまう。
もちろん、タオルは巻いているが(俺も)。
だが、それでもやはりそれは不健全だ。まだ清い俺には早すぎる。
「香澄窮屈じゃない?」
「いえ。むしろ、兄さんともっとくっつきたいです」
「やめてくれ……」
(切実)
「なんでですか?本来私と兄さんは二人で一つの存在なんですよ?」
なんだ?そのアニメや漫画でありそうなセリフは?
「というか、そのはずなのにですよ?なぜ、今日あんなにたくさんの女どもと喋っていたのですか?」
笑顔が怖いな。そんな笑顔が怖い香澄は俺に手を伸ばしてきて。
「ねえ、なんで、何でなんですか?」
そして頬をがっちりホールド。目線を逃げられないようにしてから、その暗い瞳で質問(?)をしてくる。
「ただ会話してだけだろ」
「ただの会話で胸を触ったり、床ドンしたり、告白されたり、ラブレターもらったり、出来ますかね?いや、できませんよ?」
なにその反語。使い方怖い。相変わらずその華奢な体からは考えがつかないほどの力で押さえ込まれている。
「あれは、部活動で仕方なく……」
実際その通りだ。嘘は言ってない。
「ええ、告白や、ラブレターは百歩譲って許すつもりです。いや、一億歩ぐらいですかね?まあ、いいです。ですが、胸とラブレターの件に関しては?どういうつもりですか?ねえ、兄さん?」
あうっ。痛いところを突かれてしまった。
「しかも、両方あのほぼ男の女じゃないですか」
ああ、神楽ね。ほぼ男の女って………。
「あんな胸触って楽しいですか?私も自身はないですけど、あれよりは確実にいいですよ?ほら、ほら」
「やめろって!おい、胸を近づけるな!」
無視して香澄はせり寄ってくる。その発育途上の胸を俺の胸板に擦り付けるように。
「おい!これ以上は」
「どうしてですか?気持ちよくないのですか?」
「いや、気持ちいけど………って何言わせてるんだ!」
フニャッとした感触は心地が良い…………だが、これはいかがなものだろうか。なんか、このままエロゲルートに突進しそうだ。
A―――受け入れる
B―――拒み続ける
みたいな。俺はもちろんBだ!健全をモットーに生きております。
「もしかして、兄さんはそっち派何ですか?」
「え?そっち派?え?」
ふと、香澄がそう呟く。
「いや、兄さんがそうなことを責めるつもりはありません。そんなの人それぞれです。でも、兄さんがもしそうなら、私はどう対処すればいいのでしょうか?いや、兄さん私の兄さんなのですから、どんな私でも受け入れてくれるでしょ?そのはずです。そうじゃなければおかしいです。ぶっちゃけ世界が滅びます」
滅びません。
「でも、兄さんがそうだなんて知りませんでした。そうですね、どうしましょうか。整形でもしますか?なんとかして肉を剥ぎ取りたいですけど。傷跡が残るのはちょっと。兄さんとの子作りの時に、色々恥ずかしいですし、そんな醜いもの見せるわけにもいきません。ではどうしましょう」
「ヘイ!ちょっと待って!」
「何でしょうか?」
「そっち派とは?」
さっきから香澄がすごい速度で言葉を発しているが、まずその発端であるそっち派なるものが分からない。
「兄さんが貧乳派である、もしくはロリコンであるという―――――」
「違うわ!」
ロリコンじゃねーわ。もちろん、貧乳派でもねーわ。嫌いではないけど、好きでもないわ!
「え?そうなんですか?よかった〜。兄さんにその趣味があったらどうしようかと考えてましたよ」
なぜか、その最中に世界が滅んでいたがな。
「ふぅ〜。では」
スッと俺に近づく香澄。
「え、なに?」
「なに?とは?」
「いや、なんで近づいてくるの」
うん、ほとんど肌が重なっちゃってるよね。タオル越しに、だけど。それでも、その艶かしい感覚がないわけではない。ああ、理性を保て!俺!
「私の胸でも満足なんですよね?」
「へ?」
「だから、私の体で満足できるんですよね」
なんか、言葉が変わってるぞ。それと、今から何するつもりだ。危険なことなんだな。わかるぞ。危険なことなんだな。(大事なことなので二回言いました)
「さあ…………頑張りましょう」
「なにを?!」
その発言と同時に、風呂場から撤退しようとするが、それを香澄が許すはずもなく、すぐさま俺を捕らえようとする。
なんとか、逃げないと。この場から。
「逃がしません!というか、なんで逃げてるんです?」
「怖いからです!」
その嘆きが天に届いたか、逃げることに成功する。
だが、香澄はその手で何かを掴んでいた。白色の布でできた何かだ。
「………」
ふと、唐突に、不意に、下を見た。なにも知らないが下を見た。何も感じなかったが下を見た。
うん、なんとなく分かってたよ。そして、このオチ何回目だよ。
サッと腕を動かし、その部分隠す。だが、時すでに遅し。
"パシャっ"
ナンデ、オ風呂二、スマホ持ッテ来テルノ?
「ゲットです」
「ゲットしないでくれぇぇええええええ!」
そんな悲痛な叫びは、香澄の鼓膜に響かず、その画像は永久保存されるのであった。




